このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

これからの近鉄

21世紀の近鉄はどうなるのでしょうか。それを考えるために、現在近鉄が直面している問題や、取り組んでいるプロジェクトのいくつかを紹介したいと思います。

1、北勢線廃止問題

北勢線の現状

近鉄線は、名古屋線の桑名駅に隣接する西桑名駅と、三重県の駅とを結んでいる全長20.4kmの単線ローカル線です。日本でも数少ない「ナローゲージ」と呼ばれる軌間762mmの路線で、3〜4両編成の小型の列車が走っています(新幹線や近鉄主要路線の軌間は「標準軌」と呼ばれる1435mm、JRの在来線は「狭軌」と呼ばれる1067mmです)。

筆者は一度だけ北勢線に乗ったことがありますが、実際に乗ってみると、車両のはばが狭いのがよくわかります。座席はロングシートですが、通路が狭く、足をのばすと向かいに座っている人の足に当たってしまいます。また、満員になると、たいへんな圧迫感があります。電化されてはいるものの、車両が「つりかけ式」と呼ばれる古い駆動方式なので、走っている時には揺れが激しいです。時速60kmで走っている時に座っていると、座席から飛び上がりそうになります。現状では、混雑しているのは朝のラッシュ時だけ、データイムは閑散としていて、「走れば走るだけ赤字」というどうしようもない状況になっています。そこで、廃止案が浮上してきました。おりしも、鉄道事業法が改正され(「改悪」だという声も出ていますが)、廃止の1年以上前に運輸省に届け出れば、鉄道を廃止できるようになりました。手続きが簡略化され、廃止しやすくなったのです。現在、筆者のもとに入っている情報によると、北勢線は「廃止の方向で、三重県とも協議を進めていく」という状況のようです。

北勢線の今後

今後の見通しとして、次のような説が挙げられている。

1、地元の反対で廃止を断念
これはまずあり得ないと思われます。
2、第3セクターによって運営
これになる可能性は低いです。なぜなら、現在の三重県知事が、第3セクター化にあまり乗り気ではないからです。第3セクター化したところで、赤字は改善しようがなく、三重県にとっても重荷になるだけでしょう。
3、廃止・三重交通バスに転換
鉄道なら赤字でも、バスならば採算もとれやすいので、この可能性がもっとも高いです。また、近鉄はこの方法を望んでいるようです。もしバス転換ならば、代替バスは、近鉄グループの三重交通が運行することになるでしょう。

中京圏は、通勤輸送におけるマイカーのシェアが大きく、どの鉄道も苦戦を強いられています。通学輸送が主体の現状では、収支の改善は考えにくく、廃止もやむをえないでしょう。

2、京都・橿原線ダイヤ改正

2000年春のダイヤ改正

今春のダイヤ改正(近鉄では「ダイヤ変更」と呼んでいます)で、京都線と橿原線のダイヤが大きくかわりました。ここで、改正前と改正後のデータイムのダイヤの要点をまとめてみます。

改正前:1時間あたり
特急4本
急行4本(京都−奈良2本、京都−天理1本、京都−橿原神宮前1本)
普通6本(京都−西大寺4本、国際会館−新田辺2本)
改正後:1時間あたり
特急4本
快速急行2本(京都−奈良2本)
急行4本(京都−天理1本、京都−橿原神宮前1本、国際会館−奈良2本)
普通6本(京都−西大寺4本、国際会館−新田辺2本)
主な変更点は、
  1. 国際会館と奈良を結ぶ直通急行が走るようになった。
  2. それにともなって、今までの京都−奈良間の急行が、快速急行に格上げされた。
以上の2点です。

このダイヤ改正によって、京都線の列車本数は増加しました。しかし、今までのきれいな15分間隔のダイヤはやや乱れて、各停はやや利用しにくくなりました。また、東大寺学園の生徒に聞き取り調査をしたところ、「改正前の方が良かった」という意見が多数を占めています。その理由として、「列車の時刻がわかりにくくなった」というのが多いです。「改正されて良かった」という意見を出したのは、京都地下鉄の烏丸線で通学している人だけでした。このように、快速急行の停車しない駅の利用客にとっては、今回のダイヤ改正は、かえって不便なものになりました。では、そのリスクを見越してでも、近鉄がダイヤ改正に踏み切った理由は何なのでしょうか。

