| JR上越線
土合駅
群馬県みなかみ町
平成21年5月22日 来訪 |
闇夜に浮かび上がる駅舎のシルエット。
駅前には何年も前に廃業したお土産屋が建っているだけで、コンビニなんて大層な物は存在しない。
ちょっと離れた場所にドライブインがあるが、夜9時を過ぎたこの時間にはとっくに閉店してしまっている。
新宿や銀座のような不夜街では、むしろこれから活気づいてくる時間。
しかし、険しい山々に囲まれるこの駅周辺は『正しい闇』に包まれている
とりあえず上りホームにも行ってみる。
下り線が改札から10分以上かかるのに対し、此方は1分もかからない。
と言うか、それが普通なのだが。
当然の如く真っ暗。
ちなみに上りの最終は18:21。
夏場ならまだ日が出てる時間に最終列車は行ってしまう。
ついでに言うとバスも17時に終バスが出てしまうので、
谷川登山から東京方面へ帰る人は絶対にこの電車を逃してはならない事となる。
改札前には行き先を示す「青看板」。
うっかり東京方面へ帰る人が間違えて延々下り線まで降りてしまったらエライ事である。
更にそれで電車乗り過ごしてしまったら言わずもがな。
更にこんな案内板もある。
わざわざ、階段の段数まで説明。
かつては市販の時刻表にも土合駅下りホームの注意書きがあったそうだ。
駅事務室。
されど誰もいない。
別に夜間だからと言う訳ではなく、基本的に無人駅。
夏山シーズンならばそれなり活気付くはずなので、期間限定の有人駅なのかもしれない
時刻表。
何度も言うようだが、この駅には僅か5本の列車しか止まらない。
全て長岡〜水上の往復便。
ただし、行楽シーズンには臨時列車が数本止まるようだ。
現在の上越線は旅客よりもむしろ貨物列車がメイン。
かつての鉄道黄金時代と比べれば輸送量は落ちたが、今だ首都圏と日本海側の物流を結ぶ動脈であることは違いない。
また、「エコ」が求められる21世紀において、CO2排出量が少ない鉄道が再び見直されるようになり、少しづつ取引量が回復されつつありょうだ。
谷川岳登山のターミナルと言うだけあって駅舎内にはそれに関した看板・張り紙が多数ある。
このように登山者に対し警告を促すような物も。
谷川連峰は非常に人気の高い登山スポットであるが、
反面 多数の命を奪ってきた『人食い山』としても知られる。
ベテラン登山家でさえ、時には命を失う事すらある危険な山に
下りホームから上がってくるだけでバテてしまうような愚か者は決して入り込んではならない。
・・・すいません、実は『土合駅登山』で身の程を知って、
翌日の日程を変更させた自分が此処にいます。
こちらは谷川岳周辺の危険地区図である。
どうやら、この図表の上では未だに昭和が続いているらしい。
しかし、それよりも気になった部分がある。
この図表の右上部分を蛇行しながら走る濃い黄色い線。
コレはとある『県道』を示す線である。
『県道 六日町・水上線』。
・・・恐らく既にお気付きだろうが、この「県道」は現在「国道291号線」と呼ばれている道である。
つまる所、この図表が作られたのはR291が国道指定される1970年(昭和45年)より以前だと言う事になる。
だが更に気になるのは、この道路が伸びている場所である。
今、R291の車道としての群馬側末端は一ノ倉沢の所までである。
しかし、この図表が示す『県道 六日町・水上線』は更にその先、幽の沢を越えた出合という所まで伸びている。
下の地図が現在の幽の沢周辺。
当然の如くR291は点線表記。
かつてはこの辺りまで車両が入れた?
さて、駅舎内も一通り見学し、夜もふけてきたのでそろそろ寝る事にする。
今夜は土合駅で駅寝。
改札前の広間の横に更にもう一つの待合室がある。
GWを過ぎた平日だった為に本日は自分一人だけだったが、
オンシーズンの土日には此処で多くの人が朝一登山の為に此処で寝泊りする。
寝袋に包まり、時折通る貨物列車の音で目を覚ましたりもしつつ、山間の駅で夜を過ごした・・・。
午前5時00分。
土合の駅は朝霧に包まれていた。
駅前の広場。
やっぱり何にも無い。
一晩置かれた車は地元民の物?
広場の先の向こうにある道はR291である。
広場横には恐らく新清水トンネルの換気口と思われる施設があった。
下り地下ホームへと向かう連絡通路。
改めて見て物々しい施設だと思う。
朝の上り線ホーム。
始発6:40にはまだ早い。
現在は単線ホームとして使われているが、元々列車交換が出来る島式ホームだった。
新清水トンネル開通以前はこの駅で上下線列車交換が行なわれ、新トンネル開通後も特急がもう一本の線路を普通列車を追い越す為の通過線として使用されていたようだ。
しかし、上越国境を越える特急は一部の夜行を除いて新幹線開通後に廃止されてしまい、最早無用の長物となった複線片方のレールは撤去されてしまった。
ちなみに
①
の下り線トンネルを見て頂ければわかると思うが、こっちの方にもかつては特急通過用に複線分のレールが引かれていたそうだ。
通過線を撤去した分、その後にホームの幅を広くしたらしい。
新潟方面を望む。
手前側はこれより清水隧道へと向かう本線で、奥のもう一つのレールは保線車両用のレールのようだ
丁度、清水隧道坑口直上を通るR291から望む土合駅。
画像中央辺りの赤い屋根の建物が土合駅舎。
全国各地を旅するといろんな駅に出会うがその身を持って、
その駅の『個性』を味わえるのは土合駅以外に無いだろう。
電車の本数が少ない為、車等でこの駅を見学される方も多いだろうが
やはり土合駅の真髄を味わうならば時刻表照らし合わせて鉄道で訪れるのが一番だ。
下りホームで列車を降りた後、あの階段を見上げる驚愕は他に例え様が無いものがある。