遠山がまた話しかける。「乾巧はファイズギアを使いこなせるでしょうか?」 その質問に山上は映像の中の闘いの終わり−巧と真理が手をつなぎ歩いていく映像−
を見届けてから答えた。 「きっと大丈夫だ。彼なら」 そう口にし、頷くと山上はまたニコッと笑った。 映像が消えると同時に明かりがつく。 山上と遠山は巨大トレーラーの中にいたのである。 そこへ新城と福地、そして美香が入ってきた。 「もうお日さんも真上に来とるっちゅうのに、連中動きませんで。」 と首をふりながら新城が言った。 「所詮、情けないリーダーのもとに集まった頼りない連中なんだから、仕方ないんじゃない?」 そう美香は不機嫌そうに言った。 本来なら朝のうちに集まり、乾巧の捜索に向かう予定であった。 だが相変わらず人間解放軍とライダーズギア開発部の間の溝は埋まらず
すでに昼過ぎになってしまった。 「えらい、啓太郎のこと気になるんやなぁ、美香?お前ひょっとして…」 そう新城が言いかけると美香は新城の顔を睨みつけながら 「私はリーダーとして山上さんと啓太郎を比べただけよ。まぁ、比べるだけ無駄だったけど。」 そう言うとまた不機嫌そうな表情を浮かべる。 そのやりとりに苦笑しながら 「啓太郎くんは立派なリーダーだと思うけどね。」と山上が言った。 「はぁ?」新城が信じられないと表情を浮かべる。 「リーダーのくせに自分から見張りをかって出るような男がですか?山上さん?」 「彼は他の誰かが犠牲になるなら、自分がそうなることを望んだんだよ、きっと。
彼は実に仲間想いだと僕は思うけどね。」 その言葉に美香以外のメンバーは苦笑した。 山上は昔から人をほめることしかしない。 それが彼のいいところであり、悪いところでもある。 「話しの途中に悪いけど…」 美香がトレーラー内のモニターのひとつを睨みながら言った。 皆がそのモニターに注目した。 スマートブレインの偵察衛星ホークアイから送られてきた映像が映る。 彼らのトレーラー、つまり人間解放軍の基地に向かってくる1台の装甲車と 10台のジャイロアタッカーが拡大された。 「どうやら敵さんのお出ましらしいな。」 そう言うと山上たちは各々ギアを手にしてトレーラーから外へ出た。
|