このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

張碓第五隧道


 
③ 隧道の手前に…



その隧道は、線路脇の狭く鬱陶しい藪を脱出し、小さな沢を渡ったところにその口を開けていた。

張碓第五隧道。

北海道最古の鉄道隧道である。
現函館本線からは丸見えの位置にある、比較的露出度は高いが、到達難度もまた高い隧道だ。
こんなロケーションにもかかわらず、私は車窓からこの隧道を確認したことがない。
それは私がいつも海側の席に座るからだ……。
そういうこと。
隧道派は絶対に山側の席だぜい!!







無名の沢を跨ぐ橋。
廃止後、改修を受けているのは一目瞭然だが、橋台の部分に若干赤い煉瓦が露出している。
思わぬところで明治の発見。
アツくなってきたエンジンがさらに燃えたぎる。

そのエンジンを灰にしてしまいそうな発見が、沢の向こうにあった。





穴だ!!!!
隧道の手前、約10m。
線路跡脇の藪の奥の断崖に、思わぬ穴を発見し、急いで駆け寄る。

何なんだ、この穴。
ちょい覗いてみよう。
ほい、失礼……。





画像が不鮮明で申し訳ない……。
これが携帯電話のカメラの限界である。
でもご安心を!!!!
このレポを書く前日に、デジカメ購入したから。

それはさておき、この穴、何かの部屋のような感じである。
これは私の推測でしかないが、幌内鉄道の保線関係者が駐在するための部屋だったのではないだろうか。
元々は石炭の運搬を担う、超重要路線。
その二本のレールを、そしてその上を走る列車を、落石やら高波やらから守るため、鉄道関係者が狭い穴の中に泊まっていたのだろう。
穴好きの私でも、気が狂いそうな生活である。





④ 明治の穴





隧道に入る前、振り返って撮影。
一応柵らしき石垣が組んであるものの、正に線路脇である。
こうしている間にも何本か電車が通り、なかなか落ち着かない探索であった。

しつこいようだけど、線路に出ちゃいけませんよ。







さて、正面を向くと、軌道跡がそのまま素掘りの洞内へと導いてくれる。
枝が少々邪魔だが、概ね歩きやすい道だ。
現函館本線の開通以前は、その根元を直接海へと落としていた岩塊に……・

今挑む!!!!



隧道内。

荒々しいまでの素掘りの穴は、思いの外広く、明るい印象を受ける。
その古さにもかかわらず、崩壊はほとんど見られず、保存状況は非常に良い。

今、モニター越しにこんな冷静な観察をしているが、実際この時は驚きと喜びで口は開きっぱなしだったと思う。
それでも、明治の穴に入っているという感慨に浸る余裕もあった。
なんだろう。
興奮はしていたけど、やけに冷静になれた気がする。







隧道の先は激しい藪と化している。
函館本線の落石防止柵の裏側が廃線跡となっている。

先にも行ってみたかったが、先程からぱらつき始めた雨が本降りになってきたことから、また今回の目的は隧道であったことから、今日はここで引き返すことに決めた。





張碓第五隧道の小樽側坑口。
こちら側は藪や柵で隠されており、札幌側よりは目立たない。
しかし、いざ目の前に立ってみると、その姿から伝わってくるガチンコさ、そしてそれに付随する迫力は本物だ。
なんて言うのだろう。

圧倒的威圧感。

ホント、こんな隧道をノミで掘り進めた、当時の人々には頭が下がる。







藪の中に標識が落ちていた。
この標識が一体何を意味する物なのか、ということは勿論、これがいつ頃のものかも分からない。
とてもじゃないが、明治時代のものには見えなかったが、新線の標識が放棄されたものだろうか。

幌内鉄道時代のものだったらアツいな。



隧道内から札幌側を望む。
隧道内は、なんだか時間が流れていないようで、時々外を駆け抜けてゆく電車がまるで異世界のもののように見える。

雨はいよいよ強さを増してきており、外に出る気力を奪っていった。
できることならば、しばらくこの静かな闇の中に身を預けておきたかった。

しかし出なければならない。
冷たい雨の中、また張碓集落まで登らねばならない。
悲しいかな、私が身を置くべき場所は隧道の外、その遥か向こう、札幌の喧騒の中にあるのだ。








   さらば…
      張碓第五隧道。


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