その頃スマートブレイン本社では— 2つの事件と1つの事実に“黒幕”たちが怒りをあらわにしていた。 新社長・州浜伊織から事件の経過が報告されたのである。 傍らに立つスマート・レディは1ヶ月前のことを思い出していた。
「は〜い、みんな、注目〜♪」 スマートブレインの大型研究施設BASTET(バステト)のメインホールで スマート・レディが社会見学に訪れた小学生たちに呼びかける。 左腕を高々と上げると、腕時計を見せた。 「みんなにはこれが何に見えるかな?」 少し変わったデザインだが… 「腕時計!」と元気な返事が返ってきた。 「それでは…」とスマート・レディは時計のボタンを押した。 するとスマート・レディの全身を青い光が包み、次の瞬間スマート・ブルーの強化スーツを 全身に装着した姿が現れた。 「これはBASTET(バステト)が開発した新しいライオトルーパースーツ…
その名も!バイオトルーパーです♪」とスマート・レディの声が会場に響いた。 「うわ〜」「かっこいい〜!」と子供たちの間から歓声があがった。 変身したスマート・レディはまるでモデルのようにステージの上を歩き、ポーズをとる。 そんな彼女にステージの下から呼びかける声があった。 その声の主としばし会話を交わすと、変身を解除したスマート・レディは泣き真似をして 「え〜ん、残念、お姉さんは大事な用事ができてこれ以上みんなと一緒にいられません。
けどみんなはいっぱい見学して楽しんでくださいね♪」 子供たちの間から残念そうな声があがる。 だがそんな子供たちの声に振り返ることもなくスマート・レディはブルーの愛車に乗り走り出した。
スマートブレイン本社の一室。 3人の“黒幕”のビジョンの前に現れたスマート・レディは
「お待たせしました。」と頭を下げた。 「そこのメモリーカードを…」 ビジョンに促され、テーブル上のメモリーカードをスマートパッドに差し込む。 スマートブレインのロゴの液晶に一人の男の情報が現れた。 州浜伊織—「これから君たちの上に立つ新社長となる男だ」 スマート・レディはその声に答えず、情報に目を通した。 経歴の欄は空白。備考の欄、ここにはオルフェノク時の特性等が書かれている。 …が、しかし− 「unknown」 未知つまり不明と書かれているだけであった。 スマート・レディが知る限りこれは異例のことである。 「我らの王を見つけ出し、完全なるスマートブレインの支配をもたらすことができる男だ。
就任式は1ヶ月後—それまで準備の方をよろしく頼む。」 「かしこまりました。」 頭を深くさげるスマート・レディ。その表情はどことなく嬉しそうだった。
州浜伊織は今回の犯人たちについて話をはじめていた。 事件の起こる直前にBASTETの研究施設からライダーズギアとそれらに関する全ての 車両が奪われていたことが判明した。 しかし警報装置が作動しなかったため、発見された頃には両方の戦闘が進行していたのである。 だが、この事実が犯人象を明確にしていた。 それは内部犯行— 施設には特定の人物しか出入りできない。 空港から本社までのルートは社内のごく一部の者にしか知らされていない。 そして襲撃現場から脱出した代表者たちを乗せた装甲車を追跡し、次々と大破させ生存した プレジデントと首領と呼ばれる両代表者を抹消したシグマ。 これはシグマ・プロジェクトという新世代ギア開発実験にて造られたもので
他のギアとは違い特定の人物しか装着できない。 ジェットスライガーを駆っていた少女はその装着員である「山科美香」だと予想される。 次にギア装着者たちがギアの使い方を熟知していたこと。 これは犯人たちがギアに密接に関係していたことを示していた。 最初にトレーラーから飛び降りた二人の男が変化したオルフェノクの特徴はいずれも ライダーズギア開発部に所属していた新城と福地という人物であったことが判明している。 そしてライオトルーパー部隊から人間解放軍を救った白いファイズ=ファイズ・2NDを
装着していたのはその性能実験に最も多く関わった男・山上であると予想された。 彼は初代社長花形の助手としてデルタ、ファイズ、カイザのギアを開発し
前社長村上のもとでは自ら指揮をとりサイガ、オーガのギアを開発したライダーズギア開発部の
局長を務めた男である。 もちろんシグマ・ギアも彼が手がけたものであった。 これが事実ならライダーズギア開発部の関係者がギアを奪いスマートブレインに
叛旗を翻したことになる。 「ギアの力はあなどれん。ライオトルーパー部隊では力不足だ…どうする?」 “黒幕”たちが新社長に判断をせまった。 「手はもう打っています。明日にはラッキークローバー4人が帰国します。
彼らにギアの奪還と裏切り者の抹消を任せるつもりです。」 と新社長は余裕の笑みで答えた。
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