このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

秘酎
○製造元:榮川酒造(株)
       福島県会津若松市
       駅前町2番1号

○度数:25度

○原材料:酒粕

○製品の特徴:軽快で爽やかな
          甘さを持つ。
レッドブック度:現存(清酒粕/
           吟醸粕)
■当該銘柄について
 この焼酎を醸す 榮川酒造さん の開業は明治2年。同蔵のHPを参照願いたいが、昭和12年の東北品評会名誉賞受賞や昭和22年の国税庁による北地方初の一級酒工場の指定など代々の銘醸蔵である。代表銘柄は“榮川(えいせん)”。その後も、国税庁全国新酒鑑評会、仙台国税局東北清酒鑑評会、福島県清酒品評会で金賞を受賞するなど、高い評価を獲得している蔵である。

 昭和45年には石高20,000石を超えた大きな蔵であるが、ただ酒を売るだけでなく、一緒に楽しい時間も提供しよう・・・という顧客第一主義を掲げて、様々な商品の展開をされているようである。その一方で、伝統的な食文化の中の“醸造”技術の継承も忘れることなく、日々、工場を目指しているそうだ。 在所は会津若松市となっているのだが、現在では造りの拠点を磐梯町へと移されている。日本名水百選にも選定された“磐梯西山麓湧水群の伏流水”を仕込み水に使用できるこの磐梯工場には“ゆっ蔵”というオープンスペースが設けられており、地域社会への貢献もしっかりと果たされている。

 磐梯工場は福島県耶麻郡 磐梯町 (平成18年7月1日現在、人口は3,959人)にある。『宝の山よ』と唄われた標高1,819mの会津磐梯山はこの磐梯町の北限で、連なる山地からは扇状に丘陵地が広がっているのだそうだ。町の南東部では猪苗代湖より発する“一級河川”日橋川が流れているので、もうこれだけで自然豊かな町だということが分かる。

 実は磐梯町には奈良時代の高僧“徳一”が開いた慧日寺がある。会津仏教文化の発信源と言われ、磐梯山信仰の修験道の舞台となった同寺だが、鉄道趣味人の評者は、町内を東西に突っ切る磐越西線に、一昔前の交流電気機関車ED77型であるとか、現在、年に数回運転されているJR東日本のD51-498号牽引のSL列車・・・と無教養なことを思い浮かべてしまうのであった。

 そんな磐梯町の町の特産物といえば、そば、しいたけ。そしてカレールゥのコマーシャルの様な語呂の良さでリンゴに蜂蜜、ほうれん草と続く。

 町の特産として忘れてはならないのが『地酒』であって、「美味い酒」として榮川酒造さんが紹介されている事がうれしい。

 ここら辺にして、本題である。さて、この緑色のボトルが魅力な会津の粕取り焼酎の実力は如何に!!

■ボトルデザイン
 この瓶が我が家にやってきて、数年が経つ。

 町のHPによれば、町の北側には磐梯山〜猫魔ケ岳〜古城ヶ峰〜扇ヶ峰・・・と山々が連なっているという。山麓には磐梯朝日国立公園の指定を受けたブナ林も広がっているというから、その風景を如実に表現しているボトルとは言えないだろうか。

 美しい緑色のボトルは見ていて飽きないのだが、榮川酒造さんによると、昨年(平成17年)の10月にイメージチェンジ。現在はスリガラス加工の“白フロスト”の瓶に変更となったそうだ。

 発売の形態としては25度の4合瓶のみ。ヴァリエーションとして30度の“ゴールド秘酎”という銘柄があるそうだが、こちらはシェリー樽も含めて5年間貯蔵した物。なんと、かの
“モンドセレクション”16年連続金賞受賞という実力派の銘柄である。

■香り
 この銘柄の特徴はやはりその香りにあるのではないか。

 このレビューを打つに当たり、製造元の榮川酒造さんに恐れ多くも問い合わせをしたのであった。担当の方に丁寧な返信を戴いたのであるが、「高温で蒸留するとその過程で蕉香が移って味香りが害われます。また、蒸留アルコールが20%以下になるまで蒸留を続けると雑味が焼酎に入るだけでなく、香りも悪くなるので、味、香りを第一に低温で蒸留しております。」とのことだ。

 たしかに香りの方はおっとりとした甘さであり、清く正しい日本美人を思わせる香りである。

■味わい
 その味わいから、これまで吟醸粕だけを使用していると勘違いしていたのだが、蔵元によれば「清酒粕と吟醸粕の両方を使用している」ということだった。うむむ・・・。聞いてみる物である。
 
 一口含めば、粕取り焼酎独特の「奈良漬け」を思わせる風味が微かに広がるが、軽快で非常に爽やかな甘さを持つ焼酎と言えよう。“正調粕取り”のアイデンティティとも言えるどっしりとしたぬめりのような感触は皆無であるが、この粕取りはロックで飲むと非常に美味い。 その美味さに一気に引き込まれることとなった。

 この焼酎の銘は、従来の(粕取り?)焼酎では味わうことができなかったこの風味を「秘密」としたことに因るのだという。榮川酒造さんによると“秘酎”の発売は昭和62年。蔵の記録では昭和初期に粕取り焼酎を造っていた記録があるそうだが、残念ながら当時の銘柄名は記憶の彼方へと消え去ってしまっているようである。

■レッドブック度
 榮川酒造のある東北地方はやはり清酒の文化圏である。会津地方日常の酒の主役はやはり、同蔵の清酒“榮川”を代表とした清酒であることは想像に難くない。その一方で、焼酎も飲まれているようだが、地元では甲類焼酎が焼酎消費の筆頭に挙がってくるようである。

 評者個人の想像なのであるが、発売形態から土産物・贈答用の性格が強いようである。地元でのポジションというのが気になるところであるが、榮川酒造さんは今後も製造を続けていくとのことであるので、ちゃんとした消費の地盤があるのかもしれない。

 よって、カテゴライズは堂々たる『現存(清酒粕/吟醸粕)』!!としたい。
(06.07.07)
>Index

このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください