このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください



<4-3・流星塾>

相変わらずビルの屋上から景色を眺める二人。

爆音に似た音が鳴り響いた。

「何だ!?」と音の聞こえた方に三原が目をこらす。

たくさんの若者が群がり、やがて大音量で音楽が流れ始めた。

三原の緊張は解けた。時々行われる街頭ゲリラライブが始まったのだ。

二人の男女のヒップホップグループがパフォーマンスを繰り広げる。

そのリズムにのり多くの若者が集まり楽しんでいた。

ちょうど巧や三原、真理たちと同じ年齢くらいの若者たち。

「あの中にどれだけの味方がいて、どれだけの敵がいるんだろう…」

ふと三原がこぼした。

そんな言葉にも下方で行われているゲリラライブにも関心などないと感じで

ただ巧は遠くの空を眺めていた。

「けど、どうしてこんなところに…?」

真理は沙耶たちに尋ねた。何故、流星塾がこんな地下にあるのか、何故皆がいるのか?

沙耶たちは流星塾が地下に移された理由は知らないが、自分たちはお父さんに呼ばれて

ここへ来たのだと答えた。

「お父さん?」

真理はかつてファイズ・ギアを何故自分に送ったのかを知りたくてこの地までやって来て

スマートブレイン本社まで訪れたが結局お父さんには会えなかったことを思いだした。

たしか行方不明だって—

「そう、お父さん。覚えてる、真理?」

里奈が聞く。

「当たり前だよ、だって私、お父さんに会うためこっちに来たんだから…」

その時のことがずいぶん昔に思えた。

まだ数年しか経っていないのに。

「お父さんに会いたい?」

今度は沙耶が聞いた。

「えっ…!?うん、会いたいけど…沙耶たちはどこに居るのか知ってるの?」

真理が少し驚いた感じで聞いた。

「うん。父さんも真理に会ったらきっと喜ぶよ」

と机にもたれかかっていた三原が立ち上がる。

「立てる?」

沙耶が真理に肩をかした。すでに傷は沙耶たちが消毒し、包帯を巻いていた。

すり傷程度で、どうも脚をねんざしたらしかった。

「うん、大丈夫。ありがとう」

三原を先頭、巧を最後尾にして教室を出た。

「ここだ」

そう言うと三原は理科室の扉をひいた。

懐かしいと真理は思った。

昔よくここで実験とかしたっけ…。

しかし暗い教室にある机の上は見るかぎり何やら実験道具でいっぱいだった。

色の着いた液体が満たされているフラスコやビーカー、試験管立てに並んだ試験管…

ところどころにネオン管のような赤い灯りがともり少し異様な光景にさえ見えた。

そんな教室の中央に大きな水槽が置かれていた。

人一人は充分に入る大きさ。

中は色の着いた液体が満たされている。

その中で横たわっている灰色の物体—オルフェノク!?

三原がそのオルフェノクに声をかけた。

「父さん、真理が来てくれたよ」

「お父さんって…まさか」

真理は信じられないという感じで沙耶たちに尋ねた。

「そう、お父さんよ。最近はもうずっとあの状態なの…」

「真理、お父さんに声をかけてあげて」と里奈がうながす。

おそるおそる水槽に近づくと真理はか細い声で「お父さん…?」と呼んでみた。

すると横たわるオルフェノク—ゴート・オルフェノクは少し首を動かすと真理の方を向いた。

「真理か…よかった、無事で…」

声はたしかに聞き覚えのある優しいお父さんの声だった。

巧はそれを少し離れていたところから見ていた。

あのオルフェノクの顔と声、たしかどこかで—

「…真理が来ているということは…巧くんも一緒か…?」

オルフェノクが巧の心を見透かしたかのように声をかけてきた。

「あんた、まさか、あん時の…」

巧の中で記憶がよみがえった。

「巧、お父さんのこと知ってるの!?

真理の質問に

「ああ…。」

巧はそのときのことを思い出した。


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