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平成27(2015)年・鉄道の論点





■平成27(2015)年最大の話題

 平成27(2015)年における鉄道の話題のうち最大のものといえば、なんといっても北陸新幹線開業であろう。なにしろ、在来線時代と比べ、利用者数約 3倍というから強烈だ。乗換解消や時間短縮効果を考慮しても、この利用者数増加は驚異的水準というしかない。今まで如何に首都圏と北陸諸都市の間が【遠い!】と認識されていたか、その障壁打破に北陸新幹線がインパクトを与えたか。その両面において意義深い。

北陸新幹線
平成27(2015)年3月14日に開業した北陸新幹線
富山駅西方にて 平成27(2015)年撮影


 北陸新幹線開業は、並行在来線経営分離と併せ、重大な出来事であるのは間違いない。ただし、「新幹線開業の光と影」といったステレオタイプな切り口で理解しようとすると、本質を見誤ってしまう。もちろん、北陸新幹線にも並行在来線にも課題が存在するわけだが、それじたいが重要な論点を呈示している、と筆者は認識している。

あいの風とやま鉄道
経営分離された北陸本線(あいの風とやま鉄道区間)
石動駅にて 平成27(2015)年撮影


 論点が共通する話題を以下に列挙してみよう。

  ●北陸新幹線開業
  ●これに伴う並行在来線経営分離
  ●「サンダーバード」・「しらさぎ」車内販売廃止
  ●「北斗星」・「トワイライトエクスプレス」廃止
  ●「四季島」・「瑞風」導入
  ●JR九州での駅無人化深度化
  ●三江線廃止の方向性
  ●JR北海道での駅・路線廃止の方向性

 ……これらの共通項がわかるだろうか。答は「労働力」である。JRから見て、労働力不足が顕在化、深度化しているのだ。

 新幹線とは、より少ない労働力でより大きな収益を得るプロジェクトと単純化できる。並行在来線経営分離とは、赤字よりもむしろ、保線・除雪等に要する要員確保が厳しく、手のかかる路線経営から解放されたい、という意図があると理解できる。

 車内販売廃止は、現下給与水準では売り子すら確保できない証左といえる。「北斗星」「トワイライトエクスプレス」等夜行列車をスクラップし、豪華列車をビルドするのは、運転免許保有者を電車・気動車のみに絞りこむ方策と考えられる。機関車の運転免許保有者を維持し続けるのは、機関車を維持し続けるよりも難しい面がある。

 残りの項目もまた然り、である。労働力不足に関しては、筆者はすでに、二本の記事を書いている。

   脆弱なる足許 平成25(2013)年10月 1日
   緩慢なる危機 平成26(2014)年 4月23日

 某政党の機関紙はJRの利益至上主義と批判するが、実態はそれどころではないのだ。JRの施策は、労働力確保(軽減)という観点なしに理解することが難しい。その事実がより顕著になった一年だと、筆者は受け止めている。





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