このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください
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廃棄物の海洋投棄による海洋汚染を防止するための“ロンドン条約”の採択〜発効といった流れを受けて、焼酎業界では焼酎蒸留の度に発生する焼酎粕の処理問題が差し迫った問題として横たわっている。
近頃、南九州のローカル紙上において、この焼酎粕の処理施設の竣工が報じられることがある。設置するためには蔵の製造石数にもよるだろうが、数千万円単位という莫大な資金がいる。最近では、地域の焼酎蔵が集まった事業協同組合という形での処理プラントの整備も報じられている。
また、最近では焼酎もろみ中の機能性成分を上手く活用した製品が数多く市場に並んでいるが、これも上記のような流れの末の答えの一つなのだろう。
・・・ここで、私が住んでいる宮崎県を見てみる。
宮崎県の主要な産業というのは言うまでもなく第1次産業。我が国を代表する“生産地”の一つとして全国的にも認知されていると思う。中でも畜産分野においては県全体の農業産出額の半分以上に達するなど、躍進が顕著。近頃全国的に吹き荒れている“みやざき地頭鶏(じとっこ)”の旋風はその一端だ。
宮崎県は焼酎の産出県であるから、この焼酎粕処理は当然ながら大きな課題となっている。その課題解決の一つの手法として県の主要産業である畜産分野との連携が最近注目されている。
2005年の3月に国が策定した「食料・農業・基本計画」の中において、飼料自給率の向上が重要課題として挙げられている。我が国で家畜等に給与される飼料の自給率が平成15年には24%といかに海外に依存しているかがおわかりいただけるだろう。輸入される飼料のほとんどはカロリー及びたんぱく質給与のためのトウモロコシ、大豆等である。経済成長を続ける中国では富裕層を中心に肉食が急速に進んでいると聞いているが、このような国々は飼料用だけでなく食料用としてもこれら穀物を輸入する。
近頃の原油価格と合わせて、穀物価格の高騰は我が国の畜産経営を大きく圧迫することとなる。その現状を反映して策定されたのが先の基本計画なのだ。その中で、平成27年度に24%から35%まで飼料自給率を高める・・・とうたわれている。
上記計画の中で国が本腰を入れているのが、粗飼料(つまり草)の増産分野では飼料用イネの作付けや国産稲わら収集、濃厚飼料の自給率向上分野ではリサイクル飼料の活用である。上で畜産分野との連携が焼酎粕処理の一つの手法として注目を浴びていると書いたのだが、このリサイクル飼料というのが大きな可能性を秘めているのだ。
さて、リサイクル飼料は何かということである。表すとおり、なにかしらを飼料に再利用したものなのだが、畜産業界では主に豚に給与する飼料を指す場合が多い。国内では戦後、大消費地&大都市圏で展開されてきた残飯養豚があるのだが、この延長線上にあると言っても良いのではないかと思う。食品産業の規格外品や学校給食等の食品残さ等を集め、発酵等の処理を行うのだが、その上で綿密な飼料設計に基づいた給与を行うのがリサイクル型の畜産である。先に示した穀物によるカロリーやたんぱく質給与を代替することとなるのだが、白飯、うどんやラーメンと言った麺類、ちくわ・・・と言った具合にその原料となるのは非常に雑多。
何も食品のリサイクルといったことだけで注目を集めているのではない。飼料原料の集め方によっては従来の経営よりも飼料費の圧縮に繋がるだろうし、何よりもリサイクル飼料を豚に給与することで、肉質や食味に大きな付加価値を与えることができる。筋間脂肪(サシ)が入ることによって柔らかくなったり、うま味成分が通常の豚肉より多く含まれていたり、肉食の改善や抗酸化物質の含量が高まることで、日持ちが良くなるといった効果が認められているらしい。
なお、牛ではあまり一般的ではないことを申し添えておく。国内でのBSE発生以降、飼料の安全性を保つために動物性のたんぱく質を牛科の反芻動物に給与するのが禁じられているためである(牛の飼料製造ラインは他の畜種の飼料が製造過程で混じらないように厳密に管理されている)。
ここで、宮崎県がまとめている食品残さの発生量を詳細させて頂く。その調査の中で、県内の食品残さの発生量は258,117t/年となっているのだが、そのうちの9割(233,005t/年)を占める酒類製造粕を筆頭に菓子製造業(パンくず、野菜くず、芋くず)、清涼飲料水製造業(茶殻、みかん粕、にんじん粕、コーヒー粕)、豆腐製造業(おから)、惣菜製造業、及びその他(野菜くず)、漬け物製造業(漬け物粕)と発生量の順に並んでいる。
酒類製造業からの発生量から“宮崎らしさ”が感じられる結果だ。
(06.11.03)
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