このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください
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■ 鉄道紀行 ■
リニア大実験

JR東海がかつて募集していたリニアモーターカー無料試乗会。
数年にわたり応募し続け、ようやく招待状を受け取ることができました。
その試乗会の様子をお伝えすると共に、
時速500㎞で走る列車内で果敢に実行した実験の結果を大発表!

試乗会レポート
2004年6月18日火曜日、我が家族3人は、当時の愛車
ランサーセディアワゴン
で、山梨県都留市の、「超電導磁気浮上式鉄道山梨実験センター」に隣接する、
「山梨県立リニア見学センター」に到着。朝9時半ごろ着いたにもかかわらず、あまり大きくない駐車場はほぼ満車。受け付けは10時15分からということで、
まずは建物内を見学。
1階が売店、2階が展示スペース、3階は実験線を見下ろす展望室です。展示物は、リニアモーターカーの原理、構造、歴史、必要性、将来性などを
総合的に知ることができます。
宮崎実験線時代の1979年、時速517km/hを記録した「ML-500」などは、写真で見ることができるんだけど、実物(大の模型)の展示があればいいのに。
見学中に放送が。
「まもなく、実験センター前を試験車両が通過します・・・。」
3階の展望室の窓にはすでに人が鈴なり。何とか隙間から外を見てると、
「ビュッ」
という一瞬の音と共に、何かが目の前を通り過ぎました。
「なんか見えた?」
「たぶん…。」
速過ぎてあっけに取られる暇もありません。周囲の苦笑を見ると、みんな500km/hを目撃した感想は同じのようで。
10時15分に受け付け開始。見学センター奥のガイダンスルームへ。リニアの簡単な説明と試乗中の注意事項などを聞いた後、いよいよ車両に向かいます。
本日の試乗車両は、最新型「MLX01-901」を含む4両編成。2号車、3号車が招待客用の客室になっていて、ボクら3人は2号車へ。プラットホームと車両とは
完全に分離され、乗降口にはホームから伸びた短い通路が接続されています。
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説明会会場 | 乗降口へ |
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MLX01車内 |
客室は、すでに営業車両といってもおかしくない完成度で、天井からモニターがぶら下がっている以外、奇抜な所はまったくありません。座席自体も、現在の新幹線で使われているものと、形状、座り心地、リクライニングの操作方法とも変わりはなく、ちょっと拍子抜け。試験車両なんだから、何か提案があってもいいのでは?
では、ここで、本日の実験内容をご紹介。ご提案くださった方々に感謝。
1. 携帯電話は使えるのか?
2. 方位磁石の針の振れ方は?
3. ペットボトル内の液体の振れ方は? (車内への飲食物持ち込み禁止のため、目薬の容器で代用)
なお、他にも、4. ラジオの聞こえ方は? 5. 磁力治療器への影響は? 6. 車内でのボールの転がり方は? というご提案もあったのですが、事情により上記3点に絞らせていただきました。
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トラバーサー |
さて、いよいよ発車。まずは前方大阪方へ、最高速度100km/hで車輪走行。すでにかなりの加速力。いったんトンネル内で停車します。
軌道全体を動かす分岐器(トラバーサー)転換を待ち、今度は後方東京方へ、最高速度300km/hで浮上走行開始。前方の表示板を注視していると、
事前の説明通り、160km/hで走行音が変わり、車輪走行から浮上走行へ移ったことがわかります。
後方へのこの加速力は初体験で、テーブルに置いた目薬はずりずりと滑って、ついには床に落っこちちゃいました。
約45秒で300km/hに到達。予想に反してかなりの振動を感じます。最高速度は現在の新幹線とほぼ同じですが、乗り心地は新幹線の勝ち!
方位磁石はというと、振動の影響以外はまったくなし。正しい方向を指したままです。携帯電話は? …まったく使い物にならず。だって、
ほとんどトンネル内の走行で圏外のままだったから。
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ただいま500キロ! |
徐々に減速し、100km/hで車輪走行に戻った後、東京方のトンネル内で停車。減速には加速時の3倍くらいの時間をかけているようでした。
次は進行方向を変え、いよいよ最高速度500km/hでの浮上走行。
発車。飛行機の離陸時並みの加速力を感じます。
15秒で100km/h到達。目薬は今度はテーブルの端で踏みとどまっています。中の液体は後方へやや偏っている程度ですが、
検体が少なすぎるせいか? 方位磁石は同じ方向を指したまま。
160km/hで浮上走行に移り、30秒で200km/h、45秒で300km/h、60秒で400km/hと、7km/sの一定の加速を続けた後、80秒後に500km/hに到達!
方位磁石に変化なし。容器内の目薬も元の状態へ。空気抵抗の影響か、振動が物凄い。500km/hでの走行は数十秒間でしたが、この振動の中の
長時間乗車はけっこう疲れそう。
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トンネル内を走行中 |
再び大阪方のトンネル内で停車。ここは40‰の最急勾配途中です。総武線御茶ノ水駅の秋葉原寄りの勾配が33.3‰なので、
東京にお住まいの方にはその角度が想像できるでしょう。リニアは、設計上、ここを500km/hで走行可能とか。
トラバーサーの転換完了を待って、再び進行方向を東京方に変え、実験センターへ。ここでの注目は、半径8,000mの曲線を
最高速度400km/hで通過すること。
後ろ向きに発車。400km/hに達した頃、トンネル壁面の蛍光灯の列が、左右で高さが違うように見えるようになりました。ここが最高10°の
カントが付けられた曲線区間です。やや遠心力を感じますが、言われなければ気付かないかも。
やがて徐々に速度を落とし、実験センターへと戻って来ました。約25分間の試乗でした。
降車後、試験車両とのガラス越しの写真撮影、乗車証明書の受領で、試乗会は終了しました。
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先頭車側面 | 乗車証明書 |

