◆京浜工業地帯を抜けて┃川崎→尻手→浜川崎→扇町→浅野 |
ローカル線といえば地方、のイメージだが、京浜工業地帯を走る鶴見線は、休日ともなれば一挙に乗客がいなくなる都会のローカル線である。京浜東北線の鶴見駅から出て工業地帯の臨海部を走る路線で、そのために住宅は少なく、工場のわきを縫うようにして3両のかわいらしい編成が走っている。
本線は鶴見〜扇町、支線として浅野〜海芝浦の芝浦支線と、安善〜大川間の大川支線がある。平日のラッシュ時は増発するが休日ダイヤはスカスカで、大川支線などは休日は昼間8時間以上空いたりするからびっくりだ。
僕と友人は川崎から南武線に乗って隣の駅、尻手(しって)へ。ここから南武線の浜川崎支線に乗り換え、鶴見線との接続駅である浜川崎駅へと向かった。いまや非常に貴重だという101系電車に揺られ、程なく浜川崎へ。ここには貨物の留置線が広がっていて、まるで貨物駅のようだ。
ここから少し歩いて、鶴見線本線の浜川崎駅から扇町行きの電車に乗りかえる。南武線と鶴見線は浜川崎で接続しているが、それぞれ道路を隔てて離れているという変な駅である。
本線の終点、扇町も浜川崎と似たような感じで、留置線がたくさんあった。旅客というより貨物駅といった感じで、乗客は我々のほかには2、3人しかいなかった。
ふたたび黄色い103系に乗って、今度は浅野駅に向かう。鶴見行きに乗って先ほどの浜川崎を通り、3つ目の青い屋根が印象的な駅が浅野駅である。
ところで浅野の地名は、この地域の埋め立てを手がけた、浅野総一郎に由来している。他にも、鶴見線の駅名には人名が多く使われていて、たとえば安善は安田善次郎からなどとなっているとか。(他に武蔵白石なども)
浅野駅のホームは形が独特で、扇のようになっていた。ちょうど都営地下鉄のいちょうマークを縦に半分に切った感じである。なんとも面白い駅だ。カーブは90度くらいあり、線路が傷みそうである。
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▲南部線・浜川崎支線の101系電車
▲扇町駅から伸びる線路
▲海芝浦方面の分岐駅、浅野
▲浅野駅ホーム
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◆無機質の中の安らぎ┃浅野→海芝浦、大川 |
浅野からの芝浦支線の終点、海芝浦駅。ここは「関東の駅100選」にも選ばれている。実際この駅は鶴見線の中でももっとも変な駅といえるかもしれない。
まず、ホームのすぐ下が海であること。ここから眺める鶴見つばさ橋は最高で、夜には夜景の名所となる。隠れたデートスポットにもなっているそうな。
次に一般人は駅から降りられないということ。実はこの駅、東芝の敷地内に位置しているため、パンピーは降りられないという、非常に変わった駅なのである。
ではなぜここに駅舎の写真があるかというと、守衛さんにお願いして撮らせてもらったから(頼めば何とかなる)。しかし駅員がいないのに守衛だけいるというのも、また変な話である。
ふたたび浅野駅に戻り、今度は大川行きの電車に乗車した。ここには少し前までクモハ42という旧型電車が走っていたが、現在は廃止されて、普通の103系になってしまった。ただ、この103系ももうじき205系に置き換わってしまうらしい。時代の流れ、ってやつなんだろう。
ここ大川も周りを工場に囲まれ、休日のこの日は本当にひっそりと静まりかえっていた。でもそんな音のしない人工物ばかりに囲まれた駅にも電車はちゃんとやって来る。そしてその電車の運ぶ“人間くささ”に、僕は安らぎを感じてしまうのである。
※現在、鶴見線および浜川崎支線は新型電車に置き換えられています。
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▲目の前は海!
▲普通は降りられない海芝浦駅
▲ひとけのない、大川駅にて
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- 今回の旅の経路 -
川崎→(南武線)→尻手→(浜川崎支線)→浜川崎→(鶴見線)→扇町→浅野→海芝浦→浅野→大川→鶴見 |