このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

県道342号宮村湯田中線 小池峠



強烈なブッシュに行き当たった天空開発。
先へ進むには藪漕ぎを余儀なくされるが、果たして私は峠を越えられるのか。


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⑥ 初めての藪漕ぎ


私は目の前に広がる光景を見、息を呑んだ。
普段様々なサイトで、モニターにかじりついて見てきた藪漕ぎ。
そして今、その藪漕ぎ用プールが私を挑発するようにワサワサ音を立てている。
進むしかないのだ!!

愛車同伴で未知なる領域へ今漕ぎ出す。
チャリの車輪で草をなぎ倒しながらの強行軍だ。
幸い植物は背丈も低く、案外容易に進める。
先にはヘアピンが見えており、私はチャリを引きずるようにしてそれを曲がった。


うわっ、暑苦し———!!!!
今こうしてモニター越しに見ても、暑い。
それど進まねばならない。

藪と格闘しながら私は頭の中である考えを巡らせていた。
何故この峠はこんな平凡な名前なのだろう。
牛首峠(石川県)とか四十八曲峠(長野県)とかいう大層な名前が付いていたらもっと格闘のし甲斐があったろうに。
「畜生!!小池め!!必ず越えてやる!!」では格好が付かないであろう。


次のヘアピンを曲がっても藪は続く。
この辺りでは何度も立ち止まり、撮影しようと思ったのだが、
藪写真集になってしまっては困るのでなるべく進むことに集中した。
そうでなくてもチェーンなどに植物が絡まって、いちいち取り除くのが大変であったから。
しかも徐々に植物の密度が濃くなってきたのを、露出した四肢で感じ取っていた。
峠を越えたら北向き斜面だからなんとかなりそうだが・・・・・・。


ん?なんか嫌な奴がお出ましになったぞ。
私の身長をゆうに越す、ススキである。
一回立ち止まって様子を見る。
ススキは現れたものの、数が少ないのでそれ程問題視する必要はない。
それより懸念すべきは、拍車がかかる植物の密度だ。
更には、いつの間にか棘のある植物も道の脇に生えているという有様である。
藪は留まるどころか、凄みを増している。


あばばばばば・・・・。

あってはならないことが起こってしまった。
もはや前など見えない。
やめてくれよ、東南アジアの湿地帯の葦じゃないんだから・・・・。
一気に弱気になる。
しかしこれだけ登ってきたのだから峠はもう少しだと、自分に言い聞かす。

突破にあたり、私はイノシシスタイルを採用することにした。
すなわち顔面ススキ祭を避けるため、下を向き、頭を前にして突破である。
無論チャリでススキをなぎ倒すことも忘れてはいけない。
それと注意しなくてはならないのは足元だ。
ススキにばかり気を取られていると、知らぬ間に斜面に踏み込み滑落という恐れもある。
ここは強引にかつ慎重に突破した。
それでもススキが顔を撫でて不快だったし、チャリがススキの束の上を滑ってバランスも崩しかけた。
なかなかの難敵であった、ススキ。


ススキ林を抜け、久々に視界が開けた。
ススキは猛烈に生えているが、道の真ん中だけ何故か空いており、非常に助かった。
もう一つ救われる光景が、この写真には写っている。
写真中央やや上の鞍部。
そこをこの道は越えているのであろう。
最終ボス、小池が遂にその姿を現した!!!!



 
⑦ 廃道の果て


こんな廃道に立っていると、ほんの僅かな人工物さえ私を安心させる。
路肩崩壊防止用の組木だろうか。
草に覆われても、通る者もいなくなった道をしっかりと守っている。


谷側から山側に視線を移すと、そこは無残にも崩壊している。
土砂のお陰で植物はなかったものの、あまり長居はしたくない場所であった。
この部分の完全崩壊も、もはや遠い未来ではあるまい。

この先には、もう一箇所藪が控えているが、今までの藪を潜り抜けてきた者にとっては突破はいとも容易い。
そして決定的な景色が目の前に広がる。












行き止まり!!!!


オイオイ、ここまで登らせてこれかよ!!
見上げれば、空と山の境界線はもう眼前に迫っている。
しかしそこへ向かう道がなかった。
目の前は草伸び放題の広場だったが、そこからの脱出口は、今私が登ってきた道のみであった。
木々や斜面の位置関係から見ても、そこには廃道すら存在するスペースはなかった。
この広さから見ても、ここが終点であり、車が転回する場所であったのだろう。

どうやら途中から道を間違えたらしい。
トラ縞ロープの分岐の所からか・・・・・・。
分からない・・・。
事前調査不足が仇となってしまった。
引き返すしかあるまい。
あの藪をもう一度漕ぐのは、嫌であったが。



 
⑧ 思わぬ発見

帰り道のことを多くは語るまいが、悲惨であった。
藪を早く抜けようと、サドルに跨ったまま突破したらバランスを崩し・・・の連続である。
植物の滑りやすさと、ゴロゴロ転がる岩石には本当に手を焼いた。
藪を抜ける頃にはむき出しの私の四肢は擦り傷だらけになっていた。
おまけに立派な蛇を踏みそうになってしまった。


ギリギリ蛇を回避した直後の鳥肌である。
毛がみんな逆立っているのがお分かりだろうか。
右側が白いのは光の影響なのでお気になさらずに・・・・・・。
とにかく蛇との遭遇後しばらくは、やたら神経過敏になった。
枝を蛇と見間違ったり、木の葉をコノハ蝶だと疑ったり・・・・・・。

あっという間にトラ縞ロープの分岐まで来た私は、その先で気になる道を発見した。


私は手前から奥へと下っていったのだが、そこから分かれていく草生した上り坂。
見ようによっては左奥から右奥へと向かう九十九折りの一部とも見ることができる。
まさかこの道の奥が小池・・・・・・?
振り向くと倒れかけた看板が草にまみれていた。


小池峠

植物の陰となってしまって見えにくいが、確かにそう書いてある。
それではやはりこの道が県道宮村湯田中線だというのか!!
入口から廃道然とした道に踏み込む気力は残っていなかったが、チャリを置いてちょっと様子を見に行くことにした。


ぶはっ!!
入口からこの気合の入りようでは、かなり厳しい。
藪パワーですっかり弱った私は50m程入ったところでギブアップした。


県道を抜け、しばらく下った所で振り返り、私は険しい高山の山々を睨んだ。
来年の帰省時には、小池との再戦である。
悔しさを胸に、私は愛車と遥か先の山々に誓った。



帰宅後、私は改めて峠付近の地図を見た。
下の地図にまとめてみた。


赤線で示したのが宮村湯田中線、オレンジで示したのが林道である。
私は今回、この林道に踏み込んでしまい、無駄な藪漕ぎをしてしまった。
事前調査不足は本当に大きな反省点である。

この事後調査で、小池峠の恐ろしさが一つ浮き彫りになった。
地図上において★で示した地点だが、直線の道が峠へと向かっている。
この地図で見ると何てことないが、しっかりとした地形図で見るとこの場所は恐ろしい場所であることが分かる。
なんとこの部分、谷を直登しているのだ!!
平均斜度12%の凄まじい上り坂である。
しかもそんな所にまともな道があるはずがない。
果たしてチャリ同伴で突破できるのか。
来年の挑戦に暗雲が重く圧し掛かる。






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