このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

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横光利一 (よこみつ・りいち) 1898〜1947。


頭ならびに腹  (青空文庫)
掌編。真昼である。特別急行列車は満員のまま全速力で馳けていた。沿線の小駅は石のように黙殺された──。土砂災害のため立ち往生した列車。太った腹の紳士の行動に従って、迂回線に乗り換える乗客だが、ただ一人、飄々とした小僧だけは復旧を待つ列車に残る…。「ア——梅よ、桜よ、牡丹よ、桃よ、そうは一人で持ち切れぬヨイヨイ」。安易に付和雷同してしまう群集心理を見事に皮肉る。

御身  (青空文庫)
短編。姉のおりかに女の子・幸子(ゆきこ)が生まれ、「叔父さんになったぞ」と喜ぶ末雄。幸子のことが可愛くて可愛くて仕方がない末雄は、姉に信用されて、幸子の子守りを任されるが、悲しいかな、幸子はまったく彼に懐いてくれず、冷たい愛の報酬しか受けられない…。「俺はなるほどいけない奴だ、だけど俺はお前が可愛くっての」──。幸子に対する末雄の心配性ぶりが何とも微笑ましい。

機械  (青空文庫)
短編。劇薬を扱うネームプレート製造所で働き始めた私。製造所の主人に信頼され、暗室で研究を任された私だが、そんな私を同僚の職人・軽部は、プレート製法の秘密を盗み出す間者だと疑い、敵意を示す。暗室に忍び込んだ新入りの職人・屋敷のことを、やはり間者だと疑うようになった私だが…。機械のように交錯する人間心理をユーモラスに描いて面白い。「私はもう私が分らなくなって来た」。

時間  (青空文庫)
短編。座長が出奔してしまったため、宿賃の支払いに窮した男女十二人の劇団員たち。雨の日を待って夜逃げした彼らは、病人の波子を代わるがわる背負いながら、海に沿った断崖の上の山道をひたすら歩き続けるが…。空腹と疲労、寒さと眠気、喧嘩と友情、そして団結…。あまりに複雑すぎる愛憎は逆に平和をもたらす!? 極限状態での人間模様を滑稽に、そして感動的に描いて面白い。

 (青空文庫)
短編。地質学者として、自分よりはるかに優れている学友・Qに、妻・リカ子を奪われた(与えた)私。そんなQが敵手のAよりもはるかに劣った人物だと知り、動揺するリカ子に、地質学の学説の興亡を例にとり、「個人の負けることが負けることでない」ことを説く私だが…。「私は鳥になったのだ。鳥に」。倒錯した三角関係を描いて面白い。鳥になる(飛行機に乗る)ことの効用に、素敵な斬新さを覚える。

 (青空文庫)
掌編。真夏の宿場は空虚であった──。馬車に乗るため、宿場に集まってくる人々。危篤の息子に会いに行く農婦…、駆け落ちの若いカップル…、母親と男の子…、田舎紳士…。「まだかのう。馬車はまだなかなか出ぬじゃろか?」。肝心の馭者(ぎょしゃ)は、将棋を指しながら、饅頭が蒸し上がるのを待っている始末。やっとこさ出発するのだが…。愚かなる人間と冷徹なる蝿の対比が強烈すぎる!



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