このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
夕張、三笠、歌志内、赤平など、空知にある他の街がそうであるように、芦別もまたエネルギー転換により石炭産業の火は消え、新たなる道を歩み始めている。 市内の至る場所には、かつて街を支えた産業の痕跡が色濃く残されている。 別ウィンドウで開いた地図を見ていただきたいのだが、芦別市には石炭産業と関係した鉄道が延びていた。 三井芦別鉄道と三菱鉱業芦別鉱業所専用鉄道(以下三菱芦別鉄道)である。 今回は後者を取り上げたい。 三菱芦別鉄道は1949年に開通した炭鉱鉄道で、根室本線の上芦別駅を起点とし、芦別市北東部にあった辺渓坑まで延びていた。 根室本線と分岐し、空知川を渡ったところで、当路線は小山塊とぶつかる。 そこには隧道が在り、現在でも口を開けているというのだ。 1949年から路線廃止の64年まで、25年だけ働いた穴。 その名もペンケ隧道。 本レポートではその姿をお伝えしたい。 |
スポーツの秋。 そんな呼び名に相応しい晴天の朝、私と zwiebel は芦別市内の総合運動公園(地図上では①の地点)の駐車場に降り立った。 彼らは野球場やら体育館には全く目もくれず、空知川の方へと歩いていった。 爽やかさの欠片もない不審者である。 青々としたパークゴルフ場の芝生をズケズケと踏みつけて、川の見える場所へ。 三菱芦別鉄道は体育館の方(上芦別方面)から来て、芝生を横切り、私の背後の方へと延びていたのだと推測される。 鉄道廃線跡には、新しい公共施設ができることが多いが、ここも例外ではなく、当時の雰囲気は全く残されていない。 空知川の方を向いてみよう。 藪である。 我々には芝生よりも藪が似合うと、自分に言い聞かせながら、ガサガサと熊笹を踏み分けていく。 11月という時期のお陰で、藪は疎密で楽々に進めた。 夏場ならば、諦めていただろう。 藪の間から川が見えたところで、地面はそのままスッポリと抜け落ちている。 いや、そうではない。 ちょうど私が立っている場所は橋台なのだ。 足元に橋台があるということは…。 我々は視線を前方に移した。 おおうッ!!!! 足元の橋台の目の前にはドミノのような橋脚。 抹茶色の水面を挟み、さらに奥には橋台、そして ペンケ隧道が!!!! 当たり前なのだが、よくもまぁ遺構が綺麗に一列に並んだものだな。 見ていて非常に美しい。 そして表面が剥がれ、苔生したコンクリ塊。 昭和の産業遺構特有の美である。 近そうで遠いペンケ隧道坑口。 そこまで行く橋は既に土台と足を残して消えている。 泳いで渡るには…かなりの覚悟のいる色をした川だ。 また、隧道は険しい断崖の只中に在り、崖伝いにアプローチするのは困難そうだ。 …となると、逆側の坑口から行くしかないか。 |
ペンケ隧道のもう一方の穴を探すため、国道452号線を走っている時、私はある物を発見した。 場所はペンケ川を跨ぐ見返橋、地図上では②に所である。 助手席に乗っていた私の目には、下流側に朽ちた廃橋のような物が写ったのだが…。 車を路肩に止め、見に行ってみる。 うーん、微妙か? 帰って調べたら、何のことはない。 ただの歩道用の橋だった。 この辺りではどこからでも見える観音像。 芦別が世界に誇る、摩訶不思議系テーマパーク北の京芦別である。 ホームページは こちら 。 一度は訪れてみたいスポットである。 |
地図から、もう一つの坑口の位置の候補地を道道野花南芦別線沿いに定め、ノロノロと走行する。 地形の様子から判断しようと、曖昧な考えを巡らせながら車窓を眺めていると、隧道の位置を決定付けるような光景が現れた。 右手(山側)に築堤、左手にペンケ川を跨いだ橋のものであろう橋脚があったのである。 すぐさま車を停めた。 川に立つ2本の橋脚。 道道のすぐ脇にあり、隧道の位置を知るための有効な手がかりとなる。 周りの枯れ草や冬枯れの木が、退廃ムードを盛り上げている。 山側を見ると、熊笹に覆われた築堤。 背後には橋脚。 間違いない、この築堤の先にペンケ隧道の坑口があるはずだ。 我々は道路の脇に下り、築堤をよじ登り始めた。 築堤の上はやはり藪。 1969年の廃止。 40年の月日は開発が、そして自然が廃線跡を飲み込むのには十分すぎる期間なのだ。 迫る山塊をチラチラと確認しつつ、我々は藪を掻き分けて進んでいった。 行き止まり———。 いや…待てよ。 落ち葉の斜面の上から顔を覗かせているのはまさか…。 ペンケ隧道!!!! 残念ながら穴は埋められてしまっているが、僅かに地表に出ているコンクリートは隧道の坑門に他ならない。 穴は完全に埋められてしまったのだろうか? 落ち葉の斜面をよじ登る。 ペンケ隧道辺渓側坑口は辛うじて開いていた———。 手しか入れられないような、ほんの僅かな隙間ではあるが、内部を確認することができて良かった。 隙間からカメラを差込み、フラッシュを焚いて撮影した写真。 人為的に持ち込まれたのか、隧道内部には巨岩が散在している。 内部でカーブしているのか、はたまた崩壊しているのか、光は見えない。 人が入る隙間がない以上、そのことはおろか、空知川側の坑口にも辿りつけない。 隧道に入れず、地団駄を踏む我々を嘲笑うかのようにコウモリが飛ぶ。 いや〜、コウモリって初めて見たな〜。 失意と興奮が入り混じる複雑な心境のまま、我々は坑口を後にした。 |
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