スマートブレインのオルフェノク勝利宣言—世界各国の中枢を完全に掌握したスマートブレイン。 それ以降、各地でオルフェノクによる人間の“狩り”が始まり、世界は恐怖に包まれた。 遥も両親とともに住み慣れた都内の我が家を捨て郊外への逃亡を余儀なくされた。 その途中、彼女の家族はヴィーナスフライトラップオルフェノク (ハエ取り草の特質をそなえたオルフェノク)の襲撃にあったのである。 オルフェノクの放った液体から遥と母親を父親が身を盾にして守った。 だがその液体がかかった瞬間、父親は灰と化したのである。 「キャー!!」 悲鳴をあげその場に座り込む母親と遥。 そんな二人に容赦なくオルフェノクが迫る。 その時−独特のエンジン音をあげサイドカー付きの黒いバイクが横から走りこみ オルフェノクの体を跳ね飛ばした。 バイクを停車させるとそこから降りた男− 草加雅人はオルフェノクを見下しながら 「ふん」 と鼻で笑うと手にした携帯−カイザフォンにスタートアップコードを打ち込んだ。 「STANDING BY」 「変身!」 雅人はカイザフォンをかまえ、ドライバーに素早く装填した。 「COMPLETE」 眩いばかりの黄色い光が雅人を包み、カイザへと変身する。 雅人は首元のアーマーに手をかけ、それを直すようなしぐさをした後 ゆっくりとオルフェノクへ歩み寄った。 オルフェノクはすぐさま立ち上がると、雅人にパンチを放つ。 だが雅人はそれをかわすと素早い左右のパンチを打ち込む。 それを受けふらつくオルフェノク。 しかし体勢を立て直すとまたパンチを放った。 が、今度はそれを雅人の腕が叩き払い、オルフェノクの脇腹に強烈なキックを叩き込んだ。 オルフェノクは脇腹を押さえながら後へ飛び退くと、両腕を伸ばしコートの袖のような 手元から液体を放った。 遥の父を殺害した毒液である。 雅人はそれをとっさによけるとオルフェノクの横に回り込もうとする。 だが、オルフェノクも雅人を正面にとらえようと回転する。 また毒液を放つ。 今度は雅人が一足飛びで後退しながら腰のカイザブレイガンを取り外し オルフェノクの手元—毒液を発射するノズルを狙い撃った。 両腕を撃たれ苦しむオルフェノクに、雅人は間髪をいれずに全身に フォトンブラッドの弾丸を撃ち込んだ。 その攻撃でオルフェノクは昏倒したようにその場でふらふらと立ち尽した。 雅人はそれを見るとフォンからミッションメモリーを取り外し、ブレイガンに装填する。 ブレイガンがガンモードからブレードモードに切り替わる。 カイザフォンのENTERキーを押す雅人。 「EXCEED CHARGE」 黄色い光がカイザフォンから、右腕のブレイガンに流れ込む。 強力なフォトンブラッド弾が放たれ、オルフェノクの体を束縛した。 雅人はブレイガンをかまえると、即座に走り出した。 やがて黄色い閃光となったカイザがオルフェノクの体を貫き、“χ”の一文字を残し跡形もなく オルフェノクを葬り去った。 雅人はその光景を見ながら変身を解くと母娘のもとへと駆け寄った。 「おい、何をしている!早く逃げないとまたヤツラがやってくるぞ!」 遥の母親は泣き叫びながら、変わり果てた父親の“灰”を手でかき集めている。 「お母さん!」 遥も泣きながら、そんな母親を必死に止めようとしている。 「お母さんはおかしくなってしまったのではないか?」 そう遥は心の中でつぶやいた。 「ともかくこの場から離れるんだ!」 雅人はそう遥に言うと、母親を引きずるようにして、サイドバッシャーのサイドカーに乗せた。 雅人はヘルメットをかぶりサイドバッシャーにまたがると、遥に後へ乗るように促し 遥が乗ったのと同時にその場を走り去った。 やがて遥たち母娘は郊外の人間居住区に到着し、生き延びることができた。 だがしかし− ある日突然、遥の母親は高熱を発し倒れたのである。 医者に観てもらったところ、それはオルフェノクの毒によるものだと言われた。 何か思い当たることはないかと医者に聞かれた遥は、父親がオルフェノクの毒液によって殺害され その灰を母親が必死にかき集めようとしていたことを話した。 おそらく、その灰にオルフェノクの毒が残っていたのだろう。 それに長く触れていた母親もまた毒に侵されたのであろうというのが医者の見解であった。 医者は1回分だけオルフェノクの毒を中和する薬を母親と、遥にも予防として処方してくれた。 だがそれ以降はお金を持っていない母に診察どころか、薬の処方すらしてくれなかった。 オルフェノクの毒の中和薬は人間居住区では高値で取引されている −お金を稼ぐこともできない遥は、それゆえに危険を冒してでも母親を救うために オルフェノクがひしめく街へと出て薬を盗もうとしたのであった。
翼と遥の小さなデート− 薬局で薬を買って短い時間だが公園を散歩したりするささやかだが、楽しいひとときだった。 −だが、それも長くは続かなかった。
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