このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください
- kiroku -
(株)黒木本店 宮崎県児湯郡高鍋町
(2007.09.30)
宮崎県でもっとも知名度のある焼酎蔵が造る黒麹仕込みの甘藷焼酎だ。カメ壷仕込み、2年以上の貯蔵・・・ということで、滑らかな飲み口と非常に円い甘さが特徴。
ラベル裏にはこの焼酎の素性がびっしりと紹介されているが、造り手である
(株)黒木本店
さんの最大の特徴としては、「焼酎粕をリサイクルし、有機肥料として原料の生産に努めている」ということであろう。
この焼酎粕の堆肥化については、以前、雑誌『
焼酎楽園
』の誌上において紹介されている。焼酎粕の処理方法としては、固液分離をした後、好気なり嫌気なりの微生物の力を借りて、焼酎粕中のBODなり、SSなりを分解していく方法が一般的である。だが、黒木本店さんは「焼酎造りは農業の一環である」という考え方を持っており、開放、ロータリー方式の堆肥舎において、『甦る大地』という有機肥料の生産を行っている。この有機肥料を用い、蔵で仕込みに使用される麦や甘藷が栽培されるのだ。
このことに加えて、近年は畜産飼料に焼酎粕を活用しよう・・・ということにも取り組んでいらっしゃるようだ。私が一方的に思っていたところであるが、これまで黒木本店さんが回していた“循環型の焼酎造り”には、畜産はちょっとのけ者・・・といった感があった。焼酎粕由来の飼料食べた牛の排せつ物を焼酎原料の栽培につなげる。畜産をこの輪に加えることで、蔵元の理想とする焼酎造りにより近づいたのではなかろうか。
さて、蔵のある児湯郡市は北諸県地域に次ぐ畜産地帯であり、特に、養豚や養鶏(産卵、肉用鶏)の飼養が盛んである。しかし、昨今、農政を巡る報道では、穀物輸出大国アメリカのバイオエタノールへの傾倒、そして牧草の一大輸出国である豪州の干ばつ被害・・・といったような、厳しい情勢が伝えられている。
このような情勢によって、畜産の世界では地域にある未利用の資源を畜産飼料に活用しよう(←リサイクル型の畜産ですね)・・・という動きがトレンドとなっている。大都市圏であれば食品産業の製造くずや賞味期限切れの商品といったものを効率よく集める事が出来るのであるが、宮崎は地理的な制約があって、そういったリサイクル型の畜産はごく一部の地域を除いて難しい。そこで、畜産農家は、これまで蔵元が直処理を行っていた他は業者に処理を委託していた焼酎粕に注目するようになった。焼酎蔵にとっても処理費用の圧縮が可能になる(・・・とはいっても、専用のプラントを構える場合もあるのだが)ので、ここ数年で飼料化に取り組む焼酎蔵の名前もいくつか聞こえてくる。
上記はどちらかというと、食品残さによるトウモロコシでんぷん、大豆たんぱく質等の代替がメインであって、その目的は飼料費の削減にある。ただ、黒木本店さんが考えているのは(先日の
のんみろ会
の際に伺ったのだが)、焼酎粕自体が飼料になるのではなく、一種の生菌剤としての活用を考えている。飼料化の過程で、焼酎粕に麹菌を加える事によって、種々の有用菌とビタミン、ミネラル類が混在したサプリメント飼料が作られる。この飼料を給与している畜産農家の評判も「家畜が変わった。」と上々なのだとか。
実際に、その飼料が給与される現場と家畜の状態を見てみたい・・・と焼酎を飲みながら純粋に思ったのだが、家畜防疫の観点からなかなかそれは難しいだろうな・・・とすぐさま現実に戻されてしまったよ。
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