このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください


関西急行フェリー
(下津井〜本島〜丸亀)

本島港にて まるがめ

 瀬戸大橋直下の街、下津井と丸亀、そしてその間にある本島とを結ぶ航路。起点から終点まで、文字通り大橋に並行して走っている航路である。
 下津井港は、事務所兼待合室が一つあるだけのガランとした港だ。入り口にあるフェリーの案内板と、可動橋のゲートがなければ、フェリーの発着する港とは分からないかも知れない。
 出航直前のフェリーに乗り込む。車、人ともに少なく、甲板、客室ともに閑散としている。やはり並行航路の宿命なのだろうか。ただ、その少ない客の客層が、他の航路と少し異なっていることが気になった。何があるのだろうか。
 ガラガラのまま出航。進行方向左手に、下津井瀬戸大橋が見える。明石海峡大橋には及ばないが、それでも間近に眺めるとそのスケールには圧倒される。
 最上階に登ると、そこには展望室があった。並行航路であることを逆手にとったのだろうか。ここからの橋の眺めは確かに素晴らしかった。しかし客そのものが少ないために、展望室も私の他には誰も登ってこなかった。
 35分程で寄港地本島に到着。人気のない港だったが、それでも下津井よりは充実している事務所があった。思っていたより多くの人が乗り込んでくる。意外と需要はあるようだ。しかし、ここで乗り込んできた客層も、下津井で感じたものと同じ違和感を感じさせる。一体この島には何があるのだろうか。不思議な感じを持ったままで上陸した。
 島を一周すると、その謎は解けた。この島には天理教の施設があり、信者が大勢やってくるらしい。この航路が並行航路にもかかわらず生き残っている訳は、どうやらここにあるようだった。
下津井瀬戸大橋(上)、櫃石島橋・岩黒島橋(中)、南北備賛瀬戸大橋(下) フェリーより撮影
 40分程で一周してしまうともうすることもなくなり、港に戻って次の船を待つ。目の前には瀬戸大橋が横たわっている。6つの橋が連なった様子は、スケールの大きさを感じさせる。しかし、それらの橋の間に位置する4つの島は、まるで橋桁の土台の様に見えてしまう。どの島にも人が生活しているのに、それらの人は、まるで無視されてしまっているかのようだ。与島以外の島には、我々が降り立つ手段すらない。本州と四国を結ぶという目的のために、間の島を犠牲にしてしまう。そのようなことが果たして「正しい」発展のために必要なのだろうか。間の島々は、「大したことのない」存在なのだろうか。
 そうこう考えているうちに、丸亀行きフェリーが入港してきた。しかし、車両甲板への入り口は開かない。顔を出した甲板員に合図をすると、人の乗船口に回れ、という。回ってみると、何と人の入り口からバイクを乗り込ませることになってしまった。甲板員と3人がかりでバイクを押し上げ、車両甲板に押し込む。まさかこのような方法で乗り込むことになろうとは思っていなかっただけに、驚きと同時に貴重な体験が出来た幸運を感じた。
 甲板はガランとしており、一台の車両もなかった。私の貸し切り状態である。このようなことも初めてだ。
 船はさらにしばらく、橋に沿って進む。二つの大きな吊り橋、南北備讃瀬戸大橋が終わるころ、徐々に橋との距離が離れはじめた。それから間もなく、丸亀港に入港する。他の航路もあるせいか、この船の立ち寄る3つの港のなかでは最も設備の整った港だった。私の下船を待たずに、軽トラックが乗り込んでくる。一台だけしか乗っていないのだから仕方ないのかもしれないが、何となく軽視されているような気がしてしまった。
 高松方向へ向けて走りはじめる。夕焼けから夜空に変わろうとしているその向こうに、瀬戸大橋のフラッシュライトが光っているのが見えた。



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