このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

真白の特急列車 “海幸・山幸”現る!!
宮崎市と鹿児島県志布志市を結ぶ南国のローカル線“日南線”にこの10月10日から特急列車が運行されることとなった。

既に JR九州 サイト や配布されるパンフレットなどでご覧になられた方も多いと思うが、真っ白なボディに宮崎県特産の飫肥(おびすぎ)杉の材を多用した車体が印象的である。公式には“おもちゃ箱”から飛び出てきた・・・とあるが、車両デザインを手がけた“ドーンデザイン研究所”の水戸岡イズムが凝縮されたまさに遊び心の固まり・・・と言えようか。

列車愛称の元となったのはもちろん、日本神話の“海幸彦”、“山幸彦”の2柱の兄弟神だ。天孫降臨の瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)と木花開耶媛(コノハナサクヤヒメ)の子であり、“しおみちのたま”と“しおひのたま”という潮の干満を自在に操る宝玉の登場する神話をご存じだろうか。

漁労で生計を立てる兄神(海幸彦)、狩猟で生計を立てる弟神(山幸彦)がある日、お互いの生計道具を交換するが、山幸彦は兄神の大切にしていた釣針を無くしてしまう。兄神は「無くした釣り針を探してこい!」と弟神を責める。釣り針を探しに海へ出た弟神はそこで海神の父娘と出会い、海神から与えられた潮盈珠(しおみちのたま)・潮乾珠(しおひのたま)という2つの宝玉を駆使し、兄神を懲らしめ、兄神は弟に服従を誓う・・・という神話である。この神話の意味するところを、朝廷への隼人族の服従ととらえる向きもあるようだ。伝承の世界のことなので、真意は分からないが、JR日南線の沿線には神話に縁故のある神社が点在している。山幸彦と妻の豊玉媛を祀る青島神社を筆頭に、鵜戸神宮、そして全国でも唯一海幸彦を祀る潮嶽神社が北郷町の山奥にある。

ちなみに、山幸彦は海の宮殿で海神の娘神の豊玉媛(とよたまひめ)と結婚し、日向神話は紡がれていくのである。

神話についてはこれくらいにして、特急“海幸・山幸”号はキハ125 401と402の2両編成となっている。401号が「山幸」、402号が「海幸」と神格には配慮されているとは思うが、兄弟あべこべだよな・・・。外観に「あれっ?」と思われた方もいらっしゃるかと思うが、当時の面影は前面くらいの物なのだが、元々はTR高千穂鉄道のトロッコ列車として活躍した車両である。高千穂神話になぞらえて、“手力男(たぢからお)”、“天鈿女(あまのうずめ)”の名が与えられていたが、活躍の場を全く変えながらも、古来の神々の名を命名するという点が引き継がれている事は興味深い。私の知人が見解を述べていたが、車両の400番台という区分台もおそらくはTR時代の車両形式(当時はTR400形)に因んでのものなのだろう。その知人の言葉をお借りすれば、JR九州も“粋”な事をする。

特急「海幸・山幸」号はJRの小倉工場で改造を受け、宮崎には9月末に回送された。本日、10月4日には延岡駅(もち、TR高千穂鉄道の始発駅だ。何と義理堅い事か)、そして宮崎駅で県民にお披露目がなされたのだ。

運行開始の1週間前ではあるが、気のはやる方々もいらっしゃるだろう。・・・というわけで、次項では内部の様子をご覧いただく。
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(09.10.04)

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