このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

奥羽本線 旧板谷駅

鉄道黎明期の頃から信越本線の 碓氷峠 と並び、鉄道の難所として知られてきた奥羽本線・板谷峠。
最高33‰のキツイ傾斜、連続する急カーブと運転士の神経をすり減らすような線形が延々30kmも続く。
現在、この区間を山形新幹線も通っているが、自慢の脚力を生かす事も出来ず低速運転を余儀なくされる。

さて、この板谷峠区間には4つの駅が存在する。
福島県側の赤岩駅、山形側の板谷駅・峠駅・大沢駅。
どの駅も山深い位置に属した駅であり、赤岩駅に到ってはへヴィな山道を通らねば行けない秘境駅である。
この4駅すべて、かつてはスイッチバック駅であった。
急勾配の箇所に停車場を作るためにスイッチバック方式が採用されたが、
列車のパワーアップが進むにつれ徐々にそれは時間を使うだけの無用の物となっていった。
そして1990年、山形新幹線建設工事の一環として本線上への駅移転が決定。
スイッチバック駅は廃止された。

2006年7月。
廃止から16年。
かつてのスイッチバック駅は夏草に覆われていた。


R13・東栗子トンネルと西栗子トンネルの合間から分岐する県道を進むと板谷の集落へ到る。
板谷は万世大路開通以前のメインルートであった板谷街道の中心的な宿場町である
その集落の脇に旧板谷駅があった。
架線柱やホームも残る広い構内は一面草に覆われていて、ぽつぽつ低い木も生えている。
廃止されてからの年月を感じさせた


藪の中からレールが現れる。
車が普及する以前は、この人里離れた集落に物資を運んでくれるのは鉄道だけだった
何本もの側線がこの駅の過去の栄光を物語る


駅跡の横に砂防ダムが。
この山のすぐ裏手に採石場があり、その関係のものか?
現役時代からあったかどうかは謎。


錆び付きまくった駅名板。
辛うじて「○たや」と読める程度。
と言うか、この周りも草ボーボー。


 
旧駅舎。
現在は地区の集会場として使われているらしい。
ロータりー側から見ると、単なるプレハブ小屋にしか見えない。

駅舎の手前奥にあった石造りの建造物。
何かの倉庫か?
もしかしたら、開通当初からあるものなのかもしれない。


米沢方面を望む。
ホームも線路跡も緑の世界。
特に二・三番線ホームは足の踏み場も無いぐらい草に覆われていた。
更にレールとレールの合間に底溝があるのだが、植物に覆われ落とし穴状態になっている。
足元に気をつけながら歩いていたのだが、結局一回嵌ってしまった。
底溝には泥水が溜まっていて、靴やズボンが泥だらけに。
まあ、すでに全身薄汚れた状態でここに来ているのでどうって事は無かったが・・・。


ホーム米沢側の末端は保線車両の留置場になっている。

ちなみに旧駅跡に残るレールと現在線に繋がるこの場所のレールとではレール幅が違う。
通常、JR在来線が使うレール幅は1067mmの狭軌である
しかし、奥羽本線福島〜新庄間は新幹線用の1435mm標準軌を採用している。
当然、山形新幹線が在来線に直通できるようにレール幅を改軌したわけであるが、
その代わりに他のJR在来線と直通できなくなってしまった。
新幹線開通以前に奥羽本線を経由していた夜行列車や貨物列車はルート変更や廃止の憂き目に会った。
また、新庄〜大曲間は山形・秋田新幹線ルートに挟まれた分断区間となり
優等列車が一本も通らないローカル線に転落してしまった。

新幹線開通により見違えるように発展した地域もあれば、割を食った地域も出てきてしまったのだ


スノーシェッドを経て本線へと向かうレール。
その脇には現・板谷駅へ向う為の歩道が整備されていた。


スノーシェッド内。
なんか車両工場の中みたい。
かつてはこの中にいくつものポイントがあり、それらを豪雪より守るためのスノーシェッドだった。
現在は歩道がクロスするのみ。
この上には県道232号米沢街道が跨いでいる



スノーシェッド手前にあったコンクリ柱。
入替信号か何かだったのか?


本線と合流。
自分は山形に親戚がおり、特急(現在は新幹線)「つばさ」に乗り何度もここを往復している。
しかし、この区間を普通列車で乗った事はなく、福島〜米沢はノンストップのイメージが強い。
子供の頃はスイッチバックなんて物は知らなかったので
山中を右に左に分岐していく線路を不思議に思いつつも、アクロバティックな線形にトキメキすらした。

長い間、車窓でしか眺めた事のない場所を歩いている自分にちょっと違和感。


現・板谷駅。
スノーシェッド内に移転している。
ちなみに他の板谷峠上の3駅もスノーシェッド内に移転されている。
まあ、ここにホームを作れば雨や雪をしのぐ事が出来るしね。
ただ、スイッチバック時代は集落すぐ横に駅があったのに対し、
現在の駅は少々歩かねばならないのが難点か。
また、昔と比べると峠を走る普通列車の本数が減ってしまったそうだ。
現在の板谷駅を停車する列車は一日6本。
山奥の駅と言う事もあるだろうが、ちょっと気軽には使えない列車数だ


さて、なんとかスイッチバックの終点部分まで行こうと頑張って見たのだが
奥へ行けば行くほど藪は酷くなり、とてもじゃないが前へ進めなかった。

とにかく、駅構内全体が植物に埋もれている旧・板谷駅であるが
殆どの施設・設備が現存しているのは特筆に値する。
恐らく晩秋や雪解けの頃にはちょっと廃れた状態ではあるが現役さながらの姿を現すであろう。

いつまでも残っていて欲しい峠の遺構である。

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