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第56回 宮崎県畜産共進会
《種畜の部》

(11.11.11)
昨年の4月。川南町を中心に発生した口蹄疫によって、宮崎県は大きな影響を受けた。直接的、間接的・・・。業態の区別は無し。川南町で感染が認められた平成22年4月20日以降、県内の経済に大きな爪痕を残したのだった。宮崎県の農業算出額を見た場合、平成21年度にはその56%を畜産業が占めている事実。ある意味、畜産業なしには県の経済が回転していかないと言っても良いのではないか・・・と思う。

そのような状況ではあるが、先の災禍の中心にあった西都・児湯地域では、口蹄疫の罹患もしくはワクチン接種に基づく殺処分を受け入れた農家も徐々に経営を再開している。小頭数であったり、高齢であったり・・・養畜を断念する農家も見られるが、6割の農家が以前の生活を取り戻そうとしている。

平成23年10月。隔年で開催される“
宮崎県畜産共進会”が都城市のJA都城家畜市場で開催された。来年、長崎県で開催される 第10回全国和牛能力共進会 を控えている事もあり、県内各地域の改良の度合いを測る意味合いもあった。この全国和牛能力共進会(=全共)については、9月の末に出品対策の共進会が開催されたばかりであるのだが、本番までまだまだ1年ある。本番に向けた代表牛の選定だけでなく、農家の意識高揚という意味でも大きな意味を持っている。だが、それ以上に口蹄疫からの復興を掲げる宮崎県畜産にとっては、西都・児湯地域を中心とした口蹄疫発生地域からの代表牛の出品に大きな期待を込めた大会であったと思う。
開会式。

まずは前回大会の優勝地区である西諸県地区から優勝旗の返還がなされる。

県の畜産共進会というのは、県内の畜産農家の大多数にとってはある意味、“最高の栄誉”。

出品者は文字通り地域の威信を賭けて牛を出品してきており、それぞれ緊張の面持ちで式の進行を見つめている。
JA宮崎経済連の羽田会長に続き、宮崎県の河野知事があいさつ。

続いて、県選出の国会議員の方々が来賓として挨拶をされたが、話題としては今話題のTPPの事、そして来年に控えた全共への激励であったと記憶している。

あと、江藤拓代議士の「西都・児湯の農家が牛を連れてきているのがうれしい。」という言葉に胸熱でした。
その後、開会式では県の畜産業に大きな功績のあった功労者に対する表彰が行われている。その時間を利用して、場内を回ってみる事とした。

審査がじきに始まる肉用種種牛の第1類(生後12ヶ月以上17ヶ月未満の黒毛和種のめすで、登録または登記されたもの)に出品される牛のまわりが慌ただしくなっていたが、それ以外はのんびりと小休止といった雰囲気であった。

というのも、当日、出品される牛を受け入れるために、夜も明けきらない内から待機場の設営をするのである。畳を敷き、はみ桶を設け・・・。開会式は11時からだから、休める時に休んでおかなければならない。審査直前には牛を審査会場に送り出すための手入れが待っているし、県共は2日間。まだまだ先は長いのだ。
初日に審査は組まれていないのであるが、県内各地から乳牛も集まってきている。

宮崎県内では350戸あまりで16,000頭の乳用牛が飼養されている(22年度)。牛の管理や飼料栽培に大きな労力を必要とすることから、近年は戸数や頭数を減らしているが、県内には若手の後継者も頑張っている。

左は昼食の弁当を食べながら歓談する高鍋農業高校の生徒達。牛に愛情をかける様子に将来が楽しみである。
さて、県共では県や畜産をサポートする業界のPRスペースが設けられております。審査が始まるまではしばらく時間がありますので、そちらを紹介させていただきますかね。

topに持ってきたのは県畜産試験場で育成している“ みやざき地頭鶏 ”。普及推進と生産については、生産者団体が設立した 協同組合 の生産者が主役を担っているのですが、川南町にある畜産試験場川南市場では、さらなる改良増殖と飼養管理の研究に取り組んでおります。