実験結果発表!
1. 携帯電話 まったく「お話」になりませんでした。
実験線延長18.4kmのうちトンネル区間が16.0km。明かり区間2.4kmを500km/hで走ると約17秒で通過。携帯の機種のもよるんでしょうが、
ボクの携帯では、明かり区間も含めてずっと「圏外」でした。
2. 方位磁石 まったく影響なし。発車から最高速度での走行、停車まで、ずっと正しい方向を指したままでした。
3. 容器内の液体 前述の理由で急遽検体を変更したため、はっきり結論出せないも、加速度の影響はかなり受ける模様。
2.の結果より、車内への磁力の影響はない、または微少である、と結論。エレキバンの効力への影響もないと推測できます。
でも、全身に貼り付けたら何か感じるかも?
3.から、営業運転時も、加速時はテーブルにコーヒーを載せるのはやめた方が無難と推測。車内販売のワゴンへも多大な影響が心配されます。
営業運転時には、屈強な男性がワゴンを押す姿が見られる?
というか、しないでしょうね、車内販売。

実用化への課題
資料によると、リニアモーターカーの実用化に向けて技術的目途が立った、とされています。では、実用化に向けての課題は何でしょうか。
1. 乗り心地の改善 ヨメさんもボクも、試乗しての感想は一緒。車内での振動がひどい。完成すれば東京・大阪間を1時間といわれていますが、
とても1時間は我慢できません。
2. 耐久性 2003年7月時点での累積走行距離は30万kmとのことですが、試乗会では、500km/hでの走行時間はほんの数十秒でした。
現在の実験線の距離は18.4km、最終的には42.8kmとなるようですが、連続高速走行実験にはまだ短すぎるように感じます。
どうやって検証するのでしょうか。環状にするとか?
3. 環境影響 騒音、振動だけでなく、磁力や電磁波の車内外への影響を、長期的に検証してもらいたいもの。
4. 必要性 JR東海では、リニアによる中央新幹線構想を、災害時の東海道新幹線補完として位置付けて、必死に必要性を訴えているようですが、
巨額の費用を投じて建設するものですから、プロジェクトスタートには国民的合意が必要。
完成後の東海道新幹線の活用方法も含めて、もっと具体的な公報活動をしてほしいものです。

リニア活用方法
JR東海は中央新幹線にこだわっているようですが、もっと必要としている所があるのでは?
思い付いたのが、都市・空港間のアクセス。例えば成田空港。日本のいちばんの玄関口。それなのに今は、都心から特急に乗っても1時間。
リニアならほんの10分くらいで着いちゃいます。
関西空港とか新千歳空港とか、これからできる中部国際空港とか、活用できそうな所は他にもありそう。
まずは実績を作るのにもいいのでは?
仮に中央新幹線ができたとして、既存の東海道新幹線はどうしましょう?
貨物列車を走らせる、なんていかがでしょうか。リニアができれば、東海道新幹線側のダイヤに余裕ができる。駅の施設を改良し、
空力に優れたコンテナを開発すれば、不可能ではないはず。別に300km/h出す必要もないし。
まさにモーダルシフトが叫ばれている現代、需要はあるはず。
あなたのアイディア、ご意見をお聞かせ下さい。

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