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第3章 小結論
■ケーススタディ総括
利用者便益分析理論においては、「算出される利用者便益は社会全体に発生する便益の総和」とされている。従って、各ケースのセクター毎の便益は、下記のとおりとなる。
利用者便益 | 鉄道会社増益 | |
ケース1 | 0 | 2,000 |
ケース2 | −12,600 | 5,600 |
ケース3 | 2,200 | 800 |
ケース4 | 1,045 | 1,455 |
利用者便益 | 鉄道会社増益 | 鉄道会社以外の便益増加 | |
ケース1 | 0 | 2,000 | −2,000 |
ケース2 | −12,600 | 5,600 | −18,200 |
ケース3 | 2,200 | 800 | 1,400 |
ケース4 | 1,045 | 1,455 | −410 |
従って、利用者便益と鉄道会社増益とを差引することは適切でない。利用者便益と鉄道会社増益とは、併記してバランスを見るべき数字である。
なぜこのようになるかというと、両者の性質に大きな差違があるからである。
利用者便益とは「社会全体に発生する便益の総和」であり、「貨幣換算された効用増分」である。実際の貨幣が動くわけでは必ずしもなく、仮想的な金額が示される。
鉄道会社増益とは、鉄道会社が手にする利益の増加であり、これは純然たる貨幣であり金額である。
この両者を同列に扱うわけにはいかない点に、注意を要する。
■小結論
現在オーソライズされている利用者便益分析理論を是認する限り、時間短縮便益に相当する(あるいはそれ以下の水準でも)対価を利用者に求める場合、利用者便益は相対的に低水準となる。
鉄道会社は全ケースにおいて増収となり、即ち便益を得る。
つまり、「受益者負担の原則」は、この例では鉄道会社、即ちプロジェクト主体に着目した「部分最適化」でしかなく、「社会全体の最適化」にならないことが示された。
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