このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください


隠岐観光汽船
(菱浦〜別府)

中ノ島・別府港にて(Photo by A.Moriai)

 隠岐・島前(どうぜん)の中ノ島と西ノ島の間を結ぶ航路。島前3島の中でも、この2島の結びつきが強いことが伺える。
 西ノ島・別府港では、本土と隠岐を結ぶ隠岐汽船と並ぶようにして出航する。日本海を突っ切って走る隠岐汽船に比べると、この航路のフェリー「びんご」は小さく、頼りないくらいの印象を受けてしまう。ほとんど湖と呼んでもいいくらいの航路だから大丈夫、と言えばそうかも知れないが。それはさておき。
 すぐ向こうに見える中ノ島に向かって、ゆっくりと走っていく。私が乗った時には天気はよかったが強い風が吹き荒れており、時折波頭が船首ではじけることもあった。それでも思ったより揺れは少なく、さすがは湾内、と思わせてくれた。外洋ならばこのくらいの小さな船なら欠航になってしまっていたかもしれない。
 少し離れた所を、隠岐汽船の大きなフェリーが進んでいく。外洋では全速力で走っているフェリーも、湾内ではその能力をいささか持て余している様子だ。小さなフェリーを振り切ることも出来ず、つかず離れずの距離を保ったままでついて行く。こんなとき小さな船に乗っていると、不思議な優越感を感じてしまうのは私だけだろうか。それはさておき。
 中ノ島・菱浦港は、このフェリーと高速船だけが発着する。フェリーは少し離れた海士港に発着するので、島に近づくにつれて、その距離は徐々に離れていく。街はずれの海士港と違い、菱浦港は市街地近くにある。風が強いのには少々参ってしまったが、さあ、上陸だ!まずはいろいろと回ってみよう!
 現在この航路に並行する形で、島をつなぐ橋が計画されている。距離的にも近く、結びつきも強いこの両島が橋でつながれるのは当然のことであり、住民にとっては歓迎するべきことかもしれない。それに対して、行きずりの旅人でしかない私があれこれ述べる資格はないのかもしれない。
 しかし、敢えて述べさせて欲しい。この、「島」へ向かうという旅情を演出し、すぐ目の前に迫る島を「遙かなる存在」にしてくれるフェリーによる短い船旅が、橋の開通ということによって、無条件に廃止されるのであればそれは悲しむべきことである。それは旅というものがまた味気なくなることであり、日本人の心のゆとりがまた少なくなるという、悲しむべきことなのだ。一刻を争う緊急事態でもなければ、のんびりと橋を眺めながらフェリーで海を渡るという、ゆとりと余裕を常に持っておきたいものだ。

 能力(ちから)ではかなわない大きな船と
 つかず 離れず 湾内を行く
 自分に最適な舞台に立つとき
 船は最高に輝いて見える
 この輝きをいつまでも
 隠岐観光汽船



このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください