再び登校した逸郎は晴れやかな気持ちだった。
何故ならイジメっこたちは父親が何とかしてくれたはずなのだ。 そして、いつもなら憂鬱な気分になる下校の時間も逸郎は軽やかな気持ちだった。 あいつらが校門前で待っていることはない。 だが逸郎のそんな気持ちも校門をくぐったとき、一瞬にして消え去った。 「よう琢磨、久しぶりだな」 そこには相変わらず遠藤たち4人がいたのだ。 何も変わらない光景である。 ただ変わっていたのは4人とも私服だったことである。 「ちょっと顔かせや」 抑えてはいるが、明らかに遠藤たちは殺気だっている。 逸郎はいつになく不安な気持ちを抱え、4人に連れられ人気のない廃工場にたどり着いた。 「実は俺たち4人は退学になったんだ。」 遠藤がそう言った。 「理由は喫煙だってよ…けどさ、今まで喫煙で停学になったやつはいてもよ。
退学までなったやつなんていないんだよなぁ。」 逸郎は遠藤が言っていることの意味がわからなかった。 「つまり…俺たちが退学になったのは他に理由があったわけよ。」 そう言うと遠藤はいきなり逸郎を殴り飛ばした。 「お前、親父にチクったろ?
修一に聞いたらお前の親父国立医科大学のお偉いさんだって話じゃないか…
てことはよ、俺たちの高校に圧力かけてどうこうなんてこと簡単だよな?」 なるほど、そういうことか…逸郎は思った。 たしかに父親の圧力で4人は退学になったのだろう。 だが、それは逆に4人を怒らせることになり、何も解決されていないではないか。 結局この4人が居るからいけないんだ。 こいつらが居るから… そう思ったとき、逸郎の中で“コロセ!コロセ!コロセ!”という声と衝動が生まれた。 「…そうだ、お前たちが生きているのが悪いんだ」 逸郎が呟く。 「何を?」 逸郎の言葉にキレた遠藤が、逸郎の襟首をつかんだ。 −次の瞬間、逸郎の全身が灰色の化物の姿に変わった。 それに驚き立ち尽くす遠藤の首を逸郎は掴むと軽々と持ち上げ、廃工場の中に投げ込んだ。 物が壊れる大きな音とともに遠藤の体は工場内のスクラップに突っ込み、全く動かなくなった。 それを見ていた他の3人は何が起きたのか理解できず、ただ恐怖にかられ逃げ出すだけであった。 「お前らも死ぬべきなんだ…」 そう逸郎は呟くと、右手に現れた鞭で3人を次々と打ち据えていった。 その一撃で3人ともその場に倒れこみ、やがて灰と化していく。 「あと一人…」 夕日を背にそう呟き、逸郎は人間の姿に戻るとその場を歩き去った。 その夜−逸郎の唯一の“親友”だった修一が姿を消した。
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