このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

国道229号線旧道群 (盃・興志内地区)


2005年7月。
私は朝日新聞の世論調査バイトに応募し、見事積丹半島の泊村に派遣されることになった。
仕事内容に関しては詳しくは書かないが、本部にいる記者の指示通り動けば良い。
一人で現地に来ているので、仕事時間以外はまったくの自由。
どこで何をしていても良い。
その自由な身を生かして、今回調査しまくった。

今回私が派遣された所は、泊村の北端、興志内・盃地区である。
厳しい日本海の荒波が、雄雄しく美しい岩石海岸を作り上げており、背後には険しい山々が連なっている。
その間の猫の額ほどの土地に漁村が細長く伸びている。
国道229号線が南北に走っており、山塊が海に迫り出している岬の部分を長大なトンネルが貫いている。
そして、新しいトンネルの脇には旧道、更には旧旧道が……。


地図を見ていただきたい。
ここで私は、この国道のルートの推移を三つに分類した。
戦前に開通し、狭小素掘り隧道が連続している1代目
昭和30年代くらいに開通し、狭小だがしっかりした造りの2代目
そして近年開通し、広く歩道も整備されている3代目である。
地図上では、1代目を赤、2代目を青、3代目を緑で表わした。

盃、興志内、茂岩集落は、兜トンネル茂岩トンネルという長大トンネルに挟まれた秘境である。
狭小な兜トンネルを抜けると、村立泊小学校や漁港がある盃、興志内集落がある。
この2集落は隣接しており、境目がどこなのか、判別しがたい。
興志内茂岩の集落を、山塊が隔てており、比較的短い興志内トンネルが岩肌で口を開けている。
トンネルの向こうには、生活臭漂う漁村から一転し、風光明媚な観光地が広がっている。
歩道橋で渡ることのできる弁天島と磯。
山に挟まれた、狭い谷間には、民宿が所狭しと並んでいる。
国道は緩い曲線を描き、長大な新茂岩トンネルへと吸い込まれていく。
トンネルの先はもう神恵内村である。
とまあ、今回の舞台はこんな場所である。


地図を開く(別ウィンドウ)


 
① 興志内トンネル(2代目) 茂岩側


神威岬行きのバスで調査地に辿りついた天空開発。
盃海水浴場のバス停で降り、本部に連絡した。
これから二日と半日この地で働くことになる。
目の前には、巨大な岩のような弁天島がどっしりと鎮座している。
弁天島へは橋が架かっており、釣人たちで賑わっている。

私は民宿に荷物を置くと、自転車を借りて、散策をすることにした。
まずは民宿のある茂岩と興志内を繋ぐ興志内トンネル周辺である。


興志内トンネル(2代目)は先程のバス停から僅か100メートル程の所にある。
断崖がコンクリートでガッチガチに固められており、その下でポッカリ口を開けている。
長さは200メートル程であろうか。
昭和43年生まれの典型的な2代目トンネルだ。
線形的に見ても、あまり無理がないので、3代目ができるとしたら、幅の拡張くらいだろう。
狭いがきちんと歩道がついている。
1代目はパッと見、分からなかったので、反対側から攻めることにした。



 
② 茂岩2号トンネル(1代目)

興志内トンネル(2代目)の興志内側の脇に、漁業用施設(小さな倉庫)へと続く細道がある。
国道からも小さく見えるが、この道の先に茂岩2号トンネル(1代目)がある。


大正生まれの完全素掘り。
アツい!!
入口は草が生え放題。
落石防止の金網が張られ、こちらからの侵入は不可能だ。
長さは20メートル程で、向こう側に何やら赤錆びた鉄の枠のような物が見える。
行ってみよう。



 
③ 茂岩1号、2号トンネル(共に1代目)

ゴロ石海岸を通り、岩塊を迂回するとその光景は見えてくる。
ソレは言葉を失くす程、アツい光景であった。
では御覧あれ!!





!!


こう叫ばずにはいられなかった。
アツすぎる。
二つのトンネルの間に挟まれた、錆びた鉄枠たち。
恐らく、当時のロックシェードの跡ではないだろうか。
形状から見て、同じ 国道229号線の瀬棚町辺りの旧道にあるロックシェード と同種の物であろう。
2代目完成後、剥がされたのか、風雪や落石によって破壊されたのか…。


ロックシェードの跡に入り、茂岩2号トンネルを覗いてみた。
乱雑に散らばる木片や岩石、1代目特有の素掘りのゴツゴツの壁面。
このトンネルが現役であったのは約50年前まであるが、ここを車が通っていたという事実はまったく想像し難い。


反対側の茂岩1号トンネルである。
貫通は昭和30年と、2代目張りに新しいトンネルであるが、無残にも崩壊しており、侵入はできない。
ロックシェードの鉄枠だけが、原型を保ったまま、トンネルの中へと続いている。
一回の崩壊が、この二つのトンネルの明暗を分けたようだ。



 
④ 茂岩1号トンネル(1代目) 茂岩側

ロックシェード跡と別れを告げると、私は再び興志内トンネルを抜けて、茂岩へ向かった。
茂岩1号トンネルの茂岩側の入口を探すためである。
来るときも国道から眺めたが、それらしき穴を発見することはできなかった。


これがその光景だ。
左の部分が大きく崩れており、道の痕跡を消してしまっているのだ。
しかし右手に切り崩されたような岩があり、ここに旧道が通っていたことを示している。
そうなると、正面の窪んでいる岩肌辺りがクサイが…。


ビンゴ……なのか…?
一応トンネルのような形の窪みがあるが、そこには固い岩盤があるのみだ。
コンクリートで固めてあるのなら決定的なのだが、岩盤じゃあなあ…。
この辺りの岩の性質から見て、このような落盤があったとも考えられるが。


茂岩1号トンネル茂岩側入口(?)から茂岩方面を眺める。
旧道跡は写っていないが、弁天島周辺の美しい光景だ。



 
⑤ 茂岩1号トンネルを迂回

次は茂岩1号トンネルを迂回する。
そうすると、先程の二つのトンネルの間のロックシェード跡に出るはずである。
ではいざ行かん。

磯釣りに向きそうな岩石海岸を歩くこと数分。
岩陰から見えてきた見えてきた。


あの鉄枠群!!
遠くから見ると、幾分か頼りなく見える。
茂岩1号トンネルがちゃんとここまで通じていることを確かめると、私は踵を返し、茂岩方面へと向かった。



次は積丹国道に残る狭小で長大なトンネルの片鱗をお見せしよう。




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