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《種畜の部》
(05.10.12)
“畜産大国”宮崎県では隔年で畜産の祭典“宮崎県畜産共進会”が開催されている。2年前。つまり平成15年(2003年)に串間市の南那珂畜連で開催された第52回大会については 以前 レポートした通りである。今年の第53回大会はJA都城の都城地域家畜市場で開催されることとなっている。今回の県共では前回と違い、ちょっとした縁で裏方での参加が可能となった。どれだけ牛を出品される農家さんやその応援方の手伝いをするかという点に重きが置かれる参加だ。どれほどの働きができたかはちょっと自信がないというのが私自身の感想なのですが・・・。まぁ、その点、結果ばかりが注目されがちの品評会レポート(前回がそうでした)とは違った見方ができたのではないかと思うのだ。これを読んだ農業外の業種の方には「畜産にはこのような世界もあるんだね。」と感じてもらえば幸いに思うのである。

・・・というわけで、ひと味違った県共レポートに行ってみようか。
早朝5時半。私は迷いながらも都城市場へと到着した。開門が6時となっており、当然出品される農家さんがの牛の受け入れをされるから、それ以前に会場入りしておかなければ無かった。

宮崎からは都城まで1時間かかる。高千穂などの遠隔地から出場する農家さんや牛は県共の1日前から会場炒りしておく必要があるのだ。
普段は子牛セリ市で牛がセリの順番を待つの待機場に出品牛のスペースが設けられることとなる。3m×4mほどのしきりが1頭につき2つ(親子セットの出品となる第3類では2頭の牛に3つが割り当てられる)。上記画像のように自らの地区から運んできた竹をビニールロープで組んで“しきり”を設ける。1つには牛床マットの上にカーペット、そしてワラを敷いて牛の寝床とする。そしてもう1つが牛に与える飼料や手入れのための道具が置かれることとなる。

それにしてもこの竹の枠組みであるが、さすがに人海戦術である。農協の担当者や地域の畜連、県職員も手伝ってあれよあれよという間に組んでいく。
木製のがっちりした飼槽を設置して、牛をトラックから降ろせば受け入れ完了である。

これから1泊2日(地域によっては2泊3日か)を過ごす牛房に入った牛はさっそく飼槽に入れられた粗飼料や濃厚飼料を口にしてもぐもぐ・・・とやっている。

この後、出品される牛については体高や体重といった測尺が待っている。
とは言ってもせっかくの“晴れ”の日であるから牛もお化粧をしましょう!!

牛が待機する牛房では“湯拭き”(=牛の体を熱湯で拭き上げ、汚れを落とすと共に毛を逆立てる)から始まってブラッシング、毛刈り、椿油で毛のつやを出すといった手入れが行われる。

上の画像の内右側に写っている“釜”は“湯拭き”のお湯を沸かすガス釜で、バケツにお湯を移した後、牛用のシャンプーをたらたらと垂らしてタオルで拭き上げていくのだ。

そうして測尺が行われる審査会場へと牛を連れて行くのであった。
審査会場へと向かった牛は身体の各部位について測尺を受けることとなる。

左画像は腰角幅を量っているところであるが、この他にも体高や体重などを測定し、黒毛和牛の発育曲線から偏差を出していくのである(あと、栄養度も)。

幾ら発育が良くても厳しい発育基準が設けられた和牛の世界ならではの光景。
発育はもちろんのこと、商品(=牛)といったような均質性まで求められるのは黒毛和牛独自の世界といっても過言ではない。
測尺が済み、比較審査へと進む。

第1類(生後12ヶ月以上17ヶ月未満のめす)第2類(生後17ヶ月以上22ヶ月未満のめす)第3類(母牛と娘牛のセット)と牛の月齢や出品のスタイルによって部門が設定されている。

各部門、このように牛を並べ、和牛登録審査員の資格を有した技術員が1頭1頭審査をしていく。
このように、初日は各部門についてより資質の優れた牛を選んで終了する(前後2列に牛を分ける形で)。ただ、初日に後列に分けられた牛も逆転のチャンスが設けられている。2日目に再度比較審査を行い、前列に上げられる・・・ということがあるのだ。だから後列に分けられたとは言っても出品者はこつこつと手入れにいそしむこととなる。


