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<4・州浜の本性>

「お茶が入りました♪」

スマートブレイン本社・社長室。

スマートレディは州浜のもとへと淹れたての日本茶を持ってきた。

それを置くのを見届け

「面白いものを見つけました…」と州浜は机の上に何かの資料を放り出した。

「厳重機密事項」と大きな赤文字が表紙に躍っている。

その資料にスマートレディの目は釘付けになったが、慌ててその視線をひきはがした。

スマートレディのその様子を見て、州浜はニヤリと笑った。

「どうやら知ってるようだな…」

そう言うと立ち上がりスマートレディに近付く。

驚き狼狽し壁に背をついたスマートレディの顔の横に右腕を突いた。

反射的にスマートレディは左側に逃れようとするが、すぐさま州浜は左腕も壁に突いた。

「な、何のことか…私は全〜く知りません…」

いつもの口調でごまかそうとするがいつものように“キレ”がない。

そのスマートレディの口元を右手で持ち上げると、ちょうど口づけをするような感じで

州浜は顔を近づけ

「素直に喋った方が身のためだと思いますが…」

と言うと穏やかな表情が一瞬で冷酷な顔に変わった。

その顔を見て、スマートレディの顔が今までに見せたことのない恐怖の表情になった。

「そうだ、ここは交換条件ということでいこうじゃないか…私の秘密を君に教えてあげるから
 その代わりに君は私にあれの在りかを教えるってことでどうだろう?」

そう言うと州浜は右手をスマートレディの首にかけた。

スマートレディはそれに怯えながらも黙って頷いた。

「フフ…さすがは話がわかる人だ。それじゃあ、私の秘密を教えてあげよう」

と言うと州浜はスマートレディの耳元に口を近づけると、自分の秘密を“告白”した。

それを聞いたスマートレディの顔に驚きの表情が浮かんだ。


スマートブレインの一室−真っ暗な空間に州浜は足を踏み込んだ。

「誰だ?」

部屋の中央に3つのビジョンが浮かんだ。

それは数日前に州浜を怒鳴りつけた大幹部いわゆる“黒幕”であった。

「州浜か…いったい何の用だ?」

「わしらは呼んだ覚えはないぞ。」

「突然入ってくるとは無礼ではないか!」

3人の口からそれぞれの言葉が発せられる。

州浜は笑顔で一礼して

「無礼は承知の上で、本日は御3人にお見せしたいものがありまして…」

そう言った。

すると後からスマートレディが部屋に入り、一礼すると手元のリモコンを操作する。

3人のビジョンの後の大型モニターが像を結んだ。

その画像には3つの大きな水槽と、その水槽から伸びたいくつものケーブルがロッカーのような

大きな箱につながっている光景が映った。

その水槽の中には…それぞれ朽ちかけたオルフェノクが横たわっていた。

−灰化遅延装置と3人の脳を移植したスーパーコンピューターがその正体であった。

「こ、これは!」

3人の黒幕が驚きの声をあげる。

「常々御3人に一度、直接お会いしたいと思っていましたが…私も驚きましたよ。」

とそれぞれの顔を見ながら面白そうに州浜が応える。

「スマートレディ、キサマ喋ったな!」

そう黒幕が声を荒げる。

「え〜ん、ごめんなさい、だって喋らなければ殺すと社長に言われたので…」

そう泣きまねをした後、おどけるようにおじぎをする。

「ふざけるな!」と怒る黒幕に対して

「ふざけているのはあなたたちでしょう?」と州浜が反論し

「これがあなたたちの言う“永遠の命”ですか?」と続けた。

「違う!私たちはオルフェノクの王がみつかるまで、こうして…」

そこまで言うと黒幕たちは州浜のニヤリとした顔に気付き、あとの言葉をのみこんだ。

「なるほど…王探しも、しょせんは自己保身のためのものだったか…」と州浜が言うと

「ち、違う、私たちは全オルフェノクのことを考えてだな…」

「そうだ、私たちがまず永遠の命を得て、王を中心にした完全なスマートブレインの支配を
 実現するのだ。」

そう黒幕たちは弁明した。

だが

「今更、何を言っても手遅れですよ。」と州浜は冷たく言い放った。

そしてスマートレディに合図した。

するとスマートレディは携帯を取り出し誰かと会話を始めた。

間もなくビジョンの後のモニターに数人のライオトルーパーが現れた。

「何だ、何をする気だ!?

それを見て黒幕たちが慌てはじめた。

「彼らは元プレジデント親衛隊です。今では私の言うことをよく聞く、いわば私の親衛隊です。」

と州浜は微笑んだ。

「違う、私たちはそんなことを聞いたのではない!あいつらは何をする気だと聞いたのだ!」

そう声を上げる黒幕たちに

「もちろん、あなたたちを始末するのですよ。もはやあなたたちに用はない。」

と冷酷な顔で州浜は言った。

「な、何だと!キサマ正気か!?」と黒幕の一人が言うと

「もちろん、正気ですよ。」と州浜が応える。

「誰が社長にしてやったと思っている!?」と別の黒幕が怒鳴る。

「ふん、12年間も私のことをモルモット扱いしたんだ。
 それくらい当たり前の代償だと思いますがね。」

州浜も怒りの色を顔に浮かべる。

「キサマの狙いは何だ!?何が欲しい?」と最後の黒幕がすがるような声で聞く。

「私の欲しいものは…この世界の全て…」

そう言うとニヤリと笑い

「お別れの時間だ。もう灰化の心配をすることも無くなる…永遠にな。」

そう言い捨てた。

「ま、まて」

「やめろ!」

黒幕たちが口々に叫ぶが

「やれ。」

冷酷に州浜が命令した。

スマートレディが携帯を通して親衛隊に命令を下した。

「ラジャー」

そう言うとライオトルーパーたちは躊躇することなくいっせいに手にした銃で

水槽とコンピューターに銃弾を放った。

断末魔をあげると3人の黒幕のビジョンが消え、室内は暗闇に戻った。

「くくく…これで邪魔ものもいなくなった…これからは私がスマートブレイン
 いや世界の支配者だ!王など要らぬ、この私が王になってやる!」

そう叫ぶと州浜は高笑いをした。

だが−

「…その前にケリを着けなければならないヤツがいたな…。」

笑い顔から冷酷な顔に戻ると州浜はそうつぶやいた。


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