このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

万年星
(有)渡邊酒造場 宮崎県宮崎郡田野町

(2004.07.13)
平成16年7月1日。ついにとある麦焼酎が発売となった。先日の、都城は“さいしょ酒店”さん主催の「 のんみろ会」 で市販先行バージョンを味わうことができた“旭 万年星”である。あの時飲ませていただいたものはこのイベントの為に急遽割り水した“試飲バージョン”で、少し荒いかなぁ・・・と思うところがあった。しかし、その香りと味わいの深さに同席した一同、深いため息をついたのであった(実話)。・・・で、今か今かと発売日を待ち続け、文月を迎えたのです。

7月に入っても仕事で帰りが遅かったりであるとか、預金を引き出し忘れて財布の中身がスッカラカンであったりとかで、酒屋に行けませんでした。結局、行きつけの店の在庫は無し。こうなりゃ・・・と大捕獲網を張り、無事に手に入れることができたのでした。話に乗り遅れなくてよかった・・・。

さて、まずは原料の“はだか麦”についてお勉強である。麦と言えば普通稲作地帯ではポピュラーな水田裏作作物。我が宮崎県でも児湯郡など限られた地域で栽培されているが、宮崎県南部平野部では早期水稲と栽培時期がバッティングしたり等々、なかなか栽培面積が増えないという。

で、“はだか麦”とはなんぞや・・・ということなのだが、大麦の一種で、脱穀すると簡単に「イヤン。」と皮が取れることに由来するらしい。栽培の中心は瀬戸内地方。昔から用途は“主食用”だっただろうが、食生活の変化した現代ではたまに食べる“麦飯”くらいだろうか。

今、栽培される“はだか麦”の主流は“イチバンボシ”という品種である。それに対して、“万年星”に使われるのは銘柄そのままの“マンネンボシ”。昭和60年度に四国農業試験場において育成された新系統だそうだ。その特性は『高い整粒歩合』、『精麦しても粒揃いが良い』、『大粒でやや円粒』、『軟質』、『高白度で精麦品質が優』、さらに耐倒伏性に優れるというから、愛媛県と香川県が県の栽培奨励品種に指定しているというのもうなずける。

特に愛媛県では800ヘクタールも栽培されているようで、裏ラベルにもその伊予の国の広大な麦畑を見て育った蔵の初代“渡邊壽賀市(すがいち)”氏のことが触れられている。私も筑後平野の一面に広がる黄金の海を見たことがありますが、壽賀市氏の見たであろう麦畑はこれにも増して美しく光り輝いていたのかも知れない。このようなことをラベルにクリームで薄く刷られた麦穂に思ってしまった。・・・こんなこんなで、瓶の裏に貼られた蔵の歴史をつづった文章を読むと引き込まれてしまったのですね。本当に詳しい所は“ 石原けんじ大佐先生 焼酎論集 ”の 『K05 萬年にエールを送る』 を参照願いたいが、とにかく渡米〜林業で成功後帰国〜大正期の開業・・・、その短い文に「すごい。」と圧倒されるのでした。

また、裏ラベルには4代目“渡邊幸一朗”専務が「この“はだか麦”を使って焼酎が作れたことが嬉しい。」とつづられている。初代が見た故郷“伊予”の麦で焼酎を仕込むことがで専務のおじいさん(2代目)の夢であったそうだ。蔵の3代が精魂を込めて造りに当たったこの“万年星”は一つの到達点的な意味を持っているのかも知れない。

やっとインプレッションにたどり着いたのですが、とにかく美味いの一言です。香ばしい香りは同じ“はだか麦”の兼八とは対極。パンチがあるとは言えません。“”という字がぴったり。生での麦の風味は甘苦く、飲み込んだ後もずっとその甘さの余韻が続くのは良いですね。でも、私はふくよかさが前面に出たお湯割りを取っちゃいます。
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