このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

モイチャンプロジェクト



モイチャン川の遡行を始めてから約1時間。
我々は三方を断崖で囲まれた、深い谷の底にいた。
すなわち、そこには滝がある!!



③ 錦糸の滝





現在地点は、二つの沢の合流点。
そしてどちらの沢も、すぐ上流に滝を抱えている。
左に行けば、写真の錦糸の滝
真っ直ぐモイチャン川を遡れば、モイチャン滝

最終目的地はモイチャン滝のさらに上流の屏風滝であるので、先に錦糸の滝を見ることに。





藪の合間を細々と流れる沢をちょっと遡ると(意外と難しい)、錦糸の滝が目の前に現れる。

写真では伝わりにくいが、結構な高さで、40mはあるそうである。
真っ黒な崖を白い流れが、緩やかにカーブを描きながら、さらさらと落ちていた。

周囲の瓦礫の荒々しさと、その美しさが対照的であった。





瓦礫の斜面の上、静かな飛沫を浴びながら一休み。
いつのまにか汗ばんだ頬に、霧のような冷たさが気持ちよかった。

休憩と言っても、足元は非常に不安定な場所なので、緊張を解くことはできない。
腰は下しつつも、身動きをして瓦礫を崩さぬよう、我々は静かで巨大な滝をただ見ていた。





滝の下部はかなり抉れている。

そして、写真は撮り忘れたのだが、この滝は水が地面に達したと同時にほとんどが伏流してしまうのだ。
つまり、この滝からモイチャン川との合流点の間の流水はほんの僅か。
ほとんどはその地下を流れているらしい。

以上、豆知識。
再びモイチャン川に戻り、上流のモイチャン滝を目指す。




④ モイチャン滝は立ちふさがる





合流点から遡行すること約20mでモイチャン滝の元に辿りつく。

ナイス迫力だ・・・。

しばし呆然としてしまうほどの滝である。
静かな錦糸の滝とは打って変わって、ダイナミックに水を落とす瀑布。
高さはそれ程でもないが、我々を圧倒する〝何か〟をこの滝は持っている。






さて…、ここで大きな問題が浮かび上がった。
どうやってこの滝の上流へ向かうのか・・・?
左岸、我々の遥か頭上に林道のポールが見えるが、間には垂直で脆そうな崖が立ちはだかっている。
正面突破は・・・勿論却下・・・である。

残るは・・・・・・右岸・・・であるが・・・。





実際に登ってみた。

・・・ってトリビアの泉じゃあないんだから!!

冷静に考えよう!!!!

調べた所、右岸も脆そうな崖がどこまでも続いており、モイチャン滝を迂回することは不可能なのでは・・・という結論に至ろうとしていた。

しかし、脆い崖の脇、頼りなく斜面に根を張る木々を、これまた頼りない虎縞ロープが結んでいた。

先人が残していったロープである。
このロープを辿って登れば、滝を越えることができる!!

実際、そのルートを辿ったのだが、ここはかなり危険な箇所である。
特にロープに掴まりながら、崩れた斜面をトラバースする箇所。
ロープにほぼ全体重をかけながら、踏ん張って渡りきるのだが、
本当にこのロープを信頼して良いのか?

後になって考えさせられた箇所であった。
ずぶの素人はモイチャン越えをするべきではない。
サンダル長靴で挑むなど、もっての他である!!





まあ、大学生ゆえの若さ・・・、悪運或いは火事場の馬鹿力によって、モイチャン滝越えを果たした我々であるが、まだ油断はできない。
滝の上部は滑りやすい一枚岩となっており、「一転倒=デジカメ死亡」どころか、「一転倒=流され滝から落下」という公式が成り立つ。
我々は苔むした川底に恐怖を感じ、四つんばいで渡渉したり、流木に跨りながら進んだ。

一番適していると思われた地下足袋も、こんな場面ではまったく無力であった。
やはり沢靴だな。




⑤ 屏風滝





そこから上流は、一時の険しさが嘘のように穏やかで、最終ボス、屏風滝は程なくして見えてきた。

遂に辿りついた、最終目的地。

果たして、この辺りから林道には戻れるのだろうか?
もし崖に阻まれ、戻れないとしたら、林道の高さにまで遡行するのか?
それとも、あの悪夢のモイチャン滝迂回コースを逆に辿るのか・・・?

不安は多々あったが、今はこの滝と向き合うことにする。





その名の通り、屏風のような美しい滝である。
岩盤を滑るように流れ落ちており、飛沫はほとんど上がっていない。

このような滝は初めて見た。

我々の疲労を癒すように、滝は美しく、雄大に流れていた。


まあ、最終ボスだし・・・やっちゃいますか。








わっしょーい!!








わっしょーい!!








わっしょ・・・?




⑥ 林道への生還






屏風滝を越えれば、高度的にも林道と合流できると判断した我々。

猿のように崖を這い上がり、あっという間に屏風滝を横目にトラバースを始めた。
油断はできまいが、モイチャン越えに比べれば、遥かに楽である。

写真はちょうど屏風滝の落ち口の真横。





上流から見た屏風滝落ち口。
ここもまた、川底がヌメヌメしており、とても歩く気にはならず、藪の中を強行突破した。

二つも滝を越え、高度を稼いだ。
そろそろ林道に合流できるんじゃないか?
誰かが言った。





両岸の斜面も随分と緩いものになってきている。
我々は手頃な場所を選び、藪に覆われた斜面に取り付いた。

両手両足で体を支えながら、這い登っていくと、上に平場が見えてきた。

あ、あれは茂一安林道・・・!?













生還

「なんだぁ、呆気なく生還かよ。」
なんて思われている方!!
これから二転三転の展開を用意できるほど、命張りたくないですから!!

さて、茂一安林道を下流に向かえば、車に辿りつける。
嗚呼、こんなガタボロ林道が、物凄く文明的な物に見えてしまう・・・。





実は林道からも滝は見える。
これは最初に見た錦糸の滝

ご覧の通り、びみょ〜である。

数十分前はあの滝の下に立っていたのだなあ・・・。







さらに物足りない、林道から見るモイチャン滝。
あんな遥か眼下の場所に行ってしまったなんて・・・。
若気の至りですかねぇ。






冒険の帰り道。
結局足回りとしては、地下足袋が一番優秀であったという結論。
でもやっぱり沢は沢靴だよなあ。

この時、言い知れぬ安心感に包まれていたのはきっと私だけではあるまい。
そして・・・、深い満足感に酔いしれていたのも、私だけではないだろう。



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