このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

 



2.最初のテスト


冴子は新宿歌舞伎町のホストクラブを訪れた。

「いらっしゃいませ。ご指名は?」

入口をくぐると早速店員の一人がかしずいてきた。

「そうねぇ…ショウさん居るかしら?」

冴子がそう言うと店員は少し怪訝そうな顔をした。

「はい、居ますが…今なら当店No.1のリュウも空いていますが?」

「いいから、ショウさん指名で。」

「か、かしこまりました。それではお席へ…」

そう言うと店員は冴子を席まで案内した。

間もなくショウという男が現れる。

歳のころなら30代前半というところだろうか?

店でも古株といった感じで指名のトップ5にも入っていない男だった。

「ご指名ありがとうございます。
 お聞きしたところNo.1のリュウを断ってまで私のことをご指名していただいた
 ということで感激です…」

そう言うとショウはニッコリ笑うと冴子の横に座った。

「何か運命的なものを感じますね…。
 ほら私とあなたの指を見ると赤い糸で結ばれているのが見えませんか?」

そんな“クサイ”台詞をさらりと口にするショウを、冴子は内心“バカな男”と思いながらも

「そうね。…けど赤い糸じゃなくて、灰色の糸の間違いじゃなくて?
 ショウさん、あなたオルフェノクなんですってね?」

と冴子は微笑んだ。

「ほう…何故そのことを」

ショウは少し驚いた顔をしたが、嬉しそうな顔で尋ねた。

「実はね、私スマートブレインの役員の一人なの…。
 ねぇ、あなた私たちの仲間になる気はないかしら?あなたには資格があるわ。
 気に入らない客とか、自分を馬鹿にした人間とか密かに殺しているんでしょ?」

ショウの顔に自分の顔を近づけ冴子は言った。

「そこまで調べられているとは…」

ショウは首筋をさすりながら言った。

緊張したりするとするクセらしかった。

「どうかしら?私のテスト受けてみない?合格すればもっとスバらしい生活が待っているわよ。」

冴子の誘いにショウは乗った。


東京湾の一角−人気の無い倉庫で冴子とショウは向かい合っていた。

「いい、テストだからといって手加減はしないこと。どちらが負けを認めるまで勝負は続くの。」

冴子が簡単なルールを伝えた。

「わかりました。美しい女性を傷つけるのは私の良心に反しますが…
 これも自分のため、全力でいかせていただきます。」

そう言うとショウはニヤリと笑った。

「フフフ…自信家なのね…。」

冴子は微笑み、次の瞬間にはオルフェノクへと変化した。

それに合わせショウもオルフェノク−ソードフィッシュ・オルフェノク=メカジキの特性を

持つオルフェノク−へと変化した。

二本の剣を召喚し、冴子に斬りこむショウ。

だが冴子は籠手とサーベルでその剣撃を防ぎ、素早い蹴りをショウのボディにくらわした。

後退するショウ。

冴子は一歩前へ出てサーベルによる鋭い連続の突きを放った。

なんとか両手の剣でそれをさばこうとしたショウだが、突きの衝撃に剣を落としてしまった。

冴子はくるりと体を回転させ、ショウの喉元にサーベルの切っ先を突きつけた。

「ま、参りました。」

情けない声をあげるとショウは両腕をあげ変化を解いた。

「もう終わりなの…。最初の自信はどこへいったのかしら?」

冴子は不機嫌な声でそう言った。

「残念ながらあなたは失格ね。けど、まぁいいわ。
 この私に忠誠を誓うなら、スマートブレインへの口ぎきしてあげるけど?」

冴子は見透かすような目でショウを見た。

もはやホストとして生きていくのには、あらゆる面で限界があるだろうというのが冴子の見解だった。

「本当ですか!?誓います、これから私はあなたの忠実なる僕となります。」

ショウはその場に肩膝を付き冴子にそう言った。

「わかったわ。それじゃあ、また用があるときは呼び出すから。そう心得ておくのよ?」

冴子はそう言い残すとその場を去った。


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