同じ頃…最後の一葉となった琢磨と新城・福地の闘いは
本気を出した琢磨の攻撃に翻弄されながらも、遠山の遺志を貫こうとする
二人がじょじょに琢磨を押しはじめていた。
「このっ!」
新城が琢磨の放った鞭をよけながら、一瞬の静止を狙いその先端を掴む。
同時に福地のデルタムーバから発せられた光弾が琢磨の右手を直撃し、その鞭を手放した。
すかさずもう一方の手に照準を合わせるとさらに光弾を発した。
左手からも鞭が飛び離れた。
「よっしゃ!」
それを見て、新城はいっきに琢磨との間合いをつめパンチとキックのコンビネーションを
打ち込んだ。
そこへ福地も加わり、琢磨の反撃をよけながら着実にダメージをくわえてゆく。
二人のキックを受け琢磨の体が宙を舞い地面に落ちた。
「ぐぅ…まさか、この私がここまで追い詰められるとは…
仕方ないですね、やりたくありませんでしたが、あの手段をとるしかなさそうですね。」
そう言いながら琢磨が立ち上がる。
「ぬかせ!今さら何負け惜しみ言うてんねん!」
新城ががなる。
それを気にすることなく琢磨は両手を突き出すと、地面に向かってエネルギー波を放った。
もうもうと土煙が立ち上がり、新城と福地は両腕を顔の前で交差させ身構えた。
やがて土煙が消えると琢磨の姿も消えていた。
「最後の手段って…また逃げることかい!」
そう新城が虚空に向かってがなった。
「逃げる?何のことですか、私は逃げてなんかいませんよ!」
どこからともなく琢磨の声が聞こえたかと思うと、二人の足下が揺れ始めた。
「何!?」
たじろぐ新城と福地の足下が大きくうねると、二人の目前に琢磨の上半身が現れ
続けて地面を突き破る巨大な下半身が現れた。
長くうねるその下半身は百足そのもので、気付けば二人はその体に周囲を囲まれていた。
「この姿になると、翌日体中が痛むんですよ…さて、どうしましょうか?」
そう琢磨が言うと同時にその体が二人を締め上げた。
「ハハハ!これでもまだ負け惜しみだと思いますか?悪いが私の勝ちです!」
とさらにその体を締め上げる。
苦しむ二人を見て琢磨は得意げに笑う。
だが、その目前に二つの赤い光線
−クリムゾン・スマッシュのポインティングマーカーが現れ
次の瞬間Wファイズが琢磨の体を貫いた。
「何—っ!?」
その衝撃で琢磨の下半身が元に戻り、新城と福地も解放された。
急いで立ち上がり周りを見回す琢磨。
だが、彼の目には、いるはずの冴子も北崎も、そして綾たちも居ない光景
−Wファイズと、二人のデルタ、そして見慣れぬオルフェノクが彼を睨みつける
光景だけが映っていた。
「へっ!?えっ!?」
まるで母親を見失った子供のように琢磨はあたりをキョロキョロ見回す。
「お前が最後の一葉だ、琢磨。」
そう山上が怒気のこもった声で言った。
「年貢の納め時やなぁ?琢磨さん?」
そう言いながら新城が近づく。
「うそだっ、これは何かの間違いだ!そうだ、何か悪い夢を見てるに違いない!」
そう叫びながら琢磨は脱兎のごとく走りはじめた。
「野郎!逃がすか!」
新城も琢磨を追いかけ走りはじめた。
琢磨の走る先−その前に州浜が立ちはだかった。
「どこへ行くんです?琢磨さん。まだ闘いは終わっていませんよ?」
州浜がそう言いながら両手を広げた。
「うわーっ!」
琢磨はその制止をきかず州浜の体に当たりながら横を抜けようとした。
「ふん…往生際の悪い男だ…」
そう言うと州浜は琢磨の肩をつかんだ。その手から赤い炎が噴きあがる。
琢磨の全身が炎に包まれオルフェノクの姿から人間の姿に戻る。
「う、うわ、うわ!」
やがて赤い炎が青い炎へと変わり、断末魔を残し琢磨の体が灰と化し崩れ去った。
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