| 福岡県道25号「門司行橋線」は門司から大分方面を結ぶ県道であり、また途中には長距離フェリーは発着する新門司港や北九州空港など物流の要となる場所があり、大型トラックが頻繁に行き交う非常に交通量の多い道である。
画像の通り、四車線の高規格バイパス道路でこの先に控える桜峠を上下別線のトンネルで一気に貫き、山越えを意識する事無くパスすることが出来る。
この上なく近代的道路の模範とも言うべき福岡r25だが、当然昔からこんなハイスペックだった訳ではなく、かつてこの道の姿がセブンイレブン脇から分岐する道に残されている。 |
| 1.5車線ほど幅員で斜面を登る旧道。
ここより1km程に門司港駅があり、マンションやビルが立ち並ぶ市街地のすぐそば場所なのだが、そんな喧騒とはまったく無縁のような落ちついた雰囲気の住宅地である。
無論、現道が開通するまではここがメインルートだった訳であり、乗り合いバスや荷馬車が行き交う賑やかな通りだったのであろう。
ちなみに「桜隧道」の名の通りこの坂の途中には桜の木があるが、さすがに九州で4月末では花はすべて散ってしまっていて、まったくその存在には気付けなかった。 |
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坂を登りきり、後ろを振り向けば眼下に門司の街が。
その背後に聳える山は本州・下関の山である。
うっすらとではあるが、九州と本州を繋ぐ関門海峡のランドマークである関門橋も写っている。
ちなみに前日の夜、関門橋の下、関門人道トンネル隣の公園で野宿していた。
海峡を吹き抜ける風は五月間際でさえ冷たく、
大型車が通過する度に聞こえる橋のつなぎ目のジョイント音、
船の汽笛、
そして自分のくしゃみが本州末端の地に響いていたと言う。
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海峡に背を向け峠へと目を向けると、立ち並ぶ民家に誘われるよう、隧道への道が一直線に伸びる。 |
| 桜隧道である。
1914年(大正3年)に開通。
そもそも、隧道が開削される切欠となったのがこの峠向こうにあった本郷村と旧門司市の合併問題である。
本郷村と門司は距離的にはさほど離れて居ないものの、割と険しい道程の桜峠が両地域を隔てており、それがネックとなって中々話が進まなかった。
そこで、峠に隧道を掘る事によって交通難を解消。
一気に本郷村と門司市は身近な場所となり、はれて本郷村は北九州の中心都市、門司市の一部となったのである
後、1922年に椿隧道、1938年に石塚隧道が開通。
本州方面から東九州方面へ向かうルートとして発展して行く。 |
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内部は素彫りにコンクリ吹き付け。
数mごとに照明がついており、
余程暗い所が苦手な人でなければそれほど恐怖感は感じられないだろう。
隧道前後が住宅地と言う事もあり、交通量も多い。
と言うか、隧道をうろちょろしていたら思いっきり地元のおじいちゃんに怪しまれた・・・
(´・ω・`)ショボーン |
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南側坑口。
基本的に北側坑口とデザイン変わらず。 |
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ちょっと気になったのがポータルの上部の両端に穴が開いていた事。(画像にカーソルを)
一瞬、そこだけ石材が抜け落ちたのかかと思ったのだが、
両端の同じような所に開いていることから、人為的な物なのだろう。
水が流れていることから、隧道上部の土被り部分の地下水を
吐き出させる為の物と思われる。
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| 隧道を出てすぐに住宅地。
こちらでもやっぱり近隣住人に怪しまれる。 |
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坂道をちょっと進むと、丁度トンネルを出た直後の現道に合流する。
右側下り車線の道に合流してくる道が旧道だ
旧道と見比べると、必要以上に大きな道路に見えてしまう。
ちなみに上り線から旧道に入るには現トンネルポータル上部を通る道を使用する。
左側上り車線の新桜トンネルは2001年開通と新しく、右側(現)桜隧道が1954年開通。
どちらもポータルが石組み風のデザインで(下り線側はやや、茶色がかっている)
旧隧道のデザインを踏襲しているのだと思われる。
現道・桜隧道はこの隧道開通の4年後に開通する関門国道トンネルに合わせて作られた。
この時期、モーターリゼーションが徐々に浸透してきた時期であり、
既に門司市街地は車で溢れかえり、混乱きたしていたと言う。
特に国道3号の渋滞は激しかったようで(車だけでなく路面電車も通っていた)、
関門トンネルが開通して更に需要が増えた場合、
門司周辺部の交通がパンクする事は目に見えており、
少しでも交通包容力を高める為に桜峠の近代化が図られたようだ。
新桜トンネル上記の通り、2001年完成だがこれはちょっと遅いかもしれない。
トンネルを出てすぐに北九州高速の春日入口があり、
その先のルートには大規模物流拠点の新門司港があったりと以前から交通量が多かったと思われる。
新トンネル完成以前は結構渋滞していたのではないだろうか?
ともかく門司の街の発展と共に道もまた進化していった桜峠。
その初代隧道はご隠居よろしく門司の街を山の上から見守っている。
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