山田風太郎 - お気に入り読書ＷＥＢ

山田風太郎　（やまだ・ふうたろう）　１９２２〜２００１。

『甲賀忍法帖』　（講談社文庫）

長編。
「右甲賀十人衆、伊賀十人衆、たがいにあいたたかいて殺すべし。のこれるもの、この秘巻をたずさえ、五月晦日（みそか）駿府城へ罷（まか）り出ずべきこと」──。甲賀ｖｓ伊賀の忍法の勝敗によって三代将軍を決めようという徳川家康の命により、壮絶なる戦いの幕が切って落とされた！

常人の想像を絶する妖幻の秘技を身につけた恐るべき忍者たち──。全身鞠（まり）男…、なめくじ男…、蛇や蝶を自在に操る女…、他人の顔に変形する男…、肌から血の霧を吹く女…、死の息吹で魅殺する女…。

忍法の争いに、実のところ、卑怯という言葉はない。いかなるハンディキャップもみとめられず、いかなるトリックも容認される。忍者の世界に、武門の法は適用できぬ。そこには、奇襲、暗殺、だまし討ち、それだけに手段をえらばぬ苛烈（かれつ）無慈悲のたたかいがあるのみだ──。

「弦之助さま、わたしを斬って下さいまし。朧は、きょうを待っていたのです」。

宿怨の敵同士でありながら、相愛の仲となった主人公・甲賀弦之助と伊賀の姫君・朧（おぼろ）の恋の行方…。不可思議な瞳術をもつ弦之助は、愛する朧を討ち果たすことができるのか？

面白キャラ続々登場の奇想天外、風太郎ワールド！　超絶なる忍法帖シリーズ第一弾！──ハチャメチャな舞台設定とぶっ飛んじゃってる登場人物たちが実に楽しい。中でも、敵のリーダーである伊賀忍者・薬師寺天膳がとにかく超強烈キャラでＭＶＰ。なにせ何度死んでも生き返っちゃう不死身の忍者なのだ。拍子抜けするほど何度もあっさり殺されちゃったり、変態エロ・キャラを爆発させたり…。主役であるはずの甲賀弦之助の存在がすっかり霞んでしまうほどだ。