「ギャー」 ビートルがまた奇声を発する。 その瞬間、啓太郎や真理、彼らの仲間のオルフェノク数人が耳をおさえ苦しみはじめた。 同じ状態がライオトルーパーの中でも起こり始めた。 「どないしたんや!?啓太郎!」 新城が啓太郎に走りよった。 「わからない…けどあの怪物の鳴き声を聞いたとたん体がしびれて…」 「なんやて!」 そのやりとりを聞いた山上が 「きっとあの怪物の声が神経に作用して体をしびれさせているんだ…!」と言った。 人間をはじめ弱いオルフェノクにも作用する怪音波を発しているのだと考えた。 その山上の言葉を受けて 「ほな、あの怪物を倒せばええんやな?」 と新城はデルタムーバを腰から外すとフォンに向かって 「スリー・エイト・トゥー・ワン」とつぶやいた。 すると彼らの大型トレーラーからジェットスライガーが飛び出し、新城の前で停止した。 それに飛び乗ると 「ほな、いっちょやりますか!」と言い、ジェットスライガーを急発進させた。 一方、それを観ていた鮎沢も動いた。 「ジェットスライガー隊、あいつを始末しろ!」 口元のマイクにそう命令した。 「了解」の応答と共に鮎沢の後から5台のジェットスライガーが飛び出し 新城のジェットスライガーめがけて走り出した。 ビートルの手前に5台がバリケードのように並び、新城の突進を遮った。 「福地、新城をサポートしろ!」 山上は少し離れた位置で闘う福地に叫んだ。 「はい!」 目の前のライオトルーパーを殴り倒すと福地は手にしたデルタムーバに向かってコードを叫んだ。 間もなく福地の前にもジェットスライガーが飛んできて、すぐさま飛び乗る。 新城と福地−二人は元々スマートブレインモーターズからライダーのマシンメンテナンスを 担当するためにギア開発部へと派遣された社員であった。 それゆえ、オートバジンやジェットスライガーの扱いは手馴れたもので、特に新城は ジェットスライガーの運転において右に出る者がいない程の腕前である。 山上はそんな二人を気に入り、デルタギア使用についての研修プログラムを行った。 二人とも覚えがよく、その全過程を短時間で終了させた。 こうしてより一層二人のコンビネーションは完璧なものになったのである。 福地は瞬く間に新城のもとへと駆けつけた。 それを見て新城が得意げに叫んだ。 「福地、ここはひとつ、ど素人どもにプロの走り見せつけてやろうや!」 福地はふっと笑い親指を立てた。 新城もそれに応え親指を立てた。 それを挑発と受けたのか、5台のジェットスライガーが壁をくずして突進してきた。 それに反応して、福地がまず車体を横に傾け、そのまま滑るように前進した。 その間に新城の車体が福地の後方に回る。 次の瞬間、新城のジェットスライガーが福地と、ライオトルーパーの駆る5台の頭上を飛び越えた。 背後に着地された5台のうち2台が急いで向きを変える。 しかしそれと同時に新城の放ったフォトンブラッド弾が炸裂し、吹き飛んだ。 爆風から逃れた1台の脇腹に福地の操るジェットスライガーが突進する。 フォトンブレイカー −突進を受けた車体は前後真っ二つに割れ爆発する。 1台を追尾していた新城の後にもう1台が付き、フォトンミサイルを発射した。 それを見た新城は、スピードをいっきに落とすと後方のジェットスライガーの横につき車体をはりつけ 回転をはじめた。 上空へ打ち出されたミサイルが標的を捉えようとしばし滞空し、やがて直下へ落ち始める。 新城は数回車体を回転させると、横すべりでライオトルーパーの駆る車体から自らの車体を引き離した。 その直後、ミサイルが発射した車体を爆破した。 その頃には残る1台も福地の標的にロックされフォトンミサイルの直撃で吹き飛んでいた。 新城はそれを確認するとまたビートルめがけて突進を開始した。 周囲に獲物がなくなったビートルが飛び立とうと翼を広げる。 その飛び上がる瞬間、新城の駆るジェットスライガーのフォトンブレイカーがビートルの体を貫いた。 「ギャーアアアアア!」 断末魔をあげると巨大な青い炎の塊となり、ビートルはその場に崩れ去った。
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