このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください
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やまつる
○製造元:中本酒造店
奈良県生駒市上町1067
○度数:25度
○原材料:米、米こうじ、清酒粕、米糠
○製品の特徴:吟醸粕使用。米焼酎を
飲むようなすっきりとした
飲み口。 |
レッドブック度:現存(吟醸粕) |
■当該銘柄について
生駒市は大阪と京都の2府に接する奈良県北西端の都市。市内には慈善事業で有名な行基が開いた伝えられる古刹が残り、平安朝の頃には山岳宗教の聖地として栄えた。修験道の開祖である役小角が“前鬼”・“後鬼”を従えたのも生駒市のシンボルである生駒山と伝えられる。その麓にある“生駒聖天”宝山寺は商売の神様として京阪神で信仰厚く、古くは門前町として発展。今では市の玄関駅である近鉄生駒駅から近鉄奈良線と近鉄東大阪線が大阪を結び、交通の便も良いことから近畿のベッドタウンとして発展。人口は11万5千人を数える。
生駒市のシンボルである生駒山は大阪府との境にそびえ、その標高642.3m。夜、山頂からは大阪の美しい夜景を望むことができるが、忘れてはならないのが麓の鳥居前から宝山寺を経由して山頂のスカイランド生駒までを結ぶケーブルカーの存在。ちなみに開業は大正7年。日本のケーブルカーの歴史はここから始まっている。運行される車輌もユニークで、とぼけたブルドッグと三毛猫の顔をした車輌が行き来している(鳥居前−宝山寺間)。それぞれ“ブル”、“ミケ”という愛称が付けられており、子供にも絶大な人気であろう。ちなみに宝山寺から山上にかけてもユニークな車輌が行き来する。オルガンを形取った“ドレミ”号、ケーキ様の“スイート”だ。
そのような生駒の丘陵地山裾にこの焼酎を造る蔵がある。創業270年の歴史を数える“中本酒造店”だ。昭和62年に吟醸酒専用の蔵を建て、洗練された淡麗辛口の酒を造っているという。そして、そこから出る吟醸粕からこの焼酎は産まれる。
鹿児島でいただいてきたこの焼酎であるが、静かすぎるほどの香りであった。さてさて、初めての吟醸粕もろみ取り焼酎である。その味やいかに!?
■ボトルデザイン
背景は真っ白。そこに金で「本格焼酎」という4文字が押されている。銘柄銘はボテッとしているが、全体的には非常にシンプルな感じである。清酒蔵の焼酎ということで、ラベル造りにも何らかの共通点があるのであろう。どこか高級感を漂わせてた、いかにもこだわりましたといった感じだ。
非常に気になるのが原材料である。「米、米こうじ、清酒粕、米糠」。どのように造っているのだろうか。色々考えたが、米、米こうじは清酒を造る段階の原料。そして発生した酒粕に水を加えてもろみを造り、これに米糠を・・・。どなたかご存じないですか?
■香り
非常に穏やかな香りである。日本酒を思わせる甘さが残るが、粕取り焼酎の絶対的な個性であるあの「香り」は皆無だ。その分、非常に取っ付きやすい性格となっている。う〜ん・・・、物足りないなぁ・・・。
■味わい
製造元のHPに製造方の紹介がされている。「酒粕真空蒸留乾燥機で蒸留し、一年間熟成させました。」・・・。酒粕真空蒸留乾燥機というものがどのような代物であるのか分からないが、「真空」とあることから沸点を下げられることは想像が付く。つまり減圧の焼酎ということになるのであろうか。この蒸留後に1年間貯蔵されて市場へ出回る。ちなみに3年間樫樽にて貯蔵した“長期物”もあるらしい。
風味はと言えばスッキリ。粕取り焼酎からはやはりほど遠い。ロックや水割りで飲んだ場合は非常に飲みやすく、皆さん、この飲み方で楽しんでいると思う。しかしながら、そうした場合にはその清酒を思わせるという印象は薄まるようだ。色々試してみて、お湯割りが美味かったのには驚いた。これを発見して以来、瓶が空になるまでお湯割りで通したのは言うまでもない。
■レッドブック度
レッドデータブック的には“現役”なのであるが、おそらくは吟醸粕もろみ取りの焼酎であろうから、“吟醸粕”も併せて『現役(吟醸粕)』としたい。同蔵のHPによれば、近畿圏を中心に全国的な取扱店の広がりを持っているので、製造中止云々と言うことはないであろう。
粕取り焼酎の生き残りを考えた場合には、この“山鶴”のようなスッキリ系の吟醸粕取りというのは一つの方向性であると思われる。初めて口にする人間にとってはこのようなソフト方面の粕取り焼酎の存在はありがたい。しかしながら、その対極にある焼酎を探して、買って、飲んで・・・というこの粕取り再発見プロジェクトには合わなかったようだ。
(04.07.31)
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