こうして1日目が終わるのだが、前もって レポート した通り、 JA都城 主宰による“憩いの夕べ”が開かれている。会としては歌謡ショーと余興のカラオケ大会であるが、各出品地域で交流を深めると共に、一部では出品者同士の語らいということもあったと思う。
会とは別に、市場内に設けられた宿泊スペース(出品者事に割り当てられる。上記画像のように周囲をビニールシートで囲い、床はカーペットやビニールシートといった非常に簡単なもの。屋根はちゃんと付いているが・・・)では焼肉をするなどこぢんまりとした“飲ン方”が開かれ、とても盛り上がることとなる。
だが、そうした一方で出品牛の手入れや夜間付きっきりで面倒を見たり・・・ということが行われているのだ。いつ頃からか市場内の電灯は落とされ、各自持ち込んだ発電機の音と牛の鳴き声が夜空に吸い込まれていく・・・。


そして2日目。早朝より各部門の比較審査が行われるため、夜も明けきらない内から牛の手入れを始める。私も4時に起き、審査を待つ牛の元へと向かった。

6時には会場内の電灯がつき、手入れもピークに達する。夜の間に牛がした糞を集めたり、汚れた敷き料の交換と応援する周囲の人も忙しい。手入れの方も、“湯拭き”がどこそこで始められている。測尺があるため前日から会場に詰めていた酪農家も、自慢の乳牛の手入れを始めたようだ。櫛と毛を整えるスプレー片手に牛の背中をにらめっこをしている光景がどこそこで見られた。
・・・一方では馬(馬刺などのブルトン系の肉専用種)の種畜の部に出場するものが会場に到着していた。

普段、牛に接している人間としては(牛も結構大きいのだが)、とても大きく見える。

参考出品で雄馬が2頭出品されていたが、首の高さまで2.5mを軽々と越え、その気性と圧倒されてしまった。
こうして各部門の審査の方が始まるのだが、次から次に比較審査へと向かう牛の手入れの手伝いをしていたこともあって、その審査風景はほとんど見ることができなかった。上はそのような中で撮影した数少ないショットであるが、和牛の審査と乳牛、馬の審査が同じ審査会場の中を仕切って平行して行われた事もあって、ちょっとごちゃごちゃした印象を持つ。前回の大会のように(同じ会場内ではあるが)それぞれが独立して行うことができればできれば良かったのだが・・・。

ちなみに乳牛の方はグランドチャンプを受賞した
“プライド バリアンティー B プロスター”号(都城市 徳留一也氏)など北諸県地域が優秀な成績を収めていた。和牛の方もちらりちらりと見ていて、西臼杵郡の牛の出来、地域一丸となった取り組みに「ほーっ!!」と思っていた。厳正なる審査の結果、高千穂町の佐藤政俊氏生産の“ゆりふくの1”号がグランドチャンプに輝くなど団体賞を受賞するに相応しい成績を収めている。

高齢化によって将来の担い手確保が大きな課題である上に、かつ先日の台風14号で大きな被害を被った西臼杵郡だけに、今回の成績は非常に励みになるものではなかったかと思うのであった。
左は惜しくも優等賞を逃し、1等賞にランク付けされた和牛である。このように額に“花”が飾られ、牛の方もちょっと誇らしく見える。

優等に入った牛、そうでない牛・・・。

私などはこのような場に選出されるだけでも幸せ・・・と思ってしまわなくもないが、生産者からすれば喜びや悔しさといった色々な思いが交錯するのも確かなのかもしれない。

和牛に関して言わせてもらえば、今大会に於いて各部門で優等賞を出品牛が受賞し、結果、団体賞を受賞した西臼杵郡は地域一丸となった和牛改良が最大限の成果を上げたと言うことができる。受賞を逃した地域にはそれぞれの課題というものが浮き彫りになったであろうから、次回の第54回大会に向けて一致団結して改良に当たっていくと思われる(<当たり前だよね)。
これで県共の内、地域の改良の進行度合いを見る“種畜の部”は終わりを迎えた。また2年後、これら種畜を基幹とした宮崎県の畜産模様はどのように変化しているのであろうか。

・・・とうわけで、第53回宮崎県畜産共進会は10月下旬に開催される“枝肉の部”へと続くのであった。

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