画像は生産現場に卸されるみやざき地頭鶏ですが、画像の奥の方。原種鶏と言われる鶏の展示もありました。原種鶏の場合、どうしても体が小さく、産肉、発育性においてデメリットとなる。そこで、JASで定められている地鶏の定義を守りながら原種鶏の形質を補ってくれる鶏種との交配がなされるのですね。みやざき地頭鶏の場合、試験場で選抜・育成した原種鶏(♂)に劣勢白色プリマスロック(♀)を交配して雑種をつくり、その雑種(♂)と宮崎、熊本、大分の九州3県で育成した在来種系の九州ロード(♀)を交配させるという組み合わせ。その他、飼育については、期間、1羽あたりの占有面積・・・と厳しい条件が付けられております。生産農家はものすごい努力をしていると思いますよ。
県内には肉畜として馬を飼育している地域があります。その数は少ないのですが、県共進会にも自慢の繁殖馬が出品されるのだ。

飼育されるのはサラブレットではなく、ブルトンやペルシュロンといったより大型の品種やその雑種が多いようです。いや、迫力ありますよ。

実は、今回の県共の会場となった都城地域がその生産の中心地でして、JAには生産部会も組織されております。
JA都城 の農用馬生産部会では、商品化した馬味噌煮込みの試食ブースを設置しておりました。

ほろほろ・・・に煮込まれた馬肉、歯ごたえのあるゴボウをいただきましたが、濃いめの味付けはご飯に合わないわけがないですね。レトルトパウチだったと記憶しておりますが、1つ520円。

JA都城管内で生産された農用馬は、管内で飼育される他、馬刺しの本場である熊本へも購買されていくそうです。都城産の馬肉を食してみたいと思われた方。JAが設置している産直施設ATOM(アトム)で購入することができます。

(そういえば、JA都城はこの11月のオープンを目指して、宮崎自動車道の都城IC近くに複合施設“朝霧のさと みやんじょ”を整備中です。こちらでも当然、販売されるのでしょう。)
宮崎市にある通信機器および畜産飼料販売会社の コムテック さんのブースには、同社の主力商品である牛の繁殖・健康管理館システム“牛歩”が展示されておりました。

牛の足に取り付けて、それを記録するだけで、牛の発情、健康状態の把握ができるという優れものなのですが、近頃、県の畜産試験場との共同開発により、姉妹製品の“
牛歩Lite”を新発売。
畜産試験場はこれだけでなく、気象計メーカーの エンペックス気象計 さんとも共同開発をしております。

乳牛は夏場に感じる暑熱ストレスにより、その産乳成績や繁殖面での影響を受けるのですが、そのストレスの度合いを見える化することで、農家の所得向上につなげる事を狙っているそうです。その名も“
ヒートストレスメーター”といいまして、7月15日より販売されているとか。
従来製品の“牛歩”の場合、記録・表示媒体としてのパソコンが必須だったのですが、それだと、パソコンを使い慣れない人はこの便利なシステムを使いこなせない。ならば・・・と、この“牛歩Lite”では発情などの情報を誰が見ても一目瞭然となるように、LEDによる表示板の開発を行ったとのこと。
思わず足を止めてしまったのが、諸県地域などの旧島津氏領を代表する郷土料理“がね”。

地元婦人会?が揚げたての“がね”を提供してくれるのですが、「“がね”って何だい?」と思われる方もいらっしゃいましょう。

サツマイモなどの野菜のかき揚げと表現すればイメージしやすいと思いますが、揚げ上がった様子がカニの足を思わせる所がその名前の由来のようです。

ちなみに、薩摩言葉でカニは“がね”と言うのですね。
そうやってじっくりと回っておったのですが、場内が騒がしくなってきました。ぼちぼち、審査会場に移ってみたいと思います。
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