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<9-2・山上の決意>


哲哉は病院のベッドで目覚めた。

「山上−哲哉君だね。」

ぼんやりとした視界に背の高い男性が映った。

「安心したまえ、ここは我々スマートブレインの病院だ。」

不安そうにあたりを見回す哲哉に男はやさしく言った。

「私の名前は花形、スマートブレインの社長をしている者だ。
 君は我々の施設の火事から救い出された、ただ一人の少年だ。」

花形はそう続けた。

「兄は…?」

とっさに哲哉は思い出し口にした。

「伊織君は…無事だ、安心したまえ。ただ…」

そう言うと花形は少し黙りこみ、困惑した表情で

「君は二度と…お兄さんとは会うことができないかもしれない…。」と続けた。

それを聞いた哲哉は少しショックを受けたが、何となくホッとして心のわだかまりが

晴れたような気がした。

「そうですか…」

そうつぶやくと穏やかな表情になった哲哉の顔を見て、花形も安堵の表情を浮かべ

「これからは私が君の父親になろう。よろしく哲哉。」と言った。

その後、山上は中学・高校と進学し、やがてスマートブレインの出資する専門技術の

短大に入り卒業後、スマートブレインに入社し花形の助手としてベルトの開発にたずさわった。

花形の失踪後は自ら指揮をとりライオトルーパーのベルト・帝王のベルトを開発。

だが、その間も3本のベルトを持ち去った花形の行動にずっと疑問を抱いていた。

その疑問が彼の中でさらに大きくなったのが1年前の伝説の闘い

乾巧とレオ、木場勇治の闘いであった。

あれ以来、山上は自問自答を繰り返していた。

ベルトとは何か?

ベルトの本当の使い方とは?

彼はまず回収したファイズギアを再度研究し、自ら使用するためのファイズ2ndギアを開発した。

「自らベルトを使い闘えば何かがわかるかもしれない」

無論、彼がそれをつけて闘うことはこの時点ではなかったのだが。

同じ頃1年前の闘いは、スマートブレイン中の体勢にも大きな変化をもたらした。

BASTETの台頭である。

中でも館林綾の活躍は目覚しかった。

彼女の発見した「王の記憶」と呼ばれる全てのオルフェノクの中に存在するDNA

−それに働きかけ力を引き出す新システム「エボリューション機能」を発明したBASTET

それを山上たちライダーズギア開発部のベルトに装備することを決定

共同開発でシグマギアを誕生させた。

だが、コスト面での問題で、シグマプロジェクトは山科美香が最初で最後の試験員として幕を閉じ

その後にBASTETが独自開発したバイオトルーパーに注目が集まり

結果的にライダーズギア開発部は規模を縮小、BASTETの傘下として“格下げ”を命じられたので

あった。

それがちょうど半年前のことであった。

遠山、新城、福地、そして美香と共にBASTETに移った山上は

その研究所で信じられない事実を知ってしまう。

死んだと思っていた兄・伊織が生きていたのである。

しかもスマートブレインは伊織を新社長にしようとしていた。

それを知った瞬間、山上の中で続いていた長い自問自答に答えが出た。

「今こそベルトの力でスマートブレインを倒すべきだ。
 このままでは世界は滅びてしまうかもしれない。」

決断した山上は仲間の説得に取り組んだ。

遠山は彼が手にかけてしまった朋美との秘めた約束を山上に打ち明け、共に闘うことを誓い

新城、福地は山上という人物に“惚れて”いたため従うことを約束し

そして美香は自分のリーダーは山上だから彼に従うと言った。

こうして山上たちライダーズギア開発部はスマートブレインに叛旗をひるがえすことを決め

着実に準備を進めた。

しかしその説得のときにも決して山上は兄のことを口には出さなかった。

やがて全ての準備が整ったとき、新社長として兄・伊織が就任することが正式に決まり

お披露目のパーティーが開催された。

同時にプレジデントの親衛隊が人間解放軍を殲滅する作戦に出たことを知った山上は

行動を開始することを決意、そして今日に至ったのである。

 

州浜の目前まで来た山上。

「あの時は言えなかったが…」

兄の“夢”を聞いたとき、哲哉は本当の気持ちを伝えることができず、ただ黙っていた。

だが−

「あんたの支配する世など誰も望みはしない…!」

山上が州浜を睨みつけ言い放った。

「フン…」

そう鼻で笑うと

「ならばどうする?この俺を倒すのか?貴様らの希望である乾巧ですら倒せなかったこの俺を?」

と州浜は言った。

「何故、スマートブレインが貴様を生かしていたのかは知らないが…貴様はこの俺が命をかけて倒す!」

そう言うと山上は握りしめたフォンに555のコードを打ち込む。

STANDING BY

そのフォンをゆっくりとドライバーにセットする。

COMPLETE

変身した山上は手に巻いていた遠山のリボンを首にまきつけた。

それを見て、州浜もまた鼻で笑うとオルフェノクへと変化した。


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