このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

ふらふらふら・・・と中州の繁華街を歩く。ネオンの明かりがまぶし過ぎるくらいだ。猛牛師は長男を肩車。・・・肩の上ではしゃぐ長男の姿を見てなんだか申し訳なかった。

エレベーターにてビルの4階に上がる。店のドアを開けるとマリリン・モンローの笑顔が出迎えてくれるのは昔のままだった。猛牛師からこのお店の事を教えていただいたのが2002年。粕取り焼酎の探査のまっただ中であった。九州焼酎探検隊のコンテンツでも紹介されていた聖地への潜入。当時、関東の方で焼酎を飲ますお店が増えていた頃だったが、焼酎ブームの中にあっても1千kmの彼方の事など当然ながら想像も出来ない。このお店がブームなんて関係なく、昔から焼酎を飲ませるお店であることに驚愕を覚える。福田マスターが供される焼酎の味はマジックの様だった。普通の流通では味わえないような焼酎がフツーに出てくるのである。飲ませ方でこうも味が変わるのか・・・と感じた。ともかく衝撃的だった。

そのような場所があの頃と変わらずある・・・というのはとてもうれしい物である。棚に並べられた焼酎の銘柄は当然ながら変化している。マスター曰く、「最近は原酒系しか置いてないよ。」との事。銘柄の種類を誇る店が一時増えたが、それだと紋切りな感じでいずれは飽きてくる。お店に来て、「あっ!」とした驚きを覚える。そういった事なのだろうか。

「福田マスター。早速ですが、アレ!おねがいします。」

猛牛師が言われた。

「はーい!」との返事。

遂にあの焼酎との対面の時が来た。
グラスで運ばれてきた液体。偶然というか必然というか・・・。まさか、福岡時代、終業後、散々探し回った池田焼酎をじっくり味わうことが出来るとは思わなかった。7年前でさえ見つけることが出来たのはわずか1升瓶が2本。それも偶然というか必然というか・・・という出会いだった。

グラスを手に持った。

香りは正調粕取焼酎のツンと来るあれではない。落ち着きを持って芳香が立ち上ってくる。

ともかく、口に含む。甘い。そして、スーッと延びるようにその強い甘みが消えていく。とてつもなく滑らか、円い。そういえば、以前、けんじ大佐の収蔵品を飲ませてもらう機会はあった。だが、こういった落ち着きはなく、粕取り焼酎らしい初撃から強い印象を残すような重厚な酒だったと記憶している。年月、置かれていた環境の違いか。アレも美味かったが、同じ銘柄でこうも変化するのか。全然、モノが違う・・・という代物だった。

「本当、丁寧な造りだったんだろうね。」

マスターと猛牛師が話されているのを聞きながら、自然とため息が出た。そのような深い味わいだった。




最後になったが、この粕取り焼酎が“聖地”まりりんBarにやって来た経緯について触れようと思う。私も焼酎の酔いが回ってきたところであったので正確な所を表現できないかも知れない・・・という事を最初に断っておくのだが、猛牛師の“ Soul Foods in 九州 ”をご覧いただければその輪郭が見えてくると思う。

元の持ち主がカメで購入したのは中原氏が廃業をされた頃と思っていた。というのはこのコンテンツの冒頭で触れたとおり、「廃業した頃にカメで引き取った人がいる。」という事を周辺の酒屋さんから聞いていたからである。だが、福田マスターが仰るには「おそらく15年以上は寝ているだろう。」とのこと。味の完成度からそう感じるらしい。

中原氏の近隣に住んでいる元の持ち主はともかくカメ入りの池田焼酎を2万円で購入した。職業はやはり体を使う職業。それも年中休みの無い職業だ。そうであるから、酒は日々の疲れを取る“楽しみ”とも言える。普通はこれだけで“飲み干し”というフラグが立つのだが、元の持ち主は事務方の仕事も務める事もあり、カメ入りの焼酎は手を付けられることもなく、その方が勤めていた会社の軒先に置かれていたという。

その後、長い年月が経って、カメの存在が人づてで福田マスターの耳に入った。手に入るかは分からないが、交渉を行ったところ、数年前に知り合いに譲った後だった。これだけでかなりの急展開なのだが、これで終わらないのが酒にまつわるお話である。その方はわざわざカメを知り合いに返してもらい、福田マスターに引き継がれた。今、カメはまりりんBarにある。猛牛師の言葉をお借りすれば『収まるところに収まった』のだ。


もし、この項をご覧になった方のうち、福岡に縁があれば、この酒を是非とも味わってもらいたいと思う。粕取り焼酎の世界を知ってもらうというのはもちろんなのだが、この酒の味わい深さは時間とか、人の縁・・・。いろいろなものが作用している様に思えるのだ。

最後になりましたが、今回、機会を作っていただいた猛牛師、そして福田マスターに感謝いたします。
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