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板谷峠
県道232号線
山形県米沢市
2006・4・30 来訪
 

板谷〜峠駅への道の丁字路間はいたって普通の山間県道。
正直言って面白みのない道であった.
殆ど古道の面影はなく、『険道』的な困難区間もナシ。
『あー、ハズレの道かァ〜。』
そう思いさっさと通り過ぎようとした所・・・。

突如現れた交通規制板。
その先には、か細い頼りない道。

板谷街道は『時』を止めていた

『険道』の証たる道路規制板。
その向こうの道は、今までの道程とは全く違う空気を持っていた。
細々とした頼りない道が原野を走る。
エンジンを停止させれば風が吹き抜ける音以外なにも無い静寂の世界となるであろう。
振り返れば福島・山形の県界の山々が。
立ち止まって、この雄大な景色を眺める。
遥か向こう山の稜線は自分の目線と同じか低い位置。
それだけ自分がいる場所の標高が高いのであろう。
周囲には何も遮る物が何一つ無い為、吹雪の日などには暴風が吹き荒れそうだ。
それゆえ木々がこの場所で成長する事が出来ず、あたり一帯原野となっているのではないか。
しばらく行くと、とうとう路面はダートへ。

すばらしい。
僕はこういう道を走りたかったんだ。

峠へ到着。
それを指し示す標識は何も無いが、ここより道は下り坂へと転じる。

ちなみにこの峠は「新・板谷峠」と呼ぶべき場所で、
かつての「旧・板谷峠」は峠駅方面にある。
この旧・板谷峠、なんと車道のスイッチバックがあったそうな。
鉄道だけでなく自動車までスイッチバックさせるとは、板谷峠恐るべし。
この旧・板谷峠、地図上では峠駅まで向かい駅前で滑川温泉への道と分岐、
その後 線路脇少し進んだところで消滅している。
古道は沢沿いに進んでいたようだが、今は跡形もなくなっているのかもしれない。


峠を越えても路面はダートのまま。
斜陽を浴び、小刻みな振動を受けながら山を下っていく。
古道とは違うルートをたどっている様だが、それでも山間を蛇行しながら進む砂利道は、まるで古い時代の街道筋をたどっているような感覚におちいった。
山陰に隠れたカーブの向こうから、乗馬した武士たちが今にも現れてきそうだ。

鎧武者とは出会わなかったが、途中で旧式のクラウンとすれ違った。
ダート路面をよろめきながら老夫婦が乗るクラウンが通り過ぎる。
これはこれで昭和中期の、まだ『日本列島総酷道』だった時代の風景を垣間見たみたいで、ちょっと楽しかった。

おっと忘れてた。
ここ県道だったんんだよね。

舗装が復活したが、路面中央には草がアスファルトを突き破って生えている。
ここ通る車の交通量がうかがい知れる。
道はやがて沢と並走するようになる。
幾多の沢を合流し羽黒川となり、そして山形県民の母なる川『最上川』へと流れ込む。
沢を渡る橋。
傾きかけた陽日が紅葉を照らす。
その下には山を駆け下る滝。
滝の音が山間に響く。
岩の合間の白いすじが絶え間なく姿を変えて落ちていく。
自分はそれを飽きもせず、長々と眺めていた。
蛇行していた道に突然長いストレートが現れる。
丁度、広い谷間にあたる場所でこのあたりは非常に等高線が緩い。

ロングストレートの途中でこのような場所が。
最初はお墓かな?と思ったが、どうやら庚申塔のようだ。
庚申塔は古い街道筋で時々見かける時があるが、
明治維新の時に迷信信仰として多くの庚申塔が撤去撤去されてしまったそうだ。
その為に主要街道からは殆ど姿を消し、交通量の少ない街道の物だけが生き残れたそうだ。

そう考えると、この板谷街道の庚申塔が生き残れたのは
万世大路に交通がシフトしてくれたお陰かもしれない。

庚申塔の上にちょこんと栗が乗っていた。
別に自分が置いた訳ではない。
他の誰かが置いていったのだろうか?
それとも自然に?

ともかくちょっと可愛い光景だった。
庚申塔から少し進むと大沢の集落へ入る。
この萎びた道がメインストリートと言うのも少し寂しいものだ。
集落中央部には大沢駅がある。
こちらは、板谷とは違い駅入口がスイッチバック時代とたいして変わらない様子だった。
大沢駅入口近くにこのような場所が。
立派な門の後にはススキがなびく。
かつては何が建てられていたのだろう?

門と寂しさのみが取り残されていた。
大沢の集落を過ぎ、再び沢と共に山を下る。
沢でだけでなく奥羽本線とも沿った形で米沢へと進んでいく。
ここは板谷街道唯一の踏み切り。
辺りには誰もいないし、列車が通る雰囲気もないがきっちり一時停止をする。

某山中での踏み切りで、『パンダ車』に不意打ちを喰らったトラウマがあるので。
大沢集落よりずっとなだらかな傾斜だったのが、平野近くにきていきなり九十九折れ。
ここで一気に高度を下げる。
九十九折れを折りきったところで水窪ダムより下ってきた道と合流。
山道を下りきり、田んぼが広がる平野部へ。
板谷街道は決して楽な道ではないが、心地よい懐かしさと寂しさが漂う良い道だと感じた。
もう一度訪れ、旧・板谷峠や峠駅へも行って見たいと思う。


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