ダイヤ改正の理由

現在、近鉄京都線と並行するJR奈良線(京都−奈良)では、複線化工事が行われています。国鉄時代から現在にいたるまで、京都−奈良間を、列車本数の少ないJRで移動する乗客はほとんどいませんでした。いわば、近鉄の「圧勝」だったのです。しかし、複線化工事が進めば、JRも列車本数を増やして対抗してくるでしょう。車両では、近鉄よりもJR(117・221・223系)の方がはるかに快適ですから、乗客がJRに流れることは明らかです。近鉄側がそれをくい止めるには、さらなる増発、車両のグレードアップ、スピードアップなどが考えられます。そのために、近鉄はダイヤ改正をおこなったのだと思われます。岐阜−名古屋−豊橋間でも、かつてはシェアを独占していた名鉄が、JR東海に大きく乗客を奪われて、四苦八苦しています。それと同じことが京都−奈良間で起こるかもしれません。今が、近鉄京都線の正念場なのです。

3、阪神西大阪線延伸

50年間眠り続けてきた計画

阪神電鉄の西大阪線は、阪神本線の尼崎とJR環状線の西九条とを結んでいます。この路線は、阪神と近鉄とを連結するために建設された路線です。近鉄は1970年に難波乗り入れを果たしましたが、阪神は地元の反対や採算性の問題などで、計画がとん挫していました。しかし、「上下分離」という方式で、ついに建設に向けて動き出すことになりました。「上下分離」とは、大阪府・大阪市などが出資する第三セクターが路線を建設し、阪神電鉄が使用料を払って列車を運行する方式です。これだと、鉄道会社が自前で建設する方式に比べて、鉄道会社は安い費用で新線を開業させることができます。運輸省は、来年度予算の概算要求に、調査費など約3億円を盛り込みました。2008年に開業の予定です。もし開業すれば、奈良と神戸とを結ぶ直通列車が走ることになります。建設費は1000億円を超える見込みです。これについては、数年後の菁々祭で後輩が特集を組んでくれるでしょうから、詳しくはその時にゆずりたいと思います。

4、京阪奈新線

京阪奈新線は、生駒から登美が丘を経由して高の原へ到る計画線です。この路線の建設計画は、東大阪線が開通した当初からあり、学研都市開発と奈良線の混雑緩和の役割が期待されています。現在、近鉄では同区間の建設に向けて、地盤などの調査を行っています。2005年度の開業の予定です。もし開通すれば、本校生徒の中にも、京阪奈新線を使って通学する人がたいへん多くなるでしょう。京阪奈新線についても、何年かのちの菁々祭で、後輩が特集を組んでくれると思いますので、詳しいことはその時にゆずりたいと思います。

この他にも、「スルッとKANSAI」・「Jスルー」の各カードの導入も行われる予定です。「阪神西大阪線延伸プロジェクト」や、「京阪奈新線プロジェクト」は、近畿圏の鉄道にとってたいへん大きな動きであり、ぜひ開業までに菁々祭で特集してほしいと思います。筆者はもう今年限りで引退しますので、後輩諸君に期待します。

近鉄の平成11年の利用者数は1日平均200万人。車両数は平成12年4月現在で2117両です。冷房化については幹線用車両では100%を達成。平成11年度の総売上高は8937億円、社員数11716人、総営業距離594.1km、駅数347と、日本でも最大規模の鉄道会社となりました。

今から90年前、「大阪と奈良とを最短距離で結ぼう」と考えた人たちがいました。彼らの作った鉄道は、2府4県に路線網を広げ、沿線住民数百万人の足を支えるまでになりました。これからも、安全で快適、そして遅れの少ない鉄道づくりに全力を尽くしてください。よろしゅうたのんまっせ、近鉄さん。

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