クロコダイルオルフェノクに変化したジェイは遠山、新城を目前にして大きな“咆哮”をあげた。Mr.ジェイ−クロコダイル(ワニ)の特性を持つオルフェノクへと変化する彼は3つの命を持つという 珍しい存在である。 しかしその3つのうち2つがすでに失われていた。 1つは草加雅人の変身したカイザによって、1つは流星塾生の変身したデルタによって。 いずれもギア奪還の失敗によるものだったが、そのかわりに彼は凶暴態、さらには激情態という パワーアップを果たした。 対する新城はパワータイプで猪突猛進的な戦闘スタイル、遠山は慎重ではあるが デルタギアを扱う3人の中で最もギアの特性を知った人物である。 クロコダイルオルフェノクの足下から影が延びジェイの姿が浮かび上がり 「シンユウノカタキ!」と叫んだ。 「シンユウ?」 新城が首をかしげた。 「お前と福地が倒したプレジデントのSPのことだ。」と遠山が新城に教える。 「あ〜、あのバッファロー野郎のことか。ほな、お前もすぐに一緒の場所におくってやるわ!」 そう言うと新城がクロコダイルの正面からパンチをあびせた。 それを胸で受けたクロコダイルは少しも動じず、カウンターで新城の腹部に強力なアッパーを
打ち込んだ。 まともに受けた新城は吹き飛ばされ遠山の横に打ちつけられた。 「山上さんの言葉を忘れたのか!?真正面から突っ込んでいくヤツがあるか!」 遠山が新城を叱咤した。 「…了解」 腹を押さえながら新城が立ち上がった。ジェイは再び咆哮をあげた。
「お手並み−拝見といきましょうか」 センチピードオルフェノクの足下から延びた影に映る琢磨の顔に余裕の笑みが浮かぶ。 琢磨逸郎−センチピード(ムカデ)の特性を持つオルフェノクへと変化する彼もまた激情態への パワーアップを果たしていた。 対する福地は普段は物静かで口数も少ないが、戦闘では攻守のバランスのとれた スタンダードタイプの戦士である。 琢磨の手に彼の武器である鞭が現れた。 それを見た福地はデルタドライバーからデルタムーバを取り外し 「ファイア」と音声入力をした。 琢磨が鞭での攻撃を開始する。 飛んでくる鞭の先端に向かって、福地はブラスターを浴びせる。 その射撃の腕は抜群である。 しばらく繰り返すと、琢磨は鞭の先端を自分の方へと引き戻した。 「なかなかやるようですね−それならば…」 右手に鞭を持ち左手をだらんと下げる。 その左手にも新たな鞭が現れ、右手の鞭の先端が鋭いカマに変化した。 左手の鞭の先端はトゲの生えた鉄球状になっている。 「今度の攻撃はさばけますかね?」
「お久しぶりね、美香ちゃん…」 影山冴子の変身したロブスターオルフェノクの足下から延びた影に映る冴子の顔がそう言うと微笑んだ。 しかしその目は微笑んでいない。 「1年ぶりくらいかしら…?」 そう続ける冴子に対して美香は何も応えなかった。
約1年前−乾巧と木場勇治の闘いの後ではあるが−シグマギア装着者選考会(模擬戦闘)決勝戦。 大観衆の声援に包まれたスタジアムの中心にスマートブレイン社シード選手の影山冴子と ここまで勝ちあがってきた無名の戦士・山科美香が対峙している。 決勝前の下馬評では、冴子の勝利でほぼ間違いないと思われていた。 しかし− 「READY FIGHT!」 主審の掛け声で冴子はロブスターオルフェノクへ、そして美香はホーネットオルフェノク (スズメバチの特性を持ったオルフェノク)へと変化した。 両者の手に武器が現れる。奇しくも同じサーベルである。 美香は身構えると、冴子の攻撃より早く飛翔した。 ある程度上昇すると急降下し、冴子に攻撃をくわえる。 冴子は上空の敵に対する攻撃法を持ち合わせておらず、美香にカウンター攻撃を試みるが予想以上の 素早さにただ彼女の攻撃は空振りし、美香の連続のヒット&アウェイ戦法に苦戦するだけだった。 主審の警告の笛が鳴る。 冴子を見かねて、美香に対して注意をしたのである。 だがそんな主審の行動は冴子のプライドを傷つける行為でしかない。 警告を受けた美香は地上に降り立ち、冴子と切り結んだ。 しかしスピードで上まわる美香の攻撃に冴子は次第に押されるようになった。 そんな冴子の耳−オルフェノク特有の異常聴覚−が 「ラッキークローバーの影山冴子が…あんな無名の女子に押されて情けない」という声をとらえた。 その言葉に一瞬冴子は動きを止め、声の主を探した。 彼女の目に映った主審の顔が嘲笑っているかのように見えた。 その一瞬のスキさえ美香は見逃さなかった。 鋭い一撃を冴子の体に与えた。その衝撃で吹き飛ぶ冴子。 立ち上がるときにまた「影山冴子の実力もたいしたことないな…」と声が聴こえた。 主審の方を見た冴子の目が主審の口元が彼女を罵る言葉を吐いているのを目撃した。 次の瞬間、冴子は主審に飛び掛っていた。 その結果…冴子は失格、勝者は山科美香となった。 かくしてシグマ装着員は美香となったのである。
「美香ちゃん、あなたとこうして敵同士で再会できたことを嬉しく思うわ。
だって堂々とあなたを葬ることができるんですもの。」 そう言うと影の中の冴子の顔がまた微笑む。 「見ればわかると思うけど…今の私はあのときの私とは違うの。」 そう、冴子が変化したロブスターオルフェノクもあの闘いがきっかけで激情態へと
進化していたのである。 相変わらず何も言わない美香に対して、冴子は 「おしゃべりは好きじゃないみたいね?…それじゃあ私たちも始めましょうか?」 そう言うと、その手に強化されたサーベルが現れた。 美香もそれに応えるかのように、ミッションメモリーをベルトにマウントされている
シグマウェポンに装填した。 Σ型の武器となったウェポンをかざし、冴子に斬りかかる。 冴子はその攻撃をサーベルで受け止めた。
「ねぇ?かかってこないの?」 山上と対峙したドラゴンオルフェノクの足下から延びた影に映る北崎の顔は楽しげである。 北崎−ドラゴンオルフェノク(龍の特性を持つオルフェノク)に変化する彼は
他のオルフェノクと違い伝説上の生物に変化する能力を有し、暗黒の四葉中最強である。 何より恐るべき能力は、触れたもの全てを灰と化すものである。 そんな北崎と闘う山上は頭の中で闘いをシュミレーションしていた。 山上哲哉−ライダーズギア開発部の局長を務めていた彼は、全てのギアに精通しており その最も適した使用法なども熟知している人物である。 彼が集めた北崎のデータ分析をもとにすればファイズ2NDの能力を駆使すれば、その撃破も
難しいことではない。 だがデータが全てではないことは、乾巧のファイズとレオのサイガの闘いですでに明確となっている。 絶対ということなどないのだ。 「そっちからこないなら、こっちからいくよ。いい?」 じれったそうに北崎が言う。 その言葉に応え、山上は彼が最も得意としているファイズエッジを起動させた。 紅い光刃を振りかざすと、北崎に連続的な攻撃をあびせた。 だがその全てがドラゴンクローによって阻まれた。 山上はすかさずファイズエッジにチャージした。 強力な一撃がドラゴンクローの防御を崩す。 がら空きになった北崎の体めがけて突きを繰り出す。 命中の瞬間−ドラゴンオルフェノクの体から脱皮するかのように別形態−龍人態が現れた。 「何!?」 驚く山上に、北崎が雷を伴う鋭いカウンターを与える。 まともにくらいその場に倒れこむ山上。 その姿を見下ろしながら北崎が楽しそうに言う。 「まだまだこれからだよ。もっと楽しもうよ。」
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