限りなく広がる真っ白な世界に巧は立っていた。
ここは…?
遠くに人影が現れた。目を凝らしてみる。
見覚えのある人物−近づいてきたその人物が誰であるか巧はすぐにわかった。
「乾くん…」
そう言うと木場勇治が巧に微笑みかけた。
「木場!…すまない、俺はお前との約束を果たせずに…」
巧はそう言うと顔をふせた。
だが勇治はそれを見ると少しおかしげに笑い
「大丈夫、君はまだ死んじゃいないよ」と言った。
その言葉に巧が顔をあげる。
「それにほら、聴こえないかな?あの声が…」
勇治にうながされ巧は目を閉じ、耳を澄ました。
「巧——…タッくん…」
かすかにだが、しかし確かにその声は聴こえた。
「真理…啓太郎…。」
真っ白な世界の中で、後を振り返り独り言のように巧はつぶやいた。
「皆、君のことを待っている。だから…」
勇治の言葉に巧は応えず、ただ顔をふせ、自分の掌を見つめた。
「こらー!乾!あきらめんな!
ちゅうーか、ここでオメーがあきらめたら、俺たち無駄死になっちまうだろうが。」
「海堂…」
その声に巧はまた顔をあげた。
勇治の横に海堂が立っている。
少し照れたような海堂らしい笑顔で
「だからよ、あきらめないでくれよ。俺たちのためにもよっ、なっ」
と巧に笑いかけた。
「乾さん、お願いします!もう一度みんなのために立ち上がってください!」
そう言うと結花が頭をさげ、巧に優しく微笑みかける。
「結花…」
「俺たちだけじゃない…皆、君を信じている。」
巧は勇治の言葉に周囲の“彼を信じる人物”たちを見た。
かつて彼が出会ってともに生き、闘った者たち…
その中には花形、遠山、そして山上の姿もあった。
「大丈夫、君ならあの声に応えることができるさ。だから立ち上がるんだ。」
勇治のその言葉に巧は、今度は力強く頷いた。
耳に聴こえる真理と啓太郎の彼を呼ぶ声。
その声がだんだん大きくなり、やがて巧は目を開けた。
ゆっくりと上半身をあげる。
地面に着いたその手が何かに触れた。
それを引き寄せると巧はぎゅっと握りしめた。
朋美・遠山そして山上の願いがこもった赤いリボン。
それとファイズフォンを強く握りしめると巧は静かに立ち上がった。
「巧!」
「タッくん!」
真理と啓太郎が笑顔で叫んだ。
二人の声に応え、巧は振り返ると笑顔で頷いた。
ファイズフォンを開きスタートアップコードを入力する。
「555」
「STANDING BY」
「変身!」
フォンを高々と掲げるとドライバーに叩き込んだ。
「COMPLETE」
巧の全身を紅い光りが包む。
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