このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

 

 

第3章 小結論

 

 

■ケーススタディ総括

 利用者便益分析理論においては、「算出される利用者便益は社会全体に発生する便益の総和」とされている。従って、各ケースのセクター毎の便益は、下記のとおりとなる。

 利用者便益鉄道会社増益
ケース102,000
ケース2−12,6005,600
ケース32,200800
ケース41,0451,455
単位:万円/日

 ここで、鉄道会社増益が即ち純然たる財の増加(あるいはストック)と認定できれば、下記のような差引が成立する。

 利用者便益鉄道会社増益鉄道会社以外の便益増加
ケース102,000−2,000
ケース2−12,6005,600−18,200
ケース32,2008001,400
ケース41,0451,455−410
単位:万円/日

 しかし、実際には鉄道会社増益は必ずしもストックではない。この増益を他事業に投資すれば、社会全体に配分されていく。つまり、鉄道会社増益は一時停止中という意味でのストックにすぎず、マクロ的に見ればフローの一部を構成する。

 従って、利用者便益と鉄道会社増益とを差引することは適切でない。利用者便益と鉄道会社増益とは、併記してバランスを見るべき数字である。

 なぜこのようになるかというと、両者の性質に大きな差違があるからである。

 利用者便益とは「社会全体に発生する便益の総和」であり、「貨幣換算された効用増分」である。実際の貨幣が動くわけでは必ずしもなく、仮想的な金額が示される。

 鉄道会社増益とは、鉄道会社が手にする利益の増加であり、これは純然たる貨幣であり金額である。

 この両者を同列に扱うわけにはいかない点に、注意を要する。

 

 

■小結論

 現在オーソライズされている利用者便益分析理論を是認する限り、時間短縮便益に相当する(あるいはそれ以下の水準でも)対価を利用者に求める場合、利用者便益は相対的に低水準となる。

 鉄道会社は全ケースにおいて増収となり、即ち便益を得る。

 つまり、「受益者負担の原則」は、この例では鉄道会社、即ちプロジェクト主体に着目した「部分最適化」でしかなく、「社会全体の最適化」にならないことが示された。

 

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