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 話の種Port of Napier

ドライコンテナによる海上輸送. 商品が 届かない。

SCMが発達し、世界中の貨物がA地点からB地点へ、日本から外国へ外国から日本へと輸送されています。
輸送形態には色々ありまして、原油などの液体物はタンカー、多量の野菜や穀類はバルク船などを使いますが、現在多くの貨物が輸送手段として用いているのが 海上コンテナです。

 海上コンテナの種類は多岐にわたっておりまして、 ざっ とこれくらいあります
今回は、その中でも多くを占めるドライコンテナでの輸送とその途中で発生する貨物破損について説明します。 適切な貨物積み付け方法を知らない素人さん (貿易会社にも結構居るから困る)による輸送中の製品破損や原料汚損というものはかなり多く、そのため保険料がむやみに高いという原因にもなっています。

ドライコンテナで輸送する場合次のような破損が起こります。 
1. 貨物濡れ、カビ、錆び
2.  荷崩れ破損
3.  熱害変質/破損
4.  本船沈没による全損


1. 貨物濡れ、カビ、錆び

さて、PGJが知る中で一番多いのが、この水濡れ破損です。 結露、コンテナレイン、カビ、濡れ損、といろいろな名前がついているくらいですから、如何に 多いかというところでしょう。
なぜカビが生えるか? > カビが生える条件が揃ってしまうから。 この一言に尽きます。
カビが生える条件は多くの金属が錆びる条件でもあったりしましてね。

この一連の事象をまとめて「コンテナ内部の水分が水滴や過剰な湿気となって貨物品質を損なう」と表現することができます。 具体的にはどのようなことが起 きるのでしょうか?
一番多いのが輸送用段ボールがカビる、濡れてシナシナヨレヨレになる。 という損害です。
紙の繊維であるセルロースは濡れると不可逆的変化を起こします。 (さすが紙容器会社にいた人の説明だろ)
簡単にいうと濡れた紙は乾かすとシワシワになりますよ。 という事です。 これで何が困るか? まず見栄え重視の日本の市場では皺になった段ボール箱は顧 客に受け入れてもらえません。
それが、
店頭で並ぶわけでもない輸送用の箱であったり、業務用部品の外箱であってもです。   日本においては品質とは目に見える事柄だからです。

むろん、よれよれ段ボールにほぼ漏れなくついてくるカビの方が大問題です。 カビの生えた化粧箱に入った製品は売れませんし。 それこそかびた製品では売 ることもできません。 
段ボール箱入りの製品でなくても、かびた貨物が原料である場合には原料全損で、生産計画までパァになりますから、下手すりゃ国内工場が止まります。 
(コーヒー豆原料やカカオ豆原料は結構かびるらしい。  NYK-CTシート

金属もあまり湿度が高いと錆が出ます。 電子回路などが錆びたら故障や火災の原因になります。 
皆さんがPCを買われるとプラスチックフィルムに厳重に包まれて中に除湿剤が入っている状態でお手元に届きますね。 それも、海上輸送時の湿気からPCを 守るためでもあるんです。

さて、では、なぜコンテナ内が湿気でムレムレになるのでしょうか?
 a. ドライコンテナは換気が極めて悪い。
 b. 湿気のもとになるものがコンテナ内にたくさんある
 c. 寒暖の差をもろに受ける。

 a. ドライコンテナは換気が極めて悪い。
 
Vent holes20ftあるいは40ftのドライコン テナは33立方メートル/67立方メートルの容積がありながら、換気口は直径5mmほどの穴が4隅にあるだけです。(2か所の時もある)
この為、中に溜まる湿気を排出することができません。 

どうせ使えないなら閉めてしまえというのが対策ですが、それはまたあとで。

また、ドライコンテナのドアは雨などが入らないように、ゴムパッキンがついています。

というか、換気悪くしておかないと潮風で貨物が傷んでしまうので、ドライコンテナはある意味密閉容器です。
(玉ねぎ輸送用のファンコンテナは動力ファンがついて強制換気していますけど、それは例外。)  




 b. 湿気のもとになるものがコンテナ内にたくさんある


段ボールに入った缶詰しか入ってないよ。 と思うでしょ。 パレットに載った機械部品しか載ってないよと思うでしょ。
実は湿気のもとは山ほどあります。
- ドライコンテナの床は木製です。 木は乾燥しておいても約5-10%の水分を抱え込んでいます。
- 木製パレットを使った場合は10%以上の水分を抱えています。 乾燥してない若い木が多いからです。
- 段ボール箱やその他紙製の箱の紙も7-9%の水分を持っています。
すべて蒸散するしないは、おいておいても200Kgの木製パレットや段ボールがあれば、最大40リッターの湯気の素が33立米の中に充満していることになります(実際 にはそこまで蒸発しないけどね)。
そりゃ風呂場状態ですね。
c. 寒暖の差をもろに受ける。
data
左のグラフは食品缶詰を満載したFCLにデータロガーを積載して記録したコンテナ内温度記録です。 (区間はZL北島からJA東京港)

