「はぁーーーーーっ!!」
マスクの下、巧が叫ぶ。
全身を包む紅い光りの中
巧、ウルフオルフェノク、ファイズそれぞれの顔が次々と現れる。
いつもと違う“変身”の様子に真理と啓太郎は驚きの表情で見入った。
ファイズスーツの胸の部分、フルメタルラングが展開する。
その中央のエネルギー炉が真紅の光を放ちはじめ
やがて強く大きな光りが巧を包み込んだ。
次の瞬間、巧は走りだし州浜の元へ駆け寄るとその体にパンチを打ち込んだ。
突如として現れた巧−ファイズのパンチをまともに受け吹き飛ぶ州浜。
周囲にはまるで竜巻のようにフォトンブラッドの“旋風”が巻き起こり
福地、三原、沙耶、美香の4人も吹き飛ばされそうになり、その場にしゃがみ込む。
その中央でやがてフォトンブラッドの紅い光りがファイズに収束し
輝きが消えその「全容」が明らかになった。
展開したフルメタルラング中央の炉はフォトンコアに変化し真紅の光を発している。
そのコアからは絶えず、まるで心臓の鼓動が全身に血を送るかのように
フォトンブラッドを全身に送り続けていた。
そして首には真紅のマフラーが巻かれ、それが腰の位置ぐらいまで流れている。
まるで山上がそうしていた遠山のリボンを思わせるものだった。
乾巧の強い“信念”が生み出した奇跡のフォーム
−エボリューション・フォーム。
その威風堂々たる姿にその場にいた誰もが息を呑んだ。
「ファイズーーーーッ!!」
地面から沸き起こるような声を発し、州浜が翼を広げ巧めがけて
猛スピードで突っ込んだ。
州浜は巧の両肩を掴むと、そのまま上空へと連れ去ろうとした。
だが飛び上がろうとした瞬間、巧はその両腕を振り払い、州浜の体を蹴り上げた。
その攻撃で上空へと打ちあげられる州浜。
「ウオォォーーー!!」
翼を羽ばたかせ、どうにか姿勢を立て直した州浜は怒りの叫び声をあげると
さらに翼を広げた。
その翼が赤い炎をあげ、無数の羽根のレーザービームが地上めがけて撃ちだされた。
バイオトルーパーや人工オルフェノクを一撃で葬り去った攻撃
—巧に降り注いだ無数の炎のビームがその周囲で爆発を起こし
やがて巧を中心に巨大な炎柱が立ち上がった。
あまりのすさまじさに真理たちの表情は凍りついた。
しかし−巧の周りの炎が掻き消え、その中央に何事もなかったかのように
ファイズがたたずんでいた。
ただ首のマフラーがまるで生き物のように忙しく巧の周囲を動き回り
やがてその体を包むかのように一周すると背中へと落ち着く。
「グウぅぅーッ!!」
州浜は声をあげ地上へと舞い降りた。
その右手に大剣が現れる。
その剣を振り上げるとその刀身に赤い炎が宿る。
それを振り下ろすと、巧に向かって大きな炎の波が地面を走る。
一撃、二撃、三撃…だがその全てをまともに受けた巧は微動だとしない。
巧がすっと右手を横に伸ばす。
するとその横にオートバジンが舞い降りた。
巧はミッションメモリーをバジンの左ハンドルグリップにセットすると引き抜く。
瞬間的にフォトンブラッドがファイズエッジに流れ込むと、その刀身の周囲に
大きなフォトンブラッドの刃が現れ、まるで両刃の大剣を思わせる形状を成した。
それを振りかざすと、巧はゆっくり歩き出した。
「このーーーーッ!!」
いらただしげに叫ぶと州浜は再び剣を振り下ろす。
巧めがけ走った炎の波が今度は巧の振り下ろしたファイズエッジによって打ち消された。
それを見届けると州浜は走りだした。
巧に駆け寄ると剣で斬りかかる。
その攻撃をエッジで受け止めると、巧は州浜との間合いをぐっと踏み込みその腕を掴み
体を蹴り飛ばした。
全身に力をこめその場に何とか踏みとどまった州浜は近距離から剣を振り下ろした。
巧はそれを左拳で受け止めると鋭い突きを繰り出した。
首元へ伸びた突きをとっさにかわした州浜だったが、左肩のアーマーが大きく
損傷し青い炎をあげた。
さっと後へ飛び退くと州浜はその修復を待った
−だが青い炎をあげ崩れ去ったその箇所が再び赤い炎をあげ復活することはなかった。
「何!?」
驚きの声をあげる州浜。
巧が州浜に近づく。
州浜は一歩後ずさりすると、首を振り、再び巧に近づき剣で斬りかかった。
今度はその刀身を巧の左拳が叩き折った。
剣は青い炎をあげると、州浜の手の中で崩れ去った。
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