「ほっほっー、やってるねぇー!」離れた場所から戦場を眺め、楽しそうにライオトルーパー隊長・鮎沢は言った。 前隊長の戦死後、その任についた鮎沢は、普段は指令本部に入り前隊長のように 前線に立つことはなかった。 しかし今回の「掃討作戦」では彼はまた別の任務でここに立っていた。
作戦の数日前−彼はBASTETの館林綾から“デート”に誘われた。 ずっと憧れながらアプローチはしていたものの、相手にされなかった彼女から初めて 声をかけられたのである。 鮎沢は天にも昇る気持ちだった。 そのデートの最後・綾行き着けの高級レストランでディナーを楽しんでいるときに 鮎沢は綾からある質問を受けた。 「州浜新社長のこと、どう思いますか?」 それに鮎沢は本心で答えた。 「あの男はたった1回の失敗で自分たち国内のライオトルーパー部隊をないがしろにし
外からやってきたプレジデントの親衛部隊を大事にしている。
はっきり言って気に食わないヤツだ」 そう言った鮎沢を見て綾は嬉しそうに微笑み甘えるような声と仕草で 「ねぇ、私に力をかしてくださいませんか?」と言ってきた。 州浜を抹殺して私たちの思い通りの“正常”なスマートブレインにする−それが綾の希望だった。 そのためにライオトルーパー部隊も協力してほしいとのことだった。 鮎沢は二つ返事で引き受けた。 ここで力になれば綾も自分に好意を持つはず… 綾とスマートブレイン内での絶大な権力が手に入れば言うことなしである。 「それじゃあ、私たちの未来に乾杯…」 そう二人は乾杯した。 もちろんその時に綾の微笑みの奥に「単純な男…」という見下した気持ちが あったことなど鮎沢は知る由もなかったが。
「手はずどおりやっているか?ライダーたちには当たるなよ、奴らは後から来る
ラッキークローバーに任せておけ。お前たちは裏切り者と人間たちへの攻撃に集中しろ。
そして…ジェットスライガー隊は待機だ。」
各小隊に通信でそう命令を下す。 「そしてその後は綾たちバイオトルーパー隊、ラッキークローバーと手を組んで州浜と
プレジデント隊の殲滅だ…」と通信を切って独り言のようにつぶやいた。 「よし…それじゃあ、我々も“任務”に取り掛かろうか。綾からの大事な預かり物を“解放”しろ。
まずは3番ケージだ!」と部下に命令を下した。 BASTETから牽引してきた銀色の球体のうち、最も大きな球体のゲートが開かれる。 中に入ってるもの−それはBASTETが造りだした人工オルフェノクであった。 ゲートが開くと同時に中から巨大な生物が姿を現す。 全身灰色、両腕の代わりに大きな蝙蝠を思わせる翼、触角のような角を生やした虫を思わせる顔立ち。 所々に機械金属のようなものが付いているのはおそらく体をつなぎあわすためのものなのだろう。 つまりこのオルフェノクは多数のオルフェノクを合成して造りだされたものなのである。 「ギャー」 金属をこすり合わせるような奇声を発し、人工オルフェノク・通称ビートルが飛び上がる。 ものすごいスピードでビートルは戦場の上空に控えた飛空挺めがけて飛び、口からいくつもの エネルギー波を発した。 反撃する間もなく飛空挺が爆発炎上し、地上に落ちた。 ビートルは向きを変えると引き返し、戦場の中心に舞い降りるとその口で周囲のライトルーパーや オルフェノクを“ついばみ”はじめた。 「おいおい、敵味方の区別もつかねーようだなぁ。」 半ばあきれた感じで鮎沢が言った。
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