このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

国道229号線
白糸トンネル旧道


 




小樽市から道南の江差町まで、日本海の海岸線をなぞっている国道229号線は日本一トンネルが多い国道である。
その海岸線があまりに険しいため、多くのトンネルを穿つ他、突破する手段がなかったのである。
しかし時が経つと共に、線形改良のために長大なトンネルが次々と掘られ、数多のトンネルが旧道落ちしていった。

今回紹介するトンネルも、そんな旧道の一つである。
…が、このトンネルがその役目を終えたことに関しては、ちょっと特殊な事情がある。





まだ記憶に新しいが、1997年に発生した第2白糸トンネルの崩落事故である。
第2白糸トンネルのせたな町側の入口付近で岩盤崩落し、土砂は海にまで及んだ。
高さ200mの山頂から幅30m、長さ70、厚さ10mもの山肌が崩れ、その土砂は、前年に発生した豊浜トンネル崩落の2倍の量だったという。
そのような大規模な崩落にも関わらず、一人の被害者も出なかったことは、不幸中の幸いと言えよう。

実は、前年の豊浜トンネルの崩落を期に、北海道開発局は全道のトンネルと落石覆などの施設を全て点検した。
点検結果に基づく、対策方針は1から5に分類されたのであるが、2回目の調査で、第2白糸トンネルは一番上級の対策方針1「対策を必要とする」に分類された。
この方針により、同トンネルにおいて、1998年から防災対策工事が開始されるはずであった。
しかし、その矢先に事故は発生してしまった。

以上のような経緯で第1、2白糸トンネルを含む旧道は突如として『国道』としての役割を剥奪され、1999年に竣功した白糸トンネルにその座を受け渡したのである。




① 圧倒的なスケール

3月の終わり、私は zwiebel と共に国道229号線の旧道探索をしながら、北上してきた。
トンネルが見えてくる度に、海側に旧トンネルがないかを車窓から見定める…、そんなことを繰り返しながら島牧村までやってきた。

白糸トンネルを抜けたところで、海側へと首を向けた私は思わず叫んだ。
「口開いてる!!」

これは「トンネルの坑口が塞がれてないから、内部が見られるぞ。」という意味で、それを合図にzwiebelは反射的にブレーキを踏んだ。


車を広めの路肩に停め、振り返ったところで、我々は絶句した。
トンネルを見て衝撃を受けたのではない。
勿論それも理由の一つだが、それよりも切り立った崖の間を落ちる一条の滝に目を奪われたのだ。

白糸の滝。

富士山麓や軽井沢など、全国各地にあるような名を持つ滝。
不動の滝が「鈴木さん」ならば、白糸の滝は「小林さん」辺りだろうか。
私は以前からこの滝をネットを通して知っていたし、この道も何回か通ったことがあったのだが、一度も存在に気づいたことはなかった。
私の手持ちの地図に表記されていないこと、いつもこの道を南から北へ走っていたことが原因だ。

それにしても写真で見るよりも、遥かにスケールが大きい立派な滝だ。





現道から滑らかなカーブを描きながら分岐する旧道。
少しでもトンネルの延長を縮めんと、岬の方へ曲がっていき、崖とぶつかった所で穴を穿っている。
第1白糸トンネルだ。

国道229号線に限らず、道内のほとんどの旧トンネルは危険防止のため、コンクリートで塞いでしまっている。
開口しているものなど、ほとんど絶滅危惧種のようなものだ。
我々は興奮しながら旧道へと入っていった。





まぁ、絶滅危惧種が無防備に晒されているはずもなく、鉄製のゲートが我々を待ち構えていた。
上には有刺鉄線。
脇には、海側へと張り出した数本の棒。
アツすぎるディフェンスだ。

「こりゃ、正面突破は無理だなぁ。」
zwiebelに話かけながら断崖へと目を向けた。





白糸の滝。

雪渓に隠れているが、そのさらに上の崖から流れ落ちている。
落差は150mで全国の白糸の滝の中では、恐らくトップだろう。
道内でもかなり高い部類に入る。

立派な滝なのだが、島牧村は積極的にアピールしていないようだ。
やはり村内に遥かに立派な百名瀑、賀老の滝があるからであろうか。
ネット上でも、「水量が少なすぎる」、「迫力がない」、「あるのかないのか分からない」等、散々な言われ様である。

今回は雪解け時期だから、水量がいつもより多いのだろう。







現道からだと岩陰になって見えないのだが、白糸の滝の隣の谷には滝が二つある。
50mも離れていないだろうか…。
150mの滝のこんな至近距離に、これまた100mを越えていそうな滝。
しかも二つ…。





右側は、滑らかな一枚岩をサラサラと流れる滝。
左側はゴツゴツとした岩を滑り落ちてくる滝。
これだけの高さがありながら、これらの滝には名前が付いていない。

左の滝はポン滑川大滝(ポンはアイヌ語で「小さい」という意味。元ネタは コチラ )。
右の滝は鮫肌の滝(適当)と、それぞれ名づけた。





少しでも滝を近くから見たかったので、道路脇のコンクリート塀の上を進むことにする。
写真に写っている水流は、ポン滑川大滝と鮫肌の滝の下流。
あれだけ高い滝を有する沢も、最期は道路の排水口へと吸い込まれていく運命。
悲しい。

軍手をはめて、沢を跨ぎつつ、斜面を這い上がる。





近くから見上げた白糸の滝。
大きな音はしないものの、何ともいえない迫力がある。
両脇の「門」の字のようにオーバーハングした崖が凄い。

滝の真下まで行きたかったが、手前の斜面が枝と小石で構成された非常に滑りやすいもので、登ることはできなかった。



一応、白糸の滝を観覧できるように、旧道もゲート前までは入れるようになっている。
しかし、白糸の滝を示す看板などの類は全くない。
島牧村ももっとアピールすれば良いのになぁ。

そんなことを考えながら滝に見とれていたら、50m程離れた崖を、人の頭大の岩がカラカラと音を立てて落ちていった。
距離は離れていたが、少しヒヤッとした。
コンクリート塀の上なら、クマくらいの岩が落ちてこない限り大丈夫だとは思うが…。

やはりここは安全な観光地とは一線を画した場所なのかもしれない。





塀の上をさらに前進すると…。

なななななな…!!!!
第4の滝が・・・!!!!


左隅に写っているのが白糸の滝。
それと比べてみても、全くひけをとらない落差!!





凄い凄い凄い!!
100m越えの滝がこんなに密集している場所って、日本広しと言えどもここだけじゃないか!?
北海道の滝の巣、層雲峡もこんなにないぞ。

この滝は無名滝と言うらしいが、そんな陳腐な名前ではこの滝に失礼だ。

ポン羽衣の滝(元ネタは コチラ )だ!!

大きく分けて三段になっており、生糸のような流れが非常に美しい。
こんな美しい滝であるが、ゲートの位置からは岩陰になって見えない。
何とかならないのであろうか。

※画像にカーソルを合わせると画像が拡大されます。








滝を見ながら散歩していたら、いつの間にかゲートの内側に来ていた(写真では分かりにくいが…)!!
入れてしまったのだから、第1白糸トンネルへと参りますか。





トンネルへと足を向ける前に崖の方を見てみる。
いや…ついつい見てしまうのだ。
我々人間の視界に収まらない程のスケールの光景が広がっているのだから、仕方ない。

写真は左から白糸の滝、ポン羽衣の滝、そして涸れた滝。
今は涸れているが、沢のような地形は見えるので、雨が降ると滝が形成されるのかもしれない。

この崖を一望できるように、海の上に展望台を作れば、一大観光地になると思う(なったら嫌だけど…)。





さすがにこれ以上ないかな…と前進すると、またまた見えてきた。
もうほどんど驚かないぞ!!

次はチョロチョロと、随分控え目だが、かなりの高さからジグザグと落ちてくる滝。
適当にソーメン滝と命名。





なんか滝特集になってしまっているが、いよいよ第1白糸トンネルだ。

1977年に生まれ、相方の崩落により僅か20年でその短い生涯を終えた悲運のトンネル。
口は開いているが、その内部は濃密な闇に包まれており、窺い知る事は出来ない。
この闇を抜けた先、第2白糸トンネルはどうなっているのであろうか!?
期待が高まる。







一旦背後を振り返る。
滝を見るための物らしき駐車スペース。
現道側からポン滑川大滝鮫肌の滝白糸の滝ポン羽衣の滝ソーメン滝

素晴らしき滝たちを後にし、いざ参らん!!!!



次回!!第1白糸トンネルを抜けて…。
あの崩落トンネルは今………。

次回へ

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