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第30回 都城地域ホルスタイン共進会
《第54回 宮崎県畜産共進会(乳牛の部・予選)》

(09.05.06)
平成19年は宮崎県にとって畜産イヤーである。

10月11日〜14日の日程で鳥取県米子市に於いて開催された“ 第9回 全国和牛能力共進会 ”でおさめた華々しい成績は記憶に新しいが、それに先立ち、10月5日〜6日には隔年で開催される県の畜産共進会が 児湯家畜市場(児湯畜連) で華々しく催されている。

本来ならば、時系列を追ってコンテンツをアップすべきだろう。だが、『全国一』というトピックスの重要性から判断して全共のレポートを先に紹介したことについては、お許し頂きたいと思う。

それでは、改めて今回の県畜産共進会の様子を紹介させて頂こうか。
和牛の種畜、肉畜部門については県内各地域において、代表牛が決定されつつあったが、都城地域においてもそれは同様。2年に1度の県畜産のお祭でもあるし、何より、各地域の改良、飼養管理技術、そして団結力が比較されるのである。力が入らないわけがない。

都城地域については、和牛子牛の市場上場頭数が20,000頭を維持するマンモス和牛生産地であると共に、乳牛についても宮崎県内の半数以上がこの地域に集中しているという宮崎県の生乳生産基地である。生産者の意識も他の地域に負けるとも劣らず高く、地域の品評会も盛大に開催されるはずである・・・・。

ってなわけでして、県畜産共進会の地区予選的な意味合いも込められた今年の“
第30回 都城地域ホルスタイン共進会”(平成19年9月10日開催)に突入してみたのだった。
なんだか、空軍基地のハンガーで撮影された軍用機装備品一覧・・・ってな感じの画像であるが、乳牛の手入れ道具一式だ。

こうして見ると、毛刈りの為のバリカン用の変圧器やらスプレーやら・・・とありとあらゆる道具が手入れに用いられる。

驚きなのはこれらは酪農用機材を扱っている会社から正規に“牛用”として販売されている事。

畜産の世界に割と近い業種に就いていないと、畜産というある意味閉鎖的な世界の事は見えてこないので興味深く撮影させてもらった。

これらのツールは当然、海の向こうの製品。日本の酪農のルーツを考えれば当たり前か・・・。
ホルスタインの手入れ風景。

バリカンを当てて毛刈りをしているのは、地元都城農業高校の学生である。

おそらく、この牛はこの学生の担当牛なのだろう。

1頭の牛の周囲を何人かの生徒が取り囲み、ベッド造りから餌の世話までつきっきりで対応していた。
どこの業界もなのだろうが、女性の進出は目覚ましいのである。

個人的には女性というのは家畜の飼養に向いているのでは無いかと思う。

経営の経理面の管理についてはよく言われるところであるが、私としては、細かいところに気が付くという女性特有の利点が家畜のちょっとした異変の発見に大いに役立っているように思えるのだ。

男など、大抵がおおざっぱであるから、要所要所では女性が経営の主導権を握る場面があっても良いのである。

この女性は後継者なのでしょうね。ブラシを片手に、牛の尾を入念に手入れしていた。
そうこうしているうちに、品評会が始まった。出品される牛は品評会にも冠せられているとおり、都城市、三股町の1市1町の酪農家によって飼養されている牛である。

和牛の審査部門と比較した時に、乳牛では育成牛と経産牛の部でより細分化されているようだ。ま、生後月齢による区分がもっと細かくなっただけなのだが、説明すると以下の通りとなる。

 
(育成牛部門) ・第1類:生後12ヶ月以上〜16ヶ月未満
           ・第2類:生後16ヶ月以上〜20ヶ月未満
           ・第3類:生後20ヶ月以上〜24ヶ月未満
 (経産牛部門) ・第4類:3歳未満
           ・第5類:3歳以上〜5歳未満
           ・第6類:5歳以上
和牛については登録審査員の資格を持っている(←これ自慢(爆))のでちょびっと漠然と牛の善し悪しが分かったりとするわけであるが、乳牛についてはさっぱり・・・。

とはいっても、牛のフレーム、歩様、乳器(すなわち乳房ね)の形といった点において優劣を付ける事は想像が付く。
和牛と比較した時に審査対象となる月齢がより細分化されている意義を考えてみたが、育成牛ではより若い牛ではその牛自体が持っている素質、そして受精から分娩が近づくにつれての繁殖性、生産性・・・といった部分を見ていくのだろう。

そして経産牛となった時、歳を経ての牛の姿、飼養者の技術・・・といった点に於いて審査されるのだろうか・・・。
そうして、審査が行われている会場の傍らでは、牛たちが次の出番を待っている最中であった。

出品者にとっては本番前の緊張をほぐす貴重な場所なのだろうか。ちょっとした雑談をかわしているのだろうが、その顔がカメラのファインダーを覗いていた私にはやや緊張しているように見えたのだった。
その一方で審査は進んでいく。

牛たちは生産者に引かれ、列をなしてサークルをグルグル・・・。

ある程度、審査員の中で見当が付いたのだろうか。牛たちを横一列に並べた。

そろそろ序列が決定される。
審査員が牛を指さし、それに合わすように牛の出品番号がアナウンスされた。順番の早い方がより優れた資質を持つ牛であることは言うまでもない。

このようにして、全ての部類で牛の序列が決定された。午前10時から審査が始まり、終了はお昼を回って午後12時35分。

あ、せっかくなので、出品された65頭から選ばれた各部類の優等1席だけ紹介させて頂こうか。

・第1類:DK フアーム ナイト エルトン ダーハム(JA都城 川野大輔氏)
・第2類:グローリーフアーム サウスランド メイリング シテイ
      (南部酪農協 今山陽一氏)
・第3類:ヒダカ ジヨーダン ベイビツト(JA都城 日高康秀氏)
・第4類:サングリン ダンデイー ジヤツク(JA都城 田中真志氏)
・第5類:ハマサキ ライナーズ デユーク(JA都城 浜崎太一氏)
・第6類:テイー ウエルネス KED ダーハム(都城農業高校)


和牛の名号からすると、かなりややこしい・・・なと思う乳牛の名前。必ずしも・・・とは言えないのであるが、両親の名前から一部を取って登録を行う・・・という生産現場での慣行があるようだ。

この後、上記優等1席に選出された牛を含めて、上位入賞の牛は10月5日〜6日にかけて開催される“
県共”へと駒を進める。




・・・だが、その前に牛にはちょっとした試練があるのである。
いくら、県内だけの移動とは言え、家畜防疫の立場から、予防注射や感染検査のための血液採取を受けなければならないのだ。

審査を終えた上位入賞牛からこれらの義務をこなしていかなければならないのだが、ここで受けるのは2種類の措置である。

まずは、都城市が実施する
IBRワクチンの接種である。

IBRというのは“牛伝染性鼻気管炎”といって、気管器系の疾患の他、繁殖障害、新生子牛の神経症状・・・を引き起こすやっかいな伝染病。当然、生産性に大きな影響を及ぼす事から、家畜伝染病予防法における届出伝染病に指定されている。
続いて、宮崎県の家畜保健衛生所によるヨーネ病判定のための採血が実施される訳だが、これは画像の通り、しっぽの裏側を流れる尾静脈から採血を行う。牛は馬と並んで大家畜に分類されるだけあって、それなりに体高がある。ホルスタイン種は改良の過程でより大型化してきている事から、身長の低い人が採血を行う場合、かなり無理してしっぽを上向きに固定することになるのだが・・・。
ヨーネ病は上記の家畜伝染病予防法において法定伝染病に指定されている事もあり、口蹄疫のように直ちに殺処分が義務づけられるわけではないが、特に監視が必要な伝染病として位置づけられている。

この病気にかかった牛は水溶性の下痢による削痩によって、大きく生産性を欠く事となる。
この措置は端で見ていて非常にかわいそうにも思えるのであるが、経済動物を扱う現場においては必要最低限の措置だ。

今年1月に県内で相次いで発生した高病原性インフルエンザについても同様の事だと思うが、ちょっとした気の緩みが家畜伝染病の発生とその結果としての経済的な打撃を誘発するのである。

産地の保護のため、何より農家の経営のため、割り切ってはいけない世界。

・・・というわけでして、この項は“第54回 宮崎県畜産共進会”の本戦へと続いていくのですね。
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