このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

語り部

「資料集:阿木のむかしと今」から古老の語りの部分を抜粋します。 教科書だから共通語に直してあるのだろうと信じていましたが、 そんなことはありませんでした。地元にいると気がつかないものです。

参考文献
小学校資料集:阿木のむかしと今;編集:新田鉦三(1982.2)


「資料集:阿木のむかしと今」おばあちゃんたちに聞いた戦争の話 より

飛行機がくるとな、すごくおそがかったわ。サイレンがなるとぉ、ランプの火を 消してな、まっくらにしたしな。穴がほったるもんでな、その中にそのなかにはいって かくれたこともあったわ。


おそがかった
恐ろしかった;おそがい+た
穴がほったるもんでな
穴がほってあるので

そりゃぁ、こんになっちゃって、もう、はい、はたらかんなんし、もうそれこそ、 供出の米なんかよう、女で俵いって供出したけど、たあるかったよ。自分たちの食べる米、 のうなっちゃうで。


そりゃぁ
それは
こんになっちゃって
こんなになってしまって
もう
(語気を整える)
はい
(語気を整える)
はたらかんなんし
働かなければならないし
もうそれこそ
(語気を整えつつ話題を中心にちかづける)
米なんかよう
米をさあ
俵いって
俵を編んで:俵を結って→俵ゆって→俵いって;いう(ゆう:結う)
たあるかったよ
かなしかったよ:(涙の出るような悲しいではなく、気分が滅入るような悲しさ。)
のうなっちゃうで
なくなってしまうので

うんと、それはよう、戦争がおわるころだったけど、春ごろからそういう仕事始めたの。 (中略) 国のやることやもんで、どれだけいつきてということはわからんけど、なんか公団というか、 団体でやっている人々じゃあないかなあと、今思うけど、ほいで、家族ぐるみ、ほうぼう わたったるいて、戦争が終わると、同時にいつどこへ行ったか分からん感じで、引き上げちゃった。


うんと
ええと(語気を整える)
それはよう
それはね(語気を整える)
国のやることやもんで
国のやることだから
ほいで
それで
わたったるいて
渡り歩いて:わたってあるいて
引き上げちゃった
引き上げてしまった

穴を掘る人は、だいたい十六ぐらいから五十歳ぐらいの人が 穴を掘りたと。五十歳よりもっと年上の人もおりたかもしれんと。 穴を掘る工事はきついもんで、朝鮮の人の中には、きつい人もおったけど、 朝鮮の人はやさしい人だったと。
頁作者より:この話は、昭和20年に当時の朝鮮の人が、地下軍需工場のための トンネルを掘った時の様子を聞いたものです。


五十歳
「ごじっさい」と読む
掘りたと
掘ったそうだ:「掘りた」と言うと「掘った」より多少敬意が込められた語感がある。 「と」は伝聞した内容を他者に語り掛けるとき語尾につける。
おりたかもしれんと
いたかもしれないそうだ
きつい
強い力が要る。転じて「えらい」と同様に使われる。
きつい人
力の強い人。「気が強い人」も「きつい人」と言うが、この場合は力があるの意。

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阿木村総合案内板 2000年3月29日設置 E-mail: agi_jin_sa@yahoo.co.jp
2002年1月30日更新

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