上段は貨物の天面、コンテナの天井から20cmほどの場所で、コンテナの奥の 壁とドアからちょうど中央になる位置に設置した温度計のグラフです。
このコンテナはコンテナ船の下甲板(Under deck stow)の下層に積載させたのでグラフ中央部の洋上での温度は緩やかに上がるのみです。
陸上輸送中、積載港CYでの船待ち中(グラフ左側)と、日本でのCY留置、通関、横持ちまでの期間(グラフ右側)で、日々の温度の変化が大きく出ていま す。

下段は貨物の中段、コンテナの天井と床、奥の壁とドアからちょうど中央になる位置に設置した温度計のグラフで す。
食品缶詰は熱容量が大きいので、温度計の周りの缶詰の箱が断熱材のように働き、このように
非常に安定しています。 

このグラフから読み取れるのは貨物がまだ冷えているのに、コンテナの室温が上がってしまう状態があることを示しています。 
極端に例えると夏の湿度の高い暑い日に、冷蔵庫から冷えだ缶ビールを出してごらんなさい。 結露するでしょ。 それが20tonもある貨物の規模で起きた ら?
そりゃコンテナ内びしょびしょです。

この他にも次のようなシナリオがあります。
- 一番多いのが、外気温や日射の影響を受けやすい場所にコンテナが積載され、毎日コンテナ内の室温が激しく上下する。 このために外気温が下がった際に 天井や壁面が結露するコンテナレイン。
 さらに、あっちっちになったコンテナにスコールでも降ろうものなら、いきなりコンテナの鉄板が冷却されてコンテナ内面は水滴だらけの湯殿状態になりま す。
 眼鏡をして風呂場に入ると湯気で曇るのと同じ理屈。
- 欧州航路や南阪急航路で赤道周辺の暑い海を経由して来た場合、コンテナ鉄板も貨物もアチチになっています。 これを日本の冬に陸揚げして港のCYにお いておくと、コンテナ内に溜まった湿気が冷えたコンテナ鉄板に触れてどんどん露化してコンテナ内でどしゃ降りコンテナレイン。
 そのうちにコンテナが直射日光を浴びて温まってくると、外気温10℃でもコンテナ内20℃くらいになり、カビが生えだす。 木パレットや段ボールはカビ が生えやすいのです。 冬だからと言って安心したら運の尽き。

とりあえず調査してみたら?probes
logistic testあなたの貨物がどのような状態で輸送されているか、データロガーを入れて何度か検査してみる と、どのような対策が必要が分かってきます。

温湿度と衝撃を1か月計測するとNYKに依頼するとだいたいY2K頃は50万円かかりましたが、今では安い機器が出ています。

自分で調べることができますよ。  温 湿度機材の例はこちら    衝 撃データロガーはこちら

湿度が上がって、カートンや紙製補強材の強度が落ちてきたところに衝撃を受けると、荷崩れが凄いことになりますしね。


  









対策の種類は意外と少ないです。
甲案:  リー ファーコンテナ 使いなさい 高いけど
乙案: 簡単です。 以下の通りにしなさい。
Close ventilation

How to use CD-II  
まず船会社に良く乾いたコンテナを指定します。 もし中を検査して濡れているようなら持って帰らせます。
もし、ドアのゴムシールが破損していたら、別のコンテナに変えさせます。
またまたもし、ダークテスト不合格なら、別のコンテナに変えさせます。 (コンテナ内に人を入れてドアを閉め、明かりが入ってこないことを確認します。  これで、コンテナに穴が無いか確かめます。これがダークテスト)
  
次に  
コンテナ内側の4隅にある換気穴をふさぎます。 布粘着テープなどがよろしい。  上の図の穴を右のようにふさぐ感じです。
コンテナをほぼ完全な密封容器にしてしまいます。
これを忘れると、除湿剤がパンクするんだよねぇ。  処理が大変だよ。。。。

やっとバン付け開始です。 
Vanningですが、どうも和製英語臭いです。 ほぼ 通じない。 Loadingと言った方がいいでしょう。
(コンテナから出すのをデバンと言いますが、出バンの変化形ではないかと思います
除湿剤をパレットの上やコンテナ内面に貼っていきます。close ventilation
PGJは除湿剤は貨物の上に乗っける方をお勧めします。 壁面添付は剥がれ落ちると効果が落ちることと、デバン時に落下していると除湿剤破 損で、特にジェル系の場合は掃除が大変です。

<< 左の絵をクリックしたらワードファイルが広がります。 お好きなように加工してお使 いください。 使用個数時季はあなたの航路、貨物の種類によって異なります。













封入する個数は季節や航路、貨物の性質(比熱、熱容量)、コンテナ内非貨物空間量で変わってきます。  
CD-IIの場合、食品缶詰やレトルトパウチ食品満積載で20ftのオセアニア航路で通年10個で十分でした。  http://www.sud-chemie.com.au/Container%20DriII.html

KINDRY場合、乾燥食品半積載20ftで欧州航路夏季で10個でやや足りないかな? という感じでした。   http://en.kindpac.com/index.php?module-product-view-9.html
この他にも、 い ろいろあります 。  輸出先に見せる 英 語版はこっち

ところで、イタリアからトマト缶詰を輸入したら錆びだらけだったとという方から「CD-IIのサイトで指定している個数とPGJの使った個数が合わんが?」という、お問い合わせをいただきました。
答えは簡単。 最近は種類が増えました。  http://www.desiccants.clariant.com/fileadmin/pages/clariant/user/cdp-pdf/CDII_Eng_ProdSheet.pdf
PGJがこの対策を取った時代、CD-IIの選択肢は1種類しかなく125gパックのみでした。 この125gパックをCD-IIサイトでは20ftコンテナで30個以上使えと指定していますが、PGJが使ったのは12個。
その違いは下図のとおり、コンテナ内部の空気量です。  自動車1台積む場合と缶詰満載では空気の量が違います。 除湿剤は空気中の湿度を減らすものですから、空気が少ない場合はおのずから使用量は減ります。
まぁ 初めて使われる方はSudChemi社指定の個数をぶち込んで、様子を見ながら減らすとよいでしょう。 デバンの時にゲル化していないものが出てきたら、それは除湿剤入れ過ぎの証拠。
貨物の差異によるエアスペースの差

2.  荷崩れ破損
stopper20ftや40ftの海上コンテナを見て いると巨大で、びくともしない と思いがちですが、これを運んでいる輸送機械はそれらコンテナを楽々振り回せる巨大機械であることを忘れてはいけません。
バスの中で立っていて急ブレーキがかかったら? 吊革につかまっていなくてはあなたはすっとんでいきます。 貨物でもそれは同じ。
コンテナを載せたトレーラーが急ブレーキをかけたり、ぶつかったり。 中の荷物がしっかり荷付けない場合はその度にコンテナ内で滑った転んだです。
パレットで積む場合、ほとんどの場合はパレットの寸法とコンテナの床面積をぴったり合わせて中で貨物が滑らないようにしますが、どうしても隙間が出てしま う場合には、滑り止めを釘で打ち付けたりもします。(右写真)

crush古典的ですが、パ レット上の貨物自体もシュリンクラップで縛り上げたりする手もありますが、
あまり引っ張ると段ボール箱が左のように輸送中に圧縮破損しますよ。

こうなると、段ボールカートンの中に化粧箱入りの製品が入っていると全ての化粧箱に皺が入って全損です。 ToT)






水性の貨物結束糊でパレット上の貨物を固定する手もあります。  





この他にも、昔はホットメルトなんてものもありましたが、 ホッ トメルト は、段ボールの封函にはいいですが、パレット上の貨物同士を固定する方法としては過去の遺物になりつつありますが。 好きな人は好きです ねぇ。
このほかに隙間に 貨 物用エアバッグ を差し込み膨張させておく手もあります。

3.  熱害変質

あんまりひどい場合には、樹脂製品(特に熱に弱いABSなど)が変形してしまうくらい直射日光を浴びた海上コンテナは熱くなるのです。
食いものの場合の話はこちら

4.  本船沈没

泣きたくなるのは、船火事や機関故障、船会社にとって最悪なのが本船沈没です。
船火事では、貨物は燃えるか、いぶされて異臭がつくか、同時に機関故障で電源喪失したりすると、リーファーは冷凍機が止まって、中身の冷凍品が腐敗。。。
形が残ったままで港にたどり着いたりすると 海事検定協会 に「売り物になり ません」証明を出してもらわなくてはいけませんが、彼らが知らない分野の製品については荷主が「これ売り物になりません」という説明をしてやらないといけ ません。
これがまた手間でねぇ。 火事でイブ臭くなったケチャップをブラインドテストして、「ほら全員、火事で燻されたコンテナのケチャップが臭いって言ったで しょ」とまでやる羽目になったりもします。
ですからCIFや発地扱いのDDUなら、荷主としては「沈んじまえ」なんですが、急遽B747の航空貨物チャーターして引っ張ったりすると、それはそれで コストかかるしねぇ。 
地球を1/4周するとY2Kのころでもチャーター代2,000万円ほどかかりました。   まぁ、海上で60日掛かる貨物を2日で運ぶんだから安いといえば安いんですが。
これらは予防のしようがないので、保険をばっちり掛けるしかないですね。

で、21世紀に入ってからのコンテナ船事故いろいろ。
 マースク  Eugen Maerskの火災  2013
 コスタメア  Rena の座礁沈没  2011
 商船三井  MOL Comfortの船体破壊、火災沈没  2013 
 

関連サイト
日本海事検定協会: http://www.nkkk.or.jp

日本郵船: http://www.nyk.com/
商船三井: http://www.mol.co.jp/
国土交通省海事局: http://www.mlit.go.jp/maritime/safetyenv/
ロイド船級協会: http://www.lrs.or.jp/
wikipedeiaコンテナ: http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%86%E3%83%8A
ライブ船舶トラッキングサイト: http://www.marinetraffic.com/ais/jp/
MTIコンテナ内温湿度変化のメカニズム: http://www.monohakobi.com/ja/solutions/quality_control/handbook.html

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