このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください
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(05.02.17)
ある日、職場で上司が案内文書を持って私の席にやってきた。今年の農林技連の中央研修会(宮崎の農業関係者全体の勉強会って考えてくださいね)の案内状だ。
私はこういう物って苦手ですから、「申し訳ありません。牛がぁ・・・。」なんて断ろうと思っていたのです。でも、式の次第を見ると午前中がまるまる「焼酎」について当てられている。しかも、今まで本を読んだこともなければ、会ったことはもちろん無い南九州大学の小川喜八郎先生の講演も組み込まれていた。結局断ろうと思っていた気持ちは何処かに行ってしまって、「午前中だけなら。」とこのセミナーへの出席をオーケーしてしまう。
仕事のアポを当日の午後に取り直し、2月17日の朝、私は宮崎市のJA宮崎経済連AZMホールの大会議室に向かったのですね。15分前にはキチンと着席し、持っていったデジカメのレンズのゴミをブロワーで吹き飛ばして開演を待ったのです。
・・・そして、定刻となりセミナーは開会した。
今回のセミナーでは霧島酒造(株)の生産本部の徳本克則副本部長と九州沖縄農業研究センター畑作研究部の片山健二主任研究官の両氏の講演もあった。簡単に感想を。
○徳本克則氏・・・「芋焼酎の今後」
霧島酒造といえば宮崎の焼酎の牽引役としてもっとも認知されているメーカーである。その生産本部のNo.2である人物の講演。焼酎製造過程や人事などの他にも原料芋の確保という重要な業務を担っているということで、平成15年度、16年度の甘藷作付け面積の状況や、鹿児島県での官民一体となった取り組み、焼酎ブームの起因(と言うよりは“黒霧島”ブレイク以降の霧島酒造の販売展開、芋焼酎の消費の現状と今後の展望といった順に講演は進んでいった。
芋の収穫量について、数字を全く控えていないので申し訳ないのですが、不作であった平成15年と比較したときに、平成16年は夏までの日照、気温といった気象条件が非常に良好。茎葉の成長も豊作を期待させる物だったという。しかしながら、秋以降の度重なる台風の襲来により思ったほどの収量は無かったそうだ。
また、鹿児島ではでんぷん業界と焼酎業界、行政が協議会を組んだり、でんぷん用に回される甘藷の量を確保するためにコガネセンガンをでんぷん用の奨励品種からはずしたり、買い上げ価格に差別化(でんぷん用の品種を高く買い上げ、コガネセンガンの価格設定を安くする)といった業界間での線引きを行っているという。でんぷん工場と焼酎工場は一蓮托生というのは初めて知ったことで、でんぷん工場が焼酎原料に適さなかった芋の受け皿となっているという。ということは、ここのところの焼酎ブームで原料の確保が難しくなったでんぷん工場の閉鎖が問題となっていることを考えると、でんぷん業界の縮小がそのうち焼酎業界へ跳ね返ってくるということにならないか・・・。
よく考えたのだが、でんぷん工場を所有しているのはJAである場合が多いから、県とJAが足並みを揃えて・・・という見方も出来るかも知れない。農家が自立して出荷先を選択していると言うことは好ましくも思えるのだが、JAがつぶれると農家を守るのは・・・と言う考えも出てくる。あと、価格設定による線引きだが、メーカー側が協議会の設定価格よりも高く芋を買い上げれば全く機能しなくなることもあり得る(というか実際に起こっていると思うのだが)から、これもまたトラブルの種となりかねない。非常に難しい・・・。
ちなみに、今後の焼酎の需要であるが、2〜3年は現状よりも小さい幅ながらも増加が見込まれるのではということだった。ただ、商品のだぶつきによる価格破壊を招きかねず、将来的には蔵元の淘汰といった事態にも繋がる可能性も捨てきれないことから、楽観視はできないという。これには同感。
○片山健二氏・・・「サツマイモ品種開発の現状と可能性」
サツマイモの育種開始から品種として登録されるまでにどれだけかかるか知っていますか?という話。最低でも10年もかかると言うからおどろきである。そして、栄養生殖のため増えやすい、遺伝的に多様性に富み突然変異も頻繁に起きるという特性を利用して今も品種改良が続いているということだった。
今後の育種の方向としてはやはり1960年代に育成されたコガネセンガンの後継品種の造成であるとのこと。コガネセンガンの特性(焼酎にしたときの香味、味といったこと)を引き継ぎつつ、外貌(溝が多い)、保存性、線虫などの耐害虫性といった欠点の改良を進めているという。その一方で現在もいろいろな品種を用いての焼酎製造が盛んであるが、それら品種の特性を検討し、栽培面、醸造技術といったことから焼酎に新たな付加価値を与える研究も行っているそうだ。
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