その次の年の特機隊の入隊試験で、晴れて遠山は合格し入隊した。それからは日々厳しい訓練に時間を費やし、気がつけば朋美と会う時間も無くなっていた。 そしてその年−伝説の闘い・乾巧と木場勇治の闘いが起きた。 それ以降、特機隊はデモやテロの制圧に奔走した。 その日はスマートブレインの研究所に侵入・占拠し、人間への抑圧を止めることを要求している 反乱組織の制圧が任務であった。 「やつらはこの施設で研究されていた化学兵器を奪い、それを武器に占拠している。
我々の任務はその兵器の奪還と反乱組織の壊滅である。」 部隊長から作戦命令が下ると遠山たちは施設の各部から強行突入を開始した。 遠山は2階からの侵入を担当した。 窓ガラスを破り侵入する遠山。そこは長い廊下であった。 ライオトルーパーに変身すると遠山は銃をかまえその廊下を奥へと進んだ。 その突き当たり、ふいに遠山を銃弾が襲った。 それをよけるとしゃがみ込み、そうっと銃弾が飛んできた方向を見る。 そこにはヘルメットとガスマスクに防弾チョッキ、手に銃を装備した三人の反乱組織のメンバーがいて 遠山の方へ銃をかまえ近づいてきていた。 遠山は腰につけた閃光弾を外すと安全レバーを外し、その三人の方へ投げつけた。 大きな爆発音と激しい光に煙が発生する。 その煙の中から二人のオルフェノクが飛び出してきて遠山につかみかかった。 一人は手にした銃で撃ち落したがその間にもう一人と取っ組み合いとなった。 遠山はゼブラオルフェノク(シマウマの特性を持ったオルフェノク)に変化するともう一人を手にした スピアで突き刺した。 刺されたオルフェノクは人間に戻ると、残った一人に「それを使うんだ…!」と、最後の一人が持つ スマートブレインのケースを指差した。 恐らく、そのケースの中に奪われた化学兵器が入っているのだろう。 その内容はよく知らないが、オルフェノクの細胞に壊滅的なダメージを与えるものだということは 知っていたので、遠山はそうはさせまいと最後の一人に向かって走り始めた。 相手は何故か立ち尽くしたままで、逃げようとも攻撃しようともしない。 だが遠山はそんなことを気にも止めず、手にしたスピアを突き出した。 スピアが最後の一人の体を貫き、抜いた瞬間ヘルメットが転がり落ちた。 その下から長い黒髪とともに赤いリボンが現れた。 −まさか! 遠山はすぐにその体を抱きかかえるとガスマスクを外した。 そのマスクの下にあったのは紛れもない朋美の弱々しい笑顔だった。 「…朋美?どうして…なんで、お前が…!」 遠山は怒りとも悲しみともつかない顔で朋美を見つめた。 その目からは涙が流れ落ちている。 「…どうして人間なんかのために…」 そう言う遠山に、朋美は悲しげな顔で 「…直樹…私たちだけが…オルフェノクだけが幸せになるなんて…きっとダメなんだよ…
私たちも元々は人間だったんだから…オルフェノクと人間は…
手を取り合って生きていくべきなんだよ…」 と語りかけた。 遠山は朋美の優しさを知っている。 きっと乾巧と木場勇治の闘いを観て、人間への優しさが生まれたのだろうと思った。 「直樹…私の…最後の“わがまま”聞いてくれる…?」 そう言うと朋美はゆっくりと自分の髪を束ねていたリボンを解いた。 「これを…私だと思って…大切にして…私のこと忘れないでいてほしい…お願い…」 直樹は何回も頷きながらそのリボンを受け取った。 「…ありがとう…直樹…」 そう言うと朋美は微笑み、瞼を閉じた。 そのまま瞼は二度と開くことなくやがて青い炎がその全身を包んだ。 「朋美…」遠山はしばらくその場で泣き崩れた。 皮肉にも遠山は化学兵器を奪還した功労者として賞されるが、間もなく特機隊を辞めた。 そして大学時代の山上を訪ね、ライダーズギア開発部に入ったのである。 遠山の右手に巻かれたリボンはもうブランドのロゴなどのプリントは消え、擦り切れてる箇所もあった。
遠山の言葉に山上はニコッと笑うと
「いつ観てもこの闘いには驚かされるよ。」と再びモニターに振り返る。 ちょうどファイズエッジがサイガの体に直撃し、青い炎をあげサイガが崩れ去るシーンであった。
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