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逢初20°


(株)正春酒造 宮崎県西都市

2009.01.10

「天孫降臨の地」と言われる土地柄か、宮崎の焼酎には神話にゆかりのある銘を与えられた物がいくつか見られる。

その代表格が高千穂の神楽酒造における“ 天孫降臨 ”とそば焼酎の“天照”ではなかろうか。後者は言うまでもなく日本神話における太陽神の天照大神にちなんだ物であろう。前者はその天照大神の孫である“天孫”瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)が命を受け、国津神の王である大国主(オオクニヌシ)の国譲りの後の平定間もない豊葦原中国(とよあしはらのなかつくに=地上)の支配のために天から降る場面を綴った神話にちなむ。

その道中で一行を迎えたのが国津神の猿田彦(サルタヒコ)神であり、地上への先導を買って出る。現在の御神幸行列において目を大きく見開いた鬼面が行列の露払いを務めている光景が見られる。数年前、西都市の小さな神社の秋祭りに遭遇したことがあるが、朱色の鬼面が天辺にくくりつけられた棒が拝殿に立てかけてあったが、今思い返せばあの面は猿田彦だったのだろう。その表情には天の八衢(やちまた)から天と地を照らしていたという神話の記述に因み、強い力が込められているという。だからこそ神の行列の先導を果たすことができる。

・・・あまりつっこみすぎると浅学がばれてしまうので、もう少し神話の話を先に進めますかね。

猿田彦の先導によってたどり着いた地上で瓊瓊杵尊は美しい姫に出会う。その舞台は鹿児島県の阿多であったり・・・と諸説あるが、瓊瓊杵尊は蔵元の 正春酒造 がある西都市で木花開耶媛(コノハナサクヤヒメ)と出会っている。後に瓊瓊杵尊は山の神であった国津神の大山祗(オオヤマツミ)神の娘である木花開耶媛を娶るが、その神話の痕跡が西都市の中心部にある都萬(つま)神社と両神の墓と伝えられる墳墓が残る西都原古墳群の周辺に多数残っている。

両神が出会ったのは逢初川のほとりとされている。蔵のHPによれば、その神話にちなんでの酒名。記憶が正しければ減圧蒸留もしくは主体の焼酎だったと思うが、そのためほんのりとした甘藷の香りにすっきりとした飲み口であった。どっしりとした味わいの焼酎が好みの方には当然合わないのであろうが、すっきりとした味わいの焼酎を好む傾向がある宮崎ではこの焼酎のすーっと消える甘藷の甘さは向いているかもしれない。

さて、神話の舞台となった逢初川は今日も神社の界隈に現存しているとらしい。だが、蕩々と水をたたえる大河ではなく、、家と家の間を流れる小川だという。だが、流れは小さくても湧水なので水は清らかだとか。
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