このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
「滝王国」という異名を持つほど、多くの滝を有する岐阜県。 養老の滝、白水の滝、平湯大滝など著名な滝が存在するのであるが、岐阜県一落差を誇る滝をご存じであろうか。 自称滝マニアである私自身も、最近ネットを通じて初めて知ったのだが、その滝は岐阜一の落差を誇るだけでなく、地元民でも知る者が少ないという“知る人ぞ知る滝”なのだ。 知る人ぞ知ると言っても、延々と沢登りをしなければならない…という訳ではない。 一応、滝へアプローチする道はあるし、滝を観覧するための立派な橋まで架かっている。 これだけ書くと、その滝がある程度の観光地であるように思える。 そう、観光地になるはずだったのだ。 時は昭和47年、観光ブームの真っ只中。 舞台は岐阜県宮川村(現在は飛騨市)。 ある観光会社がこの一帯を、滝、そして周囲にある鍾乳洞、湿原などをウリにしたリゾート地として開発するべく、事業を進めていた。 しかし、結局開発の許可が下りず、開発は中断となってしまった。 多くの観光客が行き交うはずであった、遊歩道や橋はそのまま放置され、現在では訪れる者もほとんどおらず、入口がどこかということさえも不明瞭な状態になってしまった。 リゾート開発を免れたこの地は、手つかずの自然が多く残り、ごく一部の秘境愛好家たちに愛されてだけとなっている。 |
2008年4月26日。 私は聖火リレーには見向きもせず、朝の長野市を出発し、昼前に安房トンネルで岐阜県入りを果たした。 そしてJR高山本線に沿って北上し、飛騨市の旧宮川村までやってきた。 飛騨市の山間部を結ぶ国道360号線は快走出来たのであるが、富山と岐阜を結ぶメインルートである国道41号線が意外と混んでおり、着いたころには既に日が傾きかけていた。 写真の場所より、国道360号線を離れ、ニコイ方面への市道へと入る。 市道を跨いでいるのは高山本線だ。 ニコイまでの道中に、菅沼という集落があるため、市道は狭いもののある程度整備されている。 しかし、菅沼集落を過ぎた辺りから、舗装はされているものの、路上に落石や木の枝があったりと、少し荒れてくる。 道の脇にはニコイへの道順を示す、小看板が所々にあるものの、それだけを頼りにはニコイ大滝への入口は分からない。 私自身も、下調べを怠り、「多分行けるだろう」という気持ちで飛騨入りしたため、早くも壁にぶち当たってしまった。 大滝への入口はどこだ!? 一旦、市道が滝に一番近づく地点まで行ってみたのだが、高低差があるらしく道らしきものは存在しなかった。 戻ろうとしたところで、菅沼谷を渡る橋の脇に、上流へと向かう道を発見したので、結局勘で、そこを入ってみることにした。 開発当時に設置されたであろう、観光案内図の存在も、その根拠なき直感を後押しした。 これがその観光案内図である。 確かにニコイ大滝が描かれており、現在地から沢沿いの道を登り、対岸に渡れば辿りつくことができそうである。 恐らく片道1kmくらいであろうか。 道の状況によっては日暮れを迎えてしまう可能性もあるので、さっさと出発することにした。 沢沿いに上流に延びる道。 一見未整備の道であるが幅は広く、元々リゾートのために作られ、放置された道として、ありえない姿ではない。 私は最早、ニコイ大滝に着いたも同然だなと思いつつ、歩を進めていた。 真新しい砂防ダムが見えてきた。 リゾート開発が頓挫した後に出来たものであろう。 ニコイ大滝に行ったという情報は、事前に数件調べており、「困難なのは入口を見つけること」であることは知っていた。 それ以外はさほど難しくはないのだろう。 きっとこの砂防ダムだって楽に越えられる道があるはずだ。 越えられんよ。 正面突破はどう見ても不可能であったため、魚道沿いに進んだ私。 魚道の中をジャブジャブ進むか、魚道の淵を平均台のように進めば越えられそうだが…。 そんな困難だという情報は聞いていない。 このルートではないのだ。 このルートで間違いないならば、もう少し粘りたいところだが、直感に頼っただけの不確かなルートならば早々に撤退するのが吉であろう。 |
ろくに下調べもせずに来たのだから仕方ない。 しかし、遙々飛騨の山奥まで来て、手ぶらで帰るわけにはいかないであろう(まぁ元々は普通にドライブに来たわけだが…)。 こういう時は地元民に聞くに限る。 …というわけで、たまたま観光案内図の辺りであったおばあさんに滝への道順を尋ね、教えていただいた道がこれだ。 案内図の所から若干下流、菅沼集落の近くから分岐する、この林道然とした道。 先ほどの砂防ダムへの道よりは、道らしい道だ。 さらには地元の方のお墨付き。 これは期待できる。 急斜面の途中にへばりつくような林道を登ってゆくと、眼下に先ほどの砂防ダムが見えた。 うむ、課題であった砂防ダム越えはとりあえず果たした。 あとは上流へ遡り、対岸へ渡る橋が現れるのを待つのみだ。 車では絶対に通りたくないような道が続くが、歩く分にはまったく支障のない道が続く。 沢が急であるため、平坦な道との高低差も縮まってきた。 正面から何やら建物が現れたが、どうやらただの物置小屋のようである。 それよりも沢が同じ高さまで上がってきて、橋の出現が近そうな雰囲気になってきた。 いよいよか? …と思ったが、おかしい。 道は川がある左ではなく、山側へとヘアピンを描いている。 ん?対岸はこっちだぜ、おーい。 …雲行きが怪しくなってきた。 ひぇぇぇぇ!!!! 180度のヘアピンを曲った先で、道は表情をガラリと変えた。 おかしくないか?聞いてねぇぞ。 あらぬ方向へ進み始めたばかりではなく、道はますます先細り。 いやっ。 石垣もあるような立派な道なんだ。 元々リゾートのために造られた道に決まっているさ。 自分の中の少数派野党が何やら喚いているが、これはもう動かしがたい事実。 この道も間違いだ。 道があさっての方向へ向かっていること。 これ以上川との高低差を開くと、対岸へ渡る橋がとても大規模になるが、それは現実的ではないこと。 そして何より、今でも一部の滝好きが通うニコイ大滝への道にしては廃れすぎていること。 以上がこの道が間違っていると判断した理由だ。 二回にわたる滝へのアプローチはいずれも失敗に終わった。 もう日暮れが近いので、今日はもうこれ以上山歩きはできまい。 失意のまま、私は長野へ帰った。 ![]() |
このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |