このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
2006年、9月。 私が大学3年の頃の話なのであるが、寮の仲間と旅行に行くことになっていた。 ただ、行先は決まっておらず、そのあたりのことはほとんど私に委ねられていた。 普通のドライブじゃつまらないから、何かテーマを決めよう。 …ということで、思いついた。 道東にある無料の野湯、一泊二日で幾つ入れるのか? 幸い北海道の中でも特に道東は野湯の宝庫で、効率良く回るには最適だ。 また、すべての温泉が無料なのでお金はガソリン代と食費くらいしかかからない。 これは素晴らしい計画だ!!!! 一人自画自賛して、参加者を募ったのであるが、日程があまりよろしくなく、私を含めて4人しか集まらなかった。 まぁいっか。 参加者は私、性狂、細道、エビ4名である。 |
道東に行く時は、大抵深夜に出発する。 今回も例外ではなく、日付が変わった頃に参加メンバー4人が怪しいつなぎに身を包んで現れた。 これは、まぁグッズというかユニフォームのようなものだ。 旅のお供は、この年の初冬に事故で廃車となってしまったダイハツのシャレード。 先輩から譲り受けた、思い出深い車である。 最初の目的地は、十勝支庁の北端、上士幌町の山中に湧く岩間温泉だ。 この温泉は上川支庁との境界近くに位置しているため、旭川を経由してゆく。 夜間の石狩、空知、上川支庁を抜け、朝方近くに三国峠から十勝支庁入り。 三国峠は雨だった。 こりゃ、雨の中の入浴は避けられそうにもない。 どうせ入浴して濡れてしまうのだが、嫌なものである。 一時休憩ののち、すぐに出発。 まだ暗い十勝へと下ってゆく。 ようやく太陽が昇りかけた頃、国道273号線から、岩間温泉へと向かう音更川本流林道に入る。 ここからダートを30分走らなければ、温泉に辿りつくことができない。 林道としては路面は良好(後半は若干荒れている)な方であるが、雨天であること、まだ暗いことを考えて、慎重に進んだ。 車に乗ったまま温泉まで行くことはできない。 写真で示したとおり、川を渡らなければならないのだ。 悪路に強い車ならば、突破できるかもしれないが、私の車では立往生してしまうだろう。 近くに丸木の一本橋があったのに、それに気づかなかったドジっ子4人は靴を脱ぎ、川の中をジャブジャブ渡った。 冷てー!!!! 川を渡り、林道を上流に向かって進むと、やがて硫黄の香りが漂ってくる。 渡渉地点から5分程歩くと、温泉、そしてその手前に架かる丸木橋が見えてくる。 一応ロープは張ってあるものの、雨で滑りやすくなっているため、怖い。 橋を渡ると、ついに岩間温泉だ。 1湯目、岩間温泉!!!! 我々は雨の中服を脱ぎ、その上にシートを被せると、思い思いに二つある湯船に飛び込んだ。 その瞬間、私は飛び上がりそうになった。 物凄く熱いのだ。 恐らく、川の水を湯船に流し込むためのホースが詰まっているか、故障しているのだろう。 我々は落ちていたバケツで必死に水を運び、入浴できる温度にした。 全裸バケツリレーの様子はとてもワールドワイドに掲載できる代物ではない。 今日は雨が降った挙句に導水ホースが機能しておらず、散々であったが、ここの温泉は素晴らしいロケーションにある。 十勝川水系音更川の源流に程近いこの場所は、大雪山系の一部であり、まさに秘境と呼ぶに相応しい場所だ。 林道を30分走るというアクセスの悪さから、訪れる者も多くはないため、大自然を楽しみながら静かに入浴することができる。 ちなみに写真に写っているのが、温泉手前の丸木橋だ。 朝風呂を堪能した我々は、さらに東を目指す。 上士幌町からまっすぐ東へ、阿寒湖近くの双湖台で休憩する。 依然として天気は優れないものの、雨はあがったようだ。 せっかくの温泉旅行。 このまま回復に向かって欲しいところである。 次の目的地は、弟子屈町屈斜路湖畔にある和琴温泉奥の湯だ。 |
我々は峠を越え、弟子屈町にやってきた。 同町は、町内に屈斜路湖、摩周湖と、道内を代表する著名な湖を有している。 さらには名勝硫黄山や川湯温泉などの人気の温泉もあり、道東を代表する観光地となっている。 しかし今回の我々の旅の目的はあくまで野湯。 こんなミーハーな観光地など、断固スルーだ。 我々の狙いは屈斜路湖畔に湧く、野湯たちである。 道の駅「摩周温泉」の裏、釧路川の河原で休憩する。 まだ雲は厚いが、天気は回復に向かいつつあるようだ。 ひとまず安心する。 水産学部の性狂とエビがザリガニ捕りを始めた。 のんびりとした時間が過ぎる。 一段落したところで、温泉ツアー再開だ。 一路屈斜路湖へ。 まずは屈斜路湖の南側からキノコのようにニョキっと伸びた、和琴半島に向かう。 駐車場に車を停め、半島の先端へ続く道を進む。 写真は途中にあった神社。 この辺りから先は歩行者しか入ることができない。 神社の近くにあった案内図。 目指すべき温泉はどうやら東側の湖岸に存在するようだ。 よし行こう。 怪しいつなぎ男四人(迷彩×3+赤×1)は、獣道のような道へと分け入っていった。 半島を周遊する遊歩道は、程よく整備されており、距離的にも散策するのにちょうど良い。 木々の間から見え隠れする、屈斜路湖の水面を心の清涼剤となる。 余談であるが、和琴半島はミンミンゼミ生息地の北限として、一部の愛好家の間では有名だ。 遊歩道沿いの立てられた看板によると、いたる所で湧出する温泉のお陰で、冬期でもセミが生息できる温暖な地中温度が保たれているそうだ。 和琴半島をぐるっと周ってきた我々。 奥の湯へ続く道を探すのには、若干の時間を要した。 湖側へ続く、藪に埋もれそうな小道を分け入っていくと、ベンチのようなものが現れる。 そして…。 2湯目、和琴温泉奥の湯!!!! 日本屈指の面積を誇る屈斜路湖と、岩のみで隔てられたオープンでワイルドな湯船。 見つけるのにひと苦労する、このひっそり感。 どれをとっても素晴らしい。 脱衣所など洒落た設備は存在しないので、道沿いで服を脱ぎ、ロープを頼りに湖面に降りる。 湯船に浸かってみると、適温だ。 大抵熱すぎたり、ぬるかったりするケースが多い中、ここまで心地よい温度の野湯も珍しい。 そのまま屈斜路湖へ泳ぎ出すこともできる。 湖底のあちこちから温泉が湧いており、岸辺に近い場所は温水プールのように快適な温度だ。 もし温泉にのぼせそうになったら、湖に入ってクールダウンすれば良い。 ここならば、一日中入っていても飽きなさそうだ。 ちょっと湯船が狭いのが難点であるが…。 性狂は泳いだり潜ったりしてはしゃいでいたのであるが、眼鏡をなくしてしまったという。 本人曰く「眼鏡が外れたのは気づいたのだが、浮かんでくると思った」らしい。 当然浮かぶような素材ではないので、皆で湖底を捜索したのだが、ついに眼鏡は帰ってくることはなかった。 ご愁傷様。 道内でもトップクラスの野湯を存分に堪能した我々。 和琴半島を後にし、屈斜路湖の東岸へ向かう。 車を走らせること約10分。 砂利道に入り、キャンプ場の脇を抜けて行くと…。 三湯目、池の湯!!!! この温泉の最大の特徴は、何と言っても道内随一の巨大な円形の湯船。 頑張れば50人は同時に入浴出来そうなくらい広い。 湯船があまりに広く、また周囲も開けているため、少々落ち着かない程開放的だ。 さっそく入湯してみると、うん、ここも適温。 そのお陰か、或いは温泉の成分が働いているのか、そこにはおびただしい量の藻が繁茂している。 ヌメヌメしており、気持ちの良いものではないが、体に悪いわけではないので我慢しよう。 実は、池の湯は屈斜路湖と繋がっている。 このこともお湯の適温化の要因となっていそうだ。 勿論我々は水路を通って、湖に出たわけであるが、この水路ももれなく藻がびっしり生えているため、非常に滑る。 スケートリンク並みだ。 転倒すると、岩に腰などをしたたかにぶつけることになるので注意しよう。 さて、立て続けに入浴するぞ。 次の温泉も、同じく屈斜路湖の東岸。 池の湯から南下してすぐのところにある。 四湯目、コタン温泉!!!! 写真は別の時期に訪問した時のものである。 到着したころには、日が暮れてしまっており、上手く写真が撮れなかった。 ここ、コタン温泉は毎日清掃が行われており、道内で最も清潔な野湯であると言える。 また、やはり屈斜路湖を眼前に望むという好ロケーションであり、なかなか人気のある温泉のようだ。 それだけ、マナーの悪い客も少なくないと聞く。 「入らせていただく」という精神を大切にしたい。 コタン温泉をもって、一日目の入浴は終了。 今夜の宿を求めて南下する。 そして我々は釧路町までやってきた。 これまた道東を代表する観光地、釧路湿原。 湿原を一望できる、細岡展望台に寄ってみる。 当然のように誰もおらず 当然のように何も展望できない。 今夜の宿に急ごう。 今夜の宿は、JR釧網本線の細岡駅だ。 釧路湿原の真っ只中に位置する、無人駅だ。 私は2回目の宿泊となるのであるが、人里離れた静かな環境がとても気に入っている。 細岡駅は比較的新しい、ログハウス調の駅舎で、中にはトイレも水道もある。 まさに駅寝には打ってつけであると言える。 思い思いに寝袋を敷き、眠りにつく四人。 明日出会える温泉に夢を膨らませながら…。 |